大金鶏菊 キク目/キク科/ハルシャギク属 花期/5月中旬~6月 結実期/6月~7月
学名/Coreopsis lanceolata L.
外来種違法駆除
外来生物法「特定外来生物」
生態系被害防止外来種リスト「緊急対策外来種」
日本生態学会「日本の侵略的外来種ワースト100」
オオキンケイギク 葉山公園 2017/05/17
北米原産の多年草で、コスモス(秋桜)の仲間。およそ五月に咲いている(オレンジ色に近い)濃い黄色のコスモスっぽい花がオオキンケイギクである。よく栽培されるキバナコスモス(黄花秋桜)に全体的な姿も花もそっくりであるが、花期と葉の形状が大きく異なるので両者の見分けは難しくない。
オオキンケイギク 茅ヶ崎市浜之郷・小出川浜園橋東側 2018/05/12
オオキンケイギク 茅ヶ崎市浜之郷・小出川浜園橋東側 2018/05/10
オオキンケイギクは外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)により特定外来生物に指定されている。その昔”ワイルドフラワー緑化”に安易に用いられたことがけちの始まり。ろくでもない雑草を生やさないために花がきれいなオオキンケイギクのタネが人工造成地などに大量に蒔かれたのだが、今度はオオキンケイギクが大量に帰化して周囲の自然環境に多大な悪影響を及ぼすようになってしまったという。ハブ(波布)退治のために放したマングースがアマミノクロウサギ(奄美野黒兎)などの希少動物を食べ始めちゃって問題に、というあのろくでもないパターンとまったく同じ。このためオオキンケイギクを特定外来生物に指定し、栽培・流通等を法律で禁止した(ブラックバスやアライグマなどと同じ扱い、罰則あり)。ただし実際には今なお各地で見ることができる。地方自治体から「花がきれいだからと、ご自宅の庭やプランターに植えないようにしてください」(横須賀市HP)等々の呼びかけがなされているが、オオキンケイギクが見事に咲き誇っているのはおよそ自治体管理の公園や国土交通省所管の河川敷、法面(のりめん)、道路沿いなどで間違いない。それ以外ではJR(旧国鉄)など鉄道会社所有の線路内。個人が市民農園や庭で栽培していることも確かにあるが、今の時代となってはお役所管理の土地にある莫大な株数に比べればどうというものでない。神奈川県警が積極的に指導や検挙をするはずもなく、道端に置かれたプランターに満々開のオオキンケイギクすぐ真横を警官はちらりと見やることさえなく素通りして行く。そんなこんなで身近なところでもちょこちょことオオキンケイギクの花は咲き続けている。なお大抵の場合は見咎められても「勝手に生えてきちゃったのを放置していただけで栽培しているわけではないんですぅ」とすっとぼければ罪には問われない可能性も高い。
海辺でもへっちゃらなオオキンケイギク、背後は長者ヶ崎 葉山公園 2017/05/17
砂浜にまで生えてきたオオキンケイギク 茅ヶ崎市汐見台 2018/05/01
#オオキンケイギク、ワイルドフラワー緑化の名残りか 横須賀市・くりはま花の国 2017/05/23
オオキンケイギクか 茅ヶ崎市東海岸南・国道134号線中央分離帯 2018/05/01
オオキンケイギク 茅ヶ崎市浜之郷・小出川浜園橋東側 2018/05/10
オオキンケイギク 藤沢市・JR東海道本線・上村踏切 2018/05/14
オオキンケイギクだけを残して刈払われた河川敷 横浜市戸塚区上倉田町・柏尾川 2018/06/25
公園の花壇に植えられていた(違法です)#オオキンケイギク 茅ヶ崎市・**公園 2021/05/10
キクの仲間なので近似種が多くて、同定(どうてい、見分け)は本当は厄介。似たような色の花を咲かせるものに、上記のキバナコスモス以外では、キンケイギク(金鶏菊)の名でも流通しているホソバハルシャギク(細葉波斯菊)、イトバハルシャギク(糸葉波斯菊)がある。なお(正体がホソバハルシャギクでない本来の)キンケイギクは近似の別種。いずれも北米原産の外来種。これらには園芸種もあるため、正直なところ峻別は困難。従って、これらを全部ひっくるめてハルシャギク属を意味するコレオプシスと呼んでお茶を濁すことも。なおこれらのうち、栽培等が違法なのはオオキンケイギクだけである。そして、そこかしこでふつうに見かけるのもオオキンケイギクだけ。近似種ではハルシャギクも帰化雑草として生えてはくるが、全体的な姿や葉の形状が異なる上、花も一回り小さいので混同することはあるまい。従って実際のところは詳細を検討する必要はなく、これがオオキンケイギクというやつなのだろうな、と大体のぱっと見で判断してしまって構わない。※本頁でコレオプシスと表記したものは、同定できなかった(しなかった)ものを指す。
オオキンケイギクの特徴
多年草
駆除しない限り(駆除したつもりでも)毎年同じ場所に生え、同じ場所で花を咲かせている。
花期は5月
神奈川県南部(湘南・鎌倉・三浦半島)では早いところでゴールデンウィーク頃から咲き始め、見頃は5月の中旬から下旬。
ぱっと見はキバナコスモスに似ている印象
ただしキバナコスモスは5月に咲かない。
叢生(そうせい)
小規模に生えている場所では株立ち状になる。大規模に生えている場所では群生する。いずれにせよ、茎一本だけが単発で生えていることはなく、たくさんの茎がまとまってたくさん生えているという印象を受ける。ごちゃごちゃもしゃもしゃ生えているものだからこれがじつに写真に撮りづらく、オオキンケイギク一株の全体像を写真に収めようとするとまったくわけのわからない姿になってしまう。
背丈は人の膝(ひざ)から腰程度
花色は(オレンジ色に近い)濃い黄色
異色なものがないわけではないらしいが、ふつう見かけるものの花色はバリエーションなし。
花弁(舌状花)の先端がぎざぎざ
花弁に柔らかさや丸みを感じない。
二重の総苞片
内側の総苞片は事実上の萼筒を形成し、花が咲いているときに真横から見ると巾着形。外側の総苞片は別個で、華やかに開く。
蕾がかわいい
花弁のように開いた外側の総苞片が台座になり、その上にやや扁平で丸っこい饅頭形の蕾が乗る。
根生葉が多い
葉の付き方は【根生葉8割:茎生葉2割】といったところ。茎に葉が付かないでもないが、圧倒的に根生葉(こんせいよう)が多く、葉で根元がもしゃもしゃしている。とても根元の茎の様子なんて垣間見れたものではないほどにたくさんの根生葉が繁る。
オオキンケイギクと紛らわしい同属のホソバハルシャギク(細葉波斯菊)には根生葉がなく、茎全体にほぼまんべんなく茎生葉(けいせいよう)が生える、という明確な違いあり。
葉は箆(へら)形
葉は基本は箆のような形状で、それを多彩に変異させている。裂片も含めてある程度の幅があること。線のように細い葉ばかりなら他種の疑いが濃厚。葉の先端はやや尖ったり丸みを帯びていたり。
茎生葉は対生
葉は有毛
葉の表裏に短い毛がたくさん生えており、ざらざらした手触り。
茎は角張る
花のすぐ下の柄(え)はやや丸みを帯びてつるつるしているような気もするが、中程以下の茎には稜(りょう、出っ張り)がありごつごつと角張った感触。茎にも少しだが毛が生えている。
無茶苦茶な言い方をするが、”5月に咲いているそれっぽいやつは全部オオキンケイギクだ”と決めつけてしまって大きなハズレなし。
『神奈川県植物誌2018』によれば、もっとも姿が酷似して混同しかねないホソバハルシャギク(葉は茎の下方から上方までまんべんなく茎生葉が付き、葉の裂片は細い)は(神奈川県内では)”栽培されることは少なく、逸出も見ていない”、キンケイギクも現在県内で帰化しているものを見かけない模様。
花ばかりに目が惹かれるが、葉の様子も同定の大きなポイントになるので見逃してはいけない。
#オオキンケイギクのもしゃもしゃ繁った根生葉 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギクの茎と、対生する茎生葉の付け根 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
引っこ抜かれたオオキンケイギク 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/20
根生葉があるため叢生している感が強いオオキンケイギク 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/20
茎生葉は対生なので、必ず茎の左右に葉が伸びる。一対でセット。
オオキンケイギクの茎生葉 葉山公園 2017/05/17
#オオキンケイギクの茎生葉 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギクの茎生葉 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギクの茎生葉の裏 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギクの稜ある茎の断面 茅ヶ崎市萩園 2018/05/10
オオキンケイギクの蕾
花弁のように広がっているのは外側の総苞片。かわいらしいという印象を受けるのではないか。
#オオキンケイギクの蕾 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギクの蕾 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギクの蕾 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
オオキンケイギクの花
草丈の半分くらいの高さの位置で茎がニ本ないし三本程度に分岐し、そこから上に向かってひょろ長の柄(え)が伸びて先端に花を一つ付ける。花柄(かへい)はただ長いだけで分岐せず、葉も付けない。柄の先にはたった一つしか花を付けないが、その代わりたくさんの茎が出る(叢生する)。結果としてたくさんの花が咲く。咲きっぷりがよいため見応えのあるきれいな花という認識がされ、なかなか駆除されないで今に至る。花は少しばかり太陽の方を向く。香りはさほどなし。鼻を近づけてよく嗅げば、切花にありがちな感じの芳香がないでもないという程度。
#オオキンケイギク 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
旭日章(きょくじつしょう、警察のマーク)を連想させるぎざぎざな舌状花先端が特徴的。
#オオキンケイギク 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギク 茅ヶ崎市萩園 2018/05/05
#オオキンケイギク 茅ヶ崎市萩園 2018/05/10
オオキンケイギク(二重咲き) 茅ヶ崎市浜之郷・小出川浜園橋東側 2018/05/12
オオキンケイギクの咲き終わり 茅ヶ崎市西久保 2018/05/22
オオキンケイギクの園芸種に、草丈が低い矮性(わいせい)品種あり。(矮性の)八重咲き品種も。花壇に植えるのに手頃な大きさで見栄えも優れるが、オオキンケイギクなので栽培は違法。検挙されたという話は一度とて聞いたことはないけれども。
#オオキンケイギクの矮性品種 茅ヶ崎市本村 2020/06/02
#オオキンケイギクの矮性品種 茅ヶ崎市本村 2020/06/02
#オオキンケイギクの矮性品種の葉 茅ヶ崎市本村 2020/06/02
#コレオプシスのやや矮性・八重咲き(→注釈1) 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/26
#コレオプシスのやや矮性・八重咲き 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/26
#コレオプシスのやや矮性・八重咲き 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/10
根生葉があるようなないような、#コレオプシスのやや矮性・八重咲き 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/26
オオキンケイギクとやや矮性・八重咲き#コレオプシスの葉の比較 茅ヶ崎市浜之郷 2021/05/20
注釈1)草丈50cm程度で、一般的に見るオオキンケイギクより明らかに草丈は低い。花期に根生葉はないようにも感じられ(少なくとももしゃもしゃと叢生している感はない)、茎の下方から上方までまんべんなく茎生葉が付く。葉の形状はおよそオオキンケイギクと同様で、裂片は特に細からず。葉は両面有毛。葉柄、茎下部は特に毛が目立つ。(オオキンケイギクの園芸種だと思っているが、ホソバハルシャギクの園芸種である疑いを排除しきれていない。)
オオキンケイギクは(他の外来種にもありがちな性質として)、花期が過ぎても、夏の間はだらだらとごく少数の花が咲き続けることがある。
オオキンケイギクの実
花が咲き終わればほどなくして焦げ茶色に枯れる。そうなれば総苞(そうほう)の中では種子がもう完熟。
茎はいつまでたっても倒れないので、強風に揺られて振り子運動をすることで種子を周辺に振り撒こうとしているのだろう。
花期終わりのオオキンケイギク 茅ヶ崎市西久保 2018/06/12
オオキンケイギクの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/03
#オオキンケイギクの完熟した実 茅ヶ崎市萩園 2018/06/03
花一つからできる種子の数を試しに数えてみたところ、約240個もあった。小さいながらも翼(よく)が付いており、強風が吹けば軽々しく遠くまで飛散してしまう仕組み。種子拡散能力は高い。発芽はほとんどしないような気がしないでもないけれども。
オオキンケイギクの完熟した実と種子 茅ヶ崎市西久保 2018/06/03
オオキンケイギクは特定外来生物に指定されているため、栽培のみならず(生きた状態での)保管や運搬も違法である。生きているものであれば種子も同様の扱いとなる。種子は播種(はしゅ、タネを播(ま)くこと)もまた違法である。つまりオオキンケイギクは、生えて来てしまった現地で刈るか抜くかし(多年草なので刈っただけではまた来年生えてくるが)、タネもこぼさないように袋詰めにし、枯れてたところで(タネは枯れないが)燃えるゴミに出すよう、行政機関からはアナウンスされている。一切の運搬なくして防除(駆除のこと)はできないので、防除のための(ゴミ集積場などへ持参する等の)多少の移動は容認されるだろうと思う(※法の趣旨に則った独自の解釈であり違法性がないことを保証するものではありません)。要するに、オオキンケイギクの分布拡大に繋がりかねないような行為は一切してくれるなということ。
オオキンケイギクの切株
真夏ないし夏の終わり、オオキンケイギクは枯れて茶色くなっているも朽ちて倒れることはしない。見苦しい醜態をいつまでもいつまでもしぶとく晒し続けているため、だいたいは見かねた人の手によって刈り倒されるだろう。面倒な刈取り作業は大雑把に行われるため、熟した種子は周辺に大量に散布されていることだろう。
花後に刈られた#オオキンケイギク、叢生している様子がわかる 茅ヶ崎市萩園 2018/06/21
オオキンケイギクの若葉
抜き取る手間はかけず刈るだけなので、親株はまたすぐ葉を生やして再生する。
夏に刈られたオオキンケイギクからまた生えてきた若葉 茅ヶ崎市西久保 2018/09/16
夏に刈払われるもリフレッシュして再生したオオキンケイギクの葉 茅ヶ崎市西久保 2018/10/09
オオキンケイギクの越冬
刈り取り後に再生した葉は冬に枯れたり枯れなかったり。
葉がさほど枯れていない越冬中のオオキンケイギク 茅ヶ崎市西久保 2019/01/10
葉が半分程度は枯れた越冬中のオオキンケイギク 茅ヶ崎市西久保 2019/01/10
#くりはま花の国、葉山公園、江ノ電沿線(稲村ガ崎不識庵下、七里ヶ浜駅東側七里ヶ浜1号踏切)、小田急江ノ島線沿線(鵠沼松が岡公園西側など)、藤沢市/茅ヶ崎市/他・JR東海道本線(線路沿いに非常に多い)、
湘南国際村(かつての名所も現在はほぼ皆無)
[…] オオキンケイギク大金鶏菊 キク目/キク科/ハルシャギク属 花期/5月… 特定外来生物で栽培・販売・運搬や野に広げることは禁止されています。禁止パンフレット みちくさ図鑑 シェアする Twitter Facebook0 Mitikusatentenをフォローする 0 Mitikusatenten みちくさずかん […]