イチジク

無花果 バラ目/クワ科/イチジク属 花期/6月~9月 結実期/(夏果)6月下旬~7月中旬、(秋果)8月中旬~9月

食用薬用改良種

イチジクの実 2017/09/01

イチジクの実 2017/09/01

サウジアラビアなどがあるアラビア半島の南部が原産という落葉低木ないし小高木で、雌雄異株(しゆういしゅ)。花が咲いた覚えがないのになぜかおいしい実ができるという漢字が当てられている。この丸みを帯びた実のようなものは元々は花嚢(かのう)と呼ばれる袋で、この袋の内部で人知れず小さな花がたくさん咲く。花が咲き終われば名を果嚢(かのう)と改め、これが実となり熟せば果物として市販されているお馴染みのイチジクとなる。日本で栽培されているのは受粉せずとも勝手に実が膨らんで熟してくれる単為結果性品種(たんいけっかせい-)の雌株。主な品種は’桝井ドーフィン’(単に’ドーフィン’)。価格は5個入りパックで300~500円。

“日本イチジク”といったら江戸時代に中国経由で渡来し今なお日本で栽培されている’蓬莱柿(ほうらいし)’と呼ばれる品種。’早生日本種(わせ-)’とも。もちろん日本在来種ではない。”西洋イチジク”は明治時代にアメリカ合衆国から新たに導入された’桝井ドーフィン’などのこと。
イチジクは日本に自生せず、あるのは栽培もののみ。神奈川県内、湘南・鎌倉・三浦半島では農村地帯の畑の一角などに細々と植えられている。イチジク大好きな人にとっては買うよりも自分で栽培した方が完熟した新鮮な甘くておいしい実を食べられるため、民家の庭に一本植えられているということも。県北西部の南足柄市・大井町・開成町では盛んに栽培され、かながわブランド「あしがらいちじく」の名で流通している(品種は’桝井ドーフィン’)。

イチジクは葉が大きく、形状は様々あるが五深裂するものが有名。エデンの園で”禁断の果実”を食べてしまったアダムとイヴが自分たちが裸でいることを恥じるようになり、股間を隠すために使ったのがイチジクの葉である(『旧約聖書』創世記)。

イチジクの葉 藤沢市大庭 2017/09/11

イチジクの葉 藤沢市大庭 2017/09/11

近似の自生種にイヌビワ(犬枇杷)がある。

イチジクの花

新しい小さな花嚢が出てくるのは6月から。イチジクはその花嚢の内部で密かに花を咲かせている。もちろん外から見ても咲いているかどうかなんてわからない。イチジクの花にはたかる虫もいない。こうした特殊な形態の花を隠頭花序(いんとうかじょ)という。花弁はない。’桝井ドーフィン’は初夏、花嚢が長さ4cmくらいの大きさ(成人男性の大きな親指よりも一回り太くしたくらいの形状)のときに一旦成長が止まる。おそらくこの頃に花が咲いているのではないか。ほのかにイチジクらしい甘い香りを漂わせており、”へそ”が赤く色付き、少し口を開けているように感じられないでもない。

イチジクの若い花嚢 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/07

イチジクの若い花嚢 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/07

イチジクのそろそろ咲きそうな花嚢 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/19

イチジクのそろそろ咲きそうな花嚢 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/19

イチジクの咲いていそうな花嚢 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/21

イチジクの咲いていそうな花嚢 茅ヶ崎市浜之郷 2018/06/21

イチジクの花嚢 2018/06/27

イチジクの花嚢 2018/06/27

いっては何だが、実の内部とさして違いない。

イチジクの花嚢 2018/06/27

イチジクの花嚢 2018/06/27

本来はイチジクコバチ(無花果小蜂)という小さな昆虫がイチジクの花嚢の内部に潜り込んでくることで受粉を完遂(かんすい)させているという。日本にはそのイチジクコバチが生息していないため、イチジクは受粉できない。受粉できずとも果物としてはまったく問題がないことは本頁記載の通り。花期が過ぎれば、実となり自ずと肥大化してゆく。

イチジクの実

皮が赤く熟せば食べ頃。全体的にとても柔らかいので取り扱いに注意。非常に傷みやすいので、買ったら冷蔵庫で冷やしてできるだけ早く食べてしまいたい。味はやんわり甘い程度でお上品。いま流行りの高糖度のブドウ(葡萄)イチゴ(苺)のような強い甘みを期待していると拍子抜けしてしまうかもしれない。果肉は柔らかくなめらかなくちどけ。タネのぷちぷち食感が楽しい。

イチジクの実 2017/09/01

イチジクの実 2017/09/01

果肉の部分は、厳密にいえば花が咲く土台としての花托(かたく)が発達したものとされる。

イチジクの実 葉山町上山口 2017/08/29

イチジクの実 葉山町上山口 2017/08/29

イチジクの実 葉山町上山口 2017/08/29

イチジクの実 葉山町上山口 2017/08/29

イチジクの実 2017/09/01

イチジクの実 2017/09/01

稀に「イチジクは果物ではない」といういい方をされることがある。果物とは(樹木にできる)食用になる果実である。果実とは種子を含む物体である。イチジクの実には種子ができていないので、厳密にいえば果実ではないということになる。

いやいや、イチジクの実の中心部にはぷちぷちした食感のタネがあるではないか── と思うが、じつはあれは種子ではない。日本で栽培されているイチジクは受粉をしていないので、子孫を残せる種子ではない(イチジクの完熟した実を庭に植えても発芽することこはない)。タネになれなかった、タネのような形状をしているが子孫を残す能力のない出来損ないのなんちゃってな秕(しいな)なのである。なのにちゃんとした種子のようにぷちぷち食感になっているからイチジクは不思議。こうした一風変わった性質から「イチジクは花が肥大化したもの」と言い表されることがある。これが原因で「私たちが食べているイチジクは花である」とのちらほら見かける珍妙な記述が生まれてくるのだろう。もちろん花なんかとっくのとうに咲き終わっているので、花ではない。私たちが食べているイチジクは、花は咲き終わったものの果実になりそこねた果実っぽいものである。ふつうはこういったものも含めて果実や果物と呼んでしまうので、私たちが食べているイチジクは花ではなく果実である。果物である。

イチジクの実 葉山町上山口 2017/08/29

イチジクの実の”へそ” 葉山町上山口 2017/08/29

先にも述べたがイチジクコバチは日本にはいないので、イチジクの実を半分に切ったら中から小さな虫がうじゃうじゃ飛び出てくるなんていう事件は発生しないので安心。なおイチジクの”へそ”あるいは”目”と呼ばれる謎の穴は、イチジクコバチが出入りするための玄関口である。大きな穴が開いていないのは、イチジクコバチという特殊な連中以外は出入りできないようにしているものと思われる。

イチジクの秋果と夏果

イチジクの果実は二期穫りできるものがある。


秋果(あきか)

6月以降に生えた花嚢が実となって、晩夏から初秋にかけて膨らんで熟したもの。一般のスーパーマーケットに数多く並ぶのはこの秋果である。最盛期は9月上旬。


夏果(なつか)

イチジクの花嚢は6月以降、だらだらだらだらと長きに渡って次々と新しいものが生えてくる。このうち、生える時期が遅かったせいで秋果になり損ねたやつが冬を越し、翌年の初夏になってようやく膨らんで熟したものが夏果である。イチジクの花嚢は夏を過ぎると休眠し、秋冬でも枯れたり落ちたりすることなくそのまま木に付いたままで翌年まで頑張って残り、初夏まで待って実になるものがあるのである。店頭に出回らないでもないが、数は多くないため値段はやや高め。

イチジクには便秘解消などの効能があるという。有名な「イチジク浣腸」(イチジク製薬)はそれに因んで命名され、容器もイチジクの実のような形状になっているとされる。イチジクの成分が含まれているわけではない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする