ヤマラッキョウ

山辣韮 クサスギカズラ目/ヒガンバナ科/ネギ属 花期/10月末~11月中旬

自生種稀少保護

ヤマラッキョウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#ヤマラッキョウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

丘陵地や山地の草原に生える球根性の多年草。中国原産の農作物(のうさくぶつ)であるラッキョウの日本在来種版といったところのもの。ぱっと見の姿はよく似ているため、日本の野良に帰化して生えていることがないでもないラッキョウと混同せぬように。なお神奈川県内の臨海部にはそれ以上に瓜二つなタマムラサキ(玉紫)、別名ハマラッキョウ(浜辣韮)というものもあるので見分けは無理難題。県内では箱根や三浦丘陵および大磯丘陵などに自生があるようであるが、そこいらにやたらめったら生えているわけではないなかなか希有な存在となってしまっている。

ヤマラッキョウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#ヤマラッキョウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

葉は柔らかい広線形。※ラッキョウやタマムラサキ(ハマラッキョウ)の葉との違いに関して、詳細はタマムラサキ(ハマラッキョウ)の頁を参照。ヤマラッキョウの葉は扁平で、切断してみると中が空洞になっているきれいな(=髄(ずい)のように感じられないでもないものがないでもない、みたいに判断が迷うようなものではなく、見事なまでに皮しかない、の意)中空(ちゅうくう)。但し、タマムラサキ(ハマラッキョウ)の葉も同様に扁平であるので、葉を指で摘まんで感触を確かめるというだけでは両者の違いはわからない。葉を横に切って断面を確認してみないとタマムラサキ(ハマラッキョウ)なのかヤマラッキョウなのか判断できないのだが、県内では両者共に希少種なので葉をぶちぶち千切っていちいち確認してみるという作業は問題が大きい。なお、海辺に生えていればタマムラサキ(ハマラッキョウ)、山にあればヤマラッキョウ、という単純な話ではないらしい。『神奈川県植物誌2018』によればヤマラッキョウも海に面した場所に生えている模様。但し(タマムラサキ(ハマラッキョウ)の頁で記した通り)疑義がないわけでもない。タマムラサキ(ハマラッキョウ)同様、夏緑性(かりょくせい)。

ヤマラッキョウの葉(切断されているのは花茎) 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#ヤマラッキョウの葉(切断されているのは花茎) 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

近似種でもっと葉が細いイトラッキョウ(糸辣韮)が山野草として栽培されることがある。

ヤマラッキョウの花

花茎(かけい)を直立させてその先端にタマムラサキ(ハマラッキョウ)同様の紫色ぼんぼん状の花序を付ける。共に、ラッキョウに比べて小花柄(しょうかへい)が短く1cm程度しかないのが特徴。

ヤマラッキョウ 箱根湿生花園 2017/10/01

#ヤマラッキョウ 箱根湿生花園 2017/10/01

ヤマラッキョウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#ヤマラッキョウ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

ヤマラッキョウの短い小花柄 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#ヤマラッキョウの短い小花柄 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

雄蕊の花糸(かし)と花糸の間の基部に、ラッキョウは明瞭な歯牙(しが)と呼ばれる突起あり、ヤマラッキョウの歯牙は不明瞭、タマムラサキ(ハマラッキョウ)は歯牙なし。とされているが、ヤマラッキョウの小花を覗き込んでも歯牙らしきものを確認できなかった。

ヤマラッキョウの笑っちゃうほど生育が悪い花序 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14

#ヤマラッキョウの笑っちゃうほど生育が悪い花序 横浜市戸塚区・舞岡公園 2020/11/14


横浜市栄区・横浜自然観察の森(生態園)、横浜市戸塚区・#舞岡公園(小谷戸の里の事務所玄関前鉄鍋に)

三浦アルプス、葉山町・笠原商店前の庚申塔(じつはタマムラサキ(ハマラッキョウ)?)、平塚市・高麗山公園(子供の森、湘南平南側=小さな歯牙確認、滅失?)

厚木市・#荻野運動公園(野草園)、箱根町・湯坂路(10月末)、箱根町・明神ヶ岳(一帯、10月中旬~11月上旬)、#箱根湿生花園(10月中旬~11月上旬)、箱根町・湖尻園地

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

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