ウマノスズクサ

馬の鈴草 コショウ目/ウマノスズクサ科/ウマノスズクサ属 花期/7月~8月 結実期/11月
学名/Aristolochia debilis Siebold & Zucc.

有毒薬用自生種稀少保護

ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

#ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

河川の日当たりの良い土手や川を囲うフェンスに絡まって生える蔓性の多年草。丘陵地の森林内部や周辺ではなく、基本的には沖積地(ちゅうせきち、相模川などが運んできた土砂で成立した平地)に分布。従って、都市化・住宅地化の影響をもろに受け生息場所を減らしている模様。また川べりはお役所が定期的に無選別な刈払いをやってしまうため、ウマノスズクサの生息数は減少の一途を辿っているはず。湘南・鎌倉・三浦半島では滅多にお目にかかれない珍種となっている。支柱となるものを一生懸命上に上によじ登ろうというヤマノイモ(山の芋)などのような強い意気込みはさほど感じられず、他の雑草にまみれてだらりと這うように横に広がっているものも。うまく絡まり始めると高さ3mとか4mくらいまでぐんぐん登る。虚弱ではまったくなく、旺盛に茂る。広い意味でコショウ(胡椒)の仲間なだけあって、全草が苦くさい。

ウマノスズクサの発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2020/03/11

#ウマノスズクサの発芽 茅ヶ崎市浜之郷 2020/03/11

若いウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

若いウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

葉は互生。形状はヤマノイモやヘクソカズラ(屁糞葛)などに似るが、先端が尖らず丸っこいのが大きな特徴。この丸みを帯びた葉先だけがウマノスズクサ探索の頼りであるので、様々な植物の葉が繁茂している夏場にウマノスズクサを探し出すことはなかなか困難である。

ウマノスズクサの葉 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

#ウマノスズクサの葉 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

ウマノスズクサの葉 横浜市戸塚区・舞岡公園 2019/06/26

#ウマノスズクサの葉 横浜市戸塚区・舞岡公園 2019/06/26

葉は(芽や茎や花も含めてであるが)、近似種オオバウマノスズクサ(大葉馬の鈴草)と共に、ジャコウアゲハ(麝香揚羽)という黒色アゲハチョウ(揚羽蝶)の幼虫の食草になっている。ジャコウアゲハもたくさんいるものではないので駆除してしまうわけにいかないが、幼虫が多数憑(と)りついてしまうと、大きな葉をいくつも落としてしまったり、成長点となる新芽をすべて食い尽くしてしまったりと、なかなかえぐい食いっぷりを見せる。ウマノスズクサからしたら悪魔以外の何物でもないレベルの害虫で、成長は大きく阻害される(ときに成長が完全に止まる)ことになる。

ウマノスズクサの葉裏に尻を押し当て産卵するジャコウアゲハ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサの葉裏に尻を押し当て産卵するジャコウアゲハ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサの葉裏に産み付けられたジャコウアゲハの卵 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサの葉裏に産み付けられたジャコウアゲハの卵 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサに付着した多数のジャコウアゲハの幼虫 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/13

ウマノスズクサに付着した多数のジャコウアゲハの幼虫 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/13

ウマノスズクサを食い荒らすジャコウアゲハの幼虫 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサを食い荒らすジャコウアゲハの幼虫 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサの茎先端を食い千切ったジャコウアゲハの幼虫 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/13

ウマノスズクサの茎先端を食い千切ったジャコウアゲハの幼虫 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/13

ウマノスズクサの、ジャコウアゲハの幼虫に食われた茎先端・脇芽・葉 茅ヶ崎市浜之郷 2019/07/23

#ウマノスズクサの、ジャコウアゲハの幼虫に食われた茎先端・脇芽・葉 茅ヶ崎市浜之郷 2019/07/23

神奈川県内では丹沢の山地にタンザワウマノスズクサ(丹沢馬の鈴草)なるものあるが、本種ではなくオオバウマノスズクサによく似る。

ウマノスズクサの花

オオバウマノスズクサよりも更に風変りでちんちくりんな姿。食虫植物ではないが、小さなハエ(蠅)などを花の中に呼び込んで受粉する仕組みらしい。悪臭を放つなどしていないためハエが花にたかっているところはあまり見かけないけれども、花を解体してみると中にコバエ(小蠅)が入っていることが多い。筒状の部分には、虫を閉じ込めるなどのからくりはなくただの筒。その基部に蕊が付いている、意外と普通の花。蔓植物は大株に育たないとぜんぜん花を付けてくれない種類もまま見られるが、ウマノスズクサはもりもり成長するので簡単にたくさんの花を咲かせてくれるだろう。

ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

#ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

#ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

#ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

#ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2016/07/11

ウマノスズクサの花を真正面から 横浜市戸塚区・舞岡公園 2019/06/26

#ウマノスズクサの花を真正面から 横浜市戸塚区・舞岡公園 2019/06/26

ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2019/06/26

#ウマノスズクサ 横浜市戸塚区・舞岡公園 2019/06/26

ウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

ウマノスズクサ 茅ヶ崎市・相模川 2019/07/10

変ちくりんでおもしろい花のおかげで、自生地を(あるいは移植して)保護しているところも。

ウマノスズクサの実

縦3cm弱×横2cm強くらいのタマゴ(卵)のような形の実ができることが、ごく希にある。栽培品の大株で、実を結ぶのは年によってゼロから三個くらい。コバエがよくたかっていたからしっかり受粉してくれているだろうなんて期待しても大外れで、ぜんぜん実はならない。川べりにのみ生息する特殊な虫が媒介しないと結実できないのか何なのか。実は若いうちは緑色で、うっすら紫っぽく熟して枯れる。上部が軽く裂開するが、ぱっくり全開はしない。強風で揺られると中から、ユリ(百合)の仲間みたいな扁平な種子が少しづつ飛ばされてゆく仕組みか。もうちょっと開いてやらないと外へ出られずに終わる種子が多そうに感じられるのだが。実も苦くさい。

ウマノスズクサの花後(不稔に終わる実) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/30

#ウマノスズクサの花後(不稔に終わる実) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/30

ウマノスズクサの花後(不稔に終わる実) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/30

#ウマノスズクサの花後(不稔に終わる実) 茅ヶ崎市浜之郷 2022/08/30

ウマノスズクサの若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/09/10

#ウマノスズクサの若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/09/10

ウマノスズクサの若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/09/10

#ウマノスズクサの若い実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/09/10

ウマノスズクサの熟しかけている実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

#ウマノスズクサの熟しかけている実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

#ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2023/11/08

#ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2023/11/08

ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2023/11/08

#ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2023/11/08

ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2023/11/08

#ウマノスズクサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2023/11/08

ウマノスズクサの熟して裂開した実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/11/23

#ウマノスズクサの熟して裂開した実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/11/23

ウマノスズクサの完熟して裂開し乾燥した実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/12/27

#ウマノスズクサの完熟して裂開し乾燥した実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/12/27

ウマノスズクサの熟した実を人為的に割ってみたもの 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

#ウマノスズクサの熟した実を人為的に割ってみたもの 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

ウマノスズクサの人為的に分解してみた実と種子 茅ヶ崎市浜之郷 2020/12/27

#ウマノスズクサの人為的に分解してみた実と種子 茅ヶ崎市浜之郷 2020/12/27

ウマノスズクサの種子 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

#ウマノスズクサの種子 茅ヶ崎市浜之郷 2022/11/04

ウマノスズクサの種子 茅ヶ崎市浜之郷 2021/02/07

#ウマノスズクサの種子 茅ヶ崎市浜之郷 2021/02/07


東京都文京区・#小石川植物園(薬園保存園、分類標本園)、横浜市緑区・四季の森公園(池西側の通路沿い西側)、横浜市戸塚区・#舞岡公園(小谷戸の里の足洗場入口)

藤沢市打戻、茅ヶ崎市・相模川

大和市・#泉の森(湿生植物園北側)

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

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オオバウマノスズクサ