引き起こし シソ目/シソ科/ヤマハッカ属 花期/9月下旬~11月 結実期/11月末~12月
学名/Isodon japonicus (Burm.f.) H.Hara
薬用自生種稀少保護
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
山地や丘陵地の林縁などに生える、やや大型になる多年草。草丈は1mくらいになる。ぱっと見た感じは、花が白っぽいヤマハッカ(山薄荷)、といった印象を受けるだろう植物。「引き起こす」とは、”(1)悪い事態を発生させる、(2)倒れているものを立たせる”の二つの意味があるが、名前の由来は二番目の方で、弘法大師(空海)が病気で倒れている旅人にこの薬草を飲ませたところ病人が起き上がって元気になったという故事に基づく。牧野富太郎博士は”起死回生の効あり”と紹介している、胃腸薬。別名エンメイソウ(延命草)。神奈川県内では丹沢や箱根といった山地を中心に多からず自生あり。湘南・鎌倉・三浦半島に限っては「絶滅危惧IA類」相当のかなりの希少種。
#ヒキオコシ 箱根湿生花園 2017/10/01
ヒキオコシ生える草地 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ(紫花はオオバクサフジ) 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ(紫花はオオバクサフジ) 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
葉は、苦い。「良薬は口に苦し」とはいうけれど、舌と喉が感じる度を越した苦さは、生命に危害を加える毒物が如し。十秒とて咀嚼(そしゃく)できまい。
ヒキオコシの葉 平塚市・湘南平 2023/10/14
県内では山地に、タカクカヒキオコシ(高隅引き起こし)、イヌヤマハッカ(犬山薄荷)、その変種であるカメバヒキオコシ(亀葉引き起し)、といった類似種あり。いずれも上唇(じょうしん)に斑紋なし。湘南・鎌倉・三浦半島には分布しない。
ヒキオコシの花
ヤマハッカに近い形で、下唇(かしん)がしゃくれ気味。但し花色は紫ではなくほぼ白で、上唇に紫色の斑紋が入る。じつはヤマハッカにもこの手の配色のものがごく希にあって紛らわしい。ヒキオコシの蕊は長くて下唇から明らかに突き出る、ヤマハッカの蕊は下唇にほぼ収まる、という違いあり。
ヒキオコシ(紫花はオオバクサフジ) 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ(紫花はオオバクサフジ) 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシ 平塚市・湘南平 2023/10/14
ヒキオコシの実
シソ科らしく、萼に埋もれて小さな粒状の実が地味にできる。
ヒキオコシの未熟な実 平塚市・湘南平 2023/11/22
ヒキオコシの未熟な実 平塚市・湘南平 2023/11/22
湘南平(南面の草地、一地点で保護)
#箱根湿生花園(②ススキ草原区)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
『牧野 日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)