鵠沼蘭 クサスギカズラ目/ラン科/キンラン属 花期/4月下旬~5月上旬 結実期/10月~11月
学名/Cephalanthera longifolia (L.) Fritsch
自生種稀少保護
環境省レッドリスト2018「絶滅危惧II類(VU)」
神奈川県レッドリスト2020(ランク外)
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
沿岸地域のクロマツ(黒松)林内の砂混じりの土地に生えるとかクロマツである必要はじつはまったくないとかいう多年草。ギンラン(銀蘭)の近似種で、姿が極めてよく似ておりたいへん紛らわしい。名は、発見地である神奈川県藤沢市の鵠沼海岸から。ちなみに鵠(くぐい)はハクチョウ(白鳥)のこと。今なお自生地である鵠沼地区では保護されているらしいが、私有地なので非公開。
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
県内では平成17年(2005)頃から横浜市金沢区の自然が守られてきた土地というわけではない人工の埋立地区などで謎の大量発見が相次いで報告されるようになった。霊園や、住宅地の中に造成された遊具がある公園の、クロマツ林でもなんでもない場所に生えている、と。見る限りは完全なる外来種の生え方だとしか評しようがない様子であるため、他所(よそ)から持ち込まれた植木に伴って生えてきた(下手をしたら国外からの)移入種なのではないかとさえ噂される有様。鵠沼産元祖クゲヌマランと新産クゲヌマランが同一種なのか別種なのかは定かでない。※本頁掲載のものはいずれも新産クゲヌマランの方である。
造成された広場隅の植え込み下に生えたクゲヌマラン 横浜市金沢区・金沢自然公園 2017/04/29
造成された広場隅の植え込み下に生えたクゲヌマラン 横浜市金沢区・金沢自然公園 2017/04/29
造成された公園に生えたクゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
造成された公園に生えたクゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
造成された公園に生えたクゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
造成された公園に生えたクゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマランの特徴
1)ギンランより気持ち大きめな個体が多い。
2)ギンランより気持ち早咲きな傾向。
3)花にある距(きょ、出っ張り)はわずかに顔を覗かせる程度で、ギンランより短い。距がないように見えるものも。
4)葉の基部は、ギンランよりもしっかり茎を抱く。
5)葉身基部が平坦。
6)葉脈が目立たない。
7)葉はやや閉じ気味な傾向。
8)茎の稜(りょう)が目立たない。
心持ち閉じ気味な葉はチューリップを思わせるもの。
クゲヌマランの葉 横浜市金沢区・金沢自然公園 2017/04/29
クゲヌマランの葉 横浜市金沢区・金沢自然公園 2017/04/29
クゲヌマランの葉 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマランの花
ぱっと見はギンラン。見頃は4月25日前後か。
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマラン 横浜市金沢区並木 2017/04/30
花の後方下部に突き出る距は短く、あるのかないのかよくわからない程度のもの。
クゲヌマランの短い距(白色矢印) 横浜市金沢区並木 2017/04/30
クゲヌマランの実
クゲヌマランの完熟を過ぎて枯れた実 東京都調布市・神代植物公園植物多様性センター 2018/11/10
参考資料
『日本のラン ハンドブック ①低地・低山編』 遊川和久解説 中山博史・鷹野正次・松岡裕史・山下弘写真 文一総合出版発行(2015)
神奈川自然誌資料 (42): 33–38, Mar. 2021
原著論文
藤沢市に生育するクゲヌマランの遺伝子解析
大井和之・岸しげみ・一ノ瀬友博
「ヨーロッパ や中東産の C. longifolia のハプロタイプではなく,中国 雲南省およびネパール産の標本で報告されているアジア 型に属していた。このことから,ヨーロッパ産の外来個 体が移入して分布を拡げているわけではなく,日本在来 の遺伝子型の系統が分布を拡大していることが明らかと なった。」と書かれている。