ムギラン

麦蘭　クサスギカズラ目／ラン科／マメヅタラン属　花期／5月中旬～6月上旬
学名／Bulbophyllum inconspicuum Maxim.

自生種稀少保護

環境省レッドリスト「準絶滅危惧（NT）」
神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IB類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IA類」

ムギラン　鎌倉市　2024/05/04

常緑の多年草。常緑樹の幹や太い枝、あるいは岩にへばり付いて生える着生ランの一種。野生のラン。名は、葉の基部にある特徴的な丸っこい偽鱗茎（ぎりんけい、偽球茎、バルブ）がムギの粒に見立てられたらしいのだが、ちょっと何を言っているのかわからない。ぱっと見た全体の雰囲気はシダ植物のマメヅタ（豆蔦）に似ているが、マメヅタラン（豆蔦）は同属の近似種に付けられた名前である。マメヅタやマメヅタランには偽鱗茎がないので見分けは容易。偽鱗茎と葉の組み合わせは小さなホテイアオイ（布袋葵）のようにも見えるが、ホテイラン（布袋蘭）の名はこれもまた別種に付けられた名前である。神奈川県内ではクモラン（蜘蛛蘭）と同様に鎌倉市・山北町・南足柄市に分布があるのみ。生息地がかなり限られている。近くにある現に着生しているのと同じ樹木には増えていくが、周辺の他の樹種への広がりを見せない奇妙な性質があるように感じられる。観賞価値はないに等しい植物であるにもかかわらず、希少なランの仲間というだけで栽培したがる愛好家（マニア）が存在するため、業者に持ち去られ、フリマサイトなどで売られてしまう非道い有様となっている。

ビャクシンに着生したムギラン　鎌倉市　2024/03/07

ビャクシンに着生したムギラン　鎌倉市　2024/05/14

ビャクシンに着生したムギラン　鎌倉市　2024/05/17

開花したムギラン　鎌倉市　2024/05/17

茎が匍匐（ほふく）し、節から根と偽鱗茎と更に伸びる茎を出す。偽鱗茎は楕円形（回転楕円体）でややしわしわ。偽鱗茎の頂上部に一枚の葉を付ける。葉は、長さ3cm×幅1cm程度。葉先は鋭利には尖らない。

ムギランの葉　鎌倉市　2024/05/14

ムギランの偽鱗茎と葉と蕾　鎌倉市　2024/05/14

ついでに、着生ランのカヤラン（榧蘭）、ヨウラクラン（瓔珞蘭）、クモラン（蜘蛛蘭）、着生シダ植物のマツバラン（松葉蘭）も、併せて探しておきたい。但し、花期が重なるものはない。マツバランはシダなのでそもそも花を咲かせない（胞子嚢（ほうしのう）を作る）。

ムギランの花

節（偽鱗茎の基部）から花茎（かけい）を伸ばし、その先端に二個程度の花を咲かせる。但し、花は小さいため見つけづらく、しかもぱっと全開しないため咲いているようには感じられないかもしれない。手が届かないようなやや高い所に着生している株ではもう花があるのかないのかさえもよくわからない。花の大きさは、縦4.5mm×横幅3mm。花色は薄黄緑色。開花は5月15日頃から、見頃は5月下旬。一斉に満開して一瞬ですべてが咲き終わる、というわけではなく、順次ぽつりぽつりと咲いていく。