玉紫 クサスギカズラ目/ヒガンバナ科/ネギ属 花期/10月末~11月中旬 結実期/12月~1月
学名/Allium pseudojaponicum Makino
自生種稀少保護
神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IB類」
刈られた笹藪から生え出たタマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
海辺の低草地などに生える球根性の多年草。別名ハマラッキョウ(浜辣韮)、但し砂浜に生えるものではない。姿が近似種のヤマラッキョウ(山辣韮)に酷似しており、その海岸型変種ではないかという声も聞くが、ここでは『神奈川県植物誌2018』に従って別種として扱った。ぱっと見は変種どころかヤマラッキョウそのものといっても過言でないほどそっくり。神奈川県内では三浦半島の二ヶ所でのみ自生が確認されており、神奈川県レッドリストの次(2020年以降)の改訂では「絶滅危惧IA類」または「絶滅危惧IB類」に指定されてくるのではないかと予想。(追記、神奈川県レッドリスト2020で「絶滅危惧IB類」に指定された。)
刈られた笹藪から生え出たタマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
刈られた笹藪から生え出たタマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
タマムラサキ(ハマラッキョウ、黄色花はイソギク) 三浦市・黒崎の鼻 2016/11/06
葉は農作物(のうさくぶつ)のラッキョウ(辣韮)やヤマラッキョウと同じ柔らかい広線形。但し、ラッキョウの葉は秋から春にかけて茂り、ヤマラッキョウとハマラッキョウは一般的な夏緑性(かりょくせい)。また葉の断面が異なっており、ラッキョウは触れば立体的であることがすぐにわかる五角形で中空(ちゅうくう)、ヤマラッキョウは扁平で中空、ハマラッキョウは扁平で中実(ちゅうじつ)、とされている。が、ハマラッキョウと思しきものの中にも若干中空になりかけている葉もないではないように感じられる。これをハマラッキョウとするか、あるいはヤマラッキョウと見るかは、見解が分かれるところかもしれない。※当サイトは前者、『神奈川県植物誌2018』は後者の立場をとっているようである。ヤマラッキョウとハマラッキョウは神奈川県内ではどちらも希少な植物であるので、常に葉を千切って断面を確認するという作業を行うことは憚られるため、両者の峻別は正直なところしがたいところであるというエクスキューズ(弁明、言い訳)が付きまとってしまうことはお許しいただきたい。なお(ラッキョウの仲間に共通して)葉を千切ったりうっかり踏みつけていたりするとニラ(韮)やニンニク(大蒜)のように香る。葉は本数が少なく、根元を掻き分けてよくよく確認しない限りは見つけられないかもしれない。
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の葉 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の葉 葉山町・笠原商店前の庚申塔 2020/12/22
ラッキョウの仲間の葉の断面の違い
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の花
花茎(かけい)を直立させてその頂上に紫色のぼんぼんのような花序を付ける。小花の柄(え)がラッキョウよりも短く、ヤマラッキョウと同じ1cm程度。若々しく張りがあってぱっときれいに開いている小花をなかなか見かけないのは、ヤマラッキョウも似たようなものなので風が強い海辺に咲くせいではないようだ。
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2016/11/06
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2016/11/06
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2016/11/06
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
雄蕊の花糸(かし)と花糸の間の基部に、ラッキョウは立派な歯牙(しが)と呼ばれる突起があり、ヤマラッキョウは歯牙は不明瞭(とされているが確認できた試しなく、少なくとも肉眼では歯牙はないものと思っておいても良いかもしれない)、ハマラッキョウは歯牙はない。
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 三浦市・黒崎の鼻 2020/11/13
以下は、生えている場所やぱっと見の印象はヤマラッキョウながら、葉の断面が扁平、歯牙なし、などの理由からタマムラサキ(ハマラッキョウ)としておく。
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 大磯町・高麗山公園 2020/11/18
タマムラサキ(ハマラッキョウ) 大磯町・高麗山公園 2020/11/18
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の実
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の熟しかけている実 葉山町・笠原商店前の庚申塔 2020/12/22
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の熟しかけている実 葉山町・笠原商店前の庚申塔 2020/12/22
タマムラサキ(ハマラッキョウ)の種子 葉山町・笠原商店前の庚申塔 2020/12/22
三浦市・剱崎、三浦市・黒崎の鼻
葉山町・笠原商店前の庚申塔(滅失か、葉は扁平で中実)、大磯町・高麗山公園(葉は扁平で中実・歯牙なし、令和6年(2024)なし)
※滅失=開花株は見当たらない。開花しない小株が残存している可能性は否定しない。
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
しっかりと葉を撮っていますね。
自分はそのアングルを見つけられませんでした。