オオバウマノスズクサ

大葉馬の鈴草 コショウ目/ウマノスズクサ科/ウマノスズクサ属 花期/4月中旬~6月上旬 結実期/8月下旬~10月
学名/Aristolochia kaempferi Willd.

有毒自生種

オオバウマノスズクサ 横須賀市湘南国際村 2017/06/04

オオバウマノスズクサ 横須賀市湘南国際村 2017/06/04

丘陵地のハイキングコース沿いや林縁部に生える落葉藤本(とうほん)で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。日本固有種。名前はウマノスズクサの葉が大きいものの意であるが、生えている場所や花が咲く時期などもいろいろと異なるため別種と捉(とら)えておいた方がよいだろう。へんちくりんな花を咲かせる点は一緒。湘南・鎌倉・三浦半島では、広範囲に森が残っている丘陵地に多いが分布には偏りあり、ある地域では普通種。市街地になし。

ハイキングコース沿いの低木に絡まって生えるオオバウマノスズクサ 横浜市栄区 2018/12/23

ハイキングコース沿いの低木に絡まって生えるオオバウマノスズクサ 横浜市栄区 2018/12/23

葉は互生で、人の手のひらサイズにもなる大きな心形(しんけい、ハート形)。ふつう幅広なでっぷり太った丸っこい心形だが、細身でヤマノイモ(山の芋)の葉を思わせる形状のものも。いずれも葉は大きく、触ってみればふかふかと細かい毛が多く生えているので区別はできる。ヤマノイモの葉は無毛。一応ヘクソカズラ(屁糞葛)アオツヅラフジ(青葛藤)シオデ(牛尾菜)あたりの葉とも見分けられるように。なおオオバウマノスズクサは茎が木質化する(草ではなく)木である。ヤマノイモなどより展葉時期が早いため、5月上旬までに探せば見間違えることはないだろう。5月中旬以降はヤマノイモの仲間やクズ(葛)の葉が伸長してくるので、藪にも紛れてすこし探しづらくなる。葉を落とす時季は遅いため晩夏以降も人目に触れやすいか。

オオバウマノスズクサの葉 横須賀市湘南国際村 2017/06/04

オオバウマノスズクサの葉 横須賀市湘南国際村 2017/06/04

オオバウマノスズクサのやや細身な葉 横浜市栄区 2018/11/15

オオバウマノスズクサのやや細身な葉 横浜市栄区 2018/11/15

オオバウマノスズクサの細身な葉 横浜市金沢区 2018/11/15

オオバウマノスズクサの細身な葉 横浜市金沢区 2018/11/15

オオバウマノスズクサのかなり細身な葉 横浜市栄区 2018/11/15

オオバウマノスズクサのかなり細身な葉 横浜市栄区 2018/11/15

オオバウマノスズクサの斑入りの葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/09/11

オオバウマノスズクサの斑入りの葉 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/09/11

オオバウマノスズクサの葉裏に生える細かい毛 横浜市栄区 2018/11/15

オオバウマノスズクサの葉裏に生える細かい毛 横浜市栄区 2018/11/15

オオバウマノスズクサ(とウマノスズクサ)はジャコウアゲハ(麝香揚羽)の幼虫の食草としても有名。葉裏にキモカワイイ白黒いぼいぼの芋虫が付いていたらそれ。

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 横浜市栄区 2017/05/21

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 横浜市栄区 2017/05/21

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 横浜市栄区 2017/05/21

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 横浜市栄区 2017/05/21

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 横須賀市湘南国際村 2017/06/04

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 横須賀市湘南国際村 2017/06/04

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 鎌倉市浄明寺 2019/08/11

オオバウマノスズクサの葉裏にいたジャコウアゲハの幼虫 鎌倉市浄明寺 2019/08/11

チョウ(蝶)マニアが飼育しているジャコウアゲハの幼虫の餌とすべくオオバウマノスズクサを採取しようとしているようであるが、自然保護の観点からもジャコウアゲハ自身から考えても脅威である。ジャコウアゲハは産卵場所を探して薄暗い森の中をあっちもこっちも探し回って飛んでいるが、オオバウマノスズクサを見つけ出すことに窮している様子が常々観察されている。オオバウマノスズクサを引っこ抜いて持ち帰るなどせぬように。(そもそも植物の持ち出し行為は禁止されている緑地がほとんどのはず。)本種は呆れるほどに成長スピードが遅く、簡単には株が大きくならない、増えてもくれないものである。ジャコウアゲハを保護したいのであれば、オオバウマノスズクサ等の自生地を保全するのが正しい道筋と考える。

オオバウマノスズクサの花

サクソフォン(サキソフォン)のような奇妙な形状。なお蔓性の木に共通する性質として、しっかりと大きく成長した株でなければ花を付けない。ハイキングコース付近の株は通路確保などの名目でしばしば刈払われてしまうため、葉ばかりちょくちょく見かけるものの花はぜんぜん咲いていない、なんていうことも。花は人の目線よりもすこし上の方にあることが多いか。

オオバウマノスズクサ 鎌倉広町緑地 2017/05/07

オオバウマノスズクサ 鎌倉広町緑地 2017/05/07

オオバウマノスズクサ 鎌倉広町緑地 2017/05/07

オオバウマノスズクサ 鎌倉広町緑地 2017/05/07

食虫植物を思わせる姿ではあるものの、食虫植物ではない。受粉をするために小さな虫を呼び込んでしばし中に閉じ込めようとする構造にはなっているらしい。

オオバウマノスズクサの実

ウズラ(鶉)の卵とニワトリ(鶏)の卵の中間くらいの大きさの実ができる、ことがごくごく希にある。

オオバウマノスズクサの未熟な実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/09/11

オオバウマノスズクサの未熟な実 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/09/11

オオバウマノスズクサの実の残骸 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/11/30

オオバウマノスズクサの実の残骸 横浜市栄区・横浜自然観察の森 2020/11/30


※チョウ(蝶)マニアによる乱獲に歯止めをかけるべく、分布地に関する情報の公開を制限しました。(2020/07/03)

参考資料

『日本の固有植物』 加藤雅啓・海老原淳編 東海大学出版会発行(2011)

『オオバウマノスズクサ』へのコメント

  1. 里山ライフ 投稿日:2023/05/10(水) 08:37:47 ID:bf401e7b0 返信

    >チョウ(蝶)マニアが飼育しているジャコウアゲハの幼虫の餌とすべくオオバウマノスズクサを採取しようとしているようであるが、自然保護の観点からもジャコウアゲハ自身から考えても脅威である。ジャコウアゲハは産卵場所を探して薄暗い森の中をあっちもこっちも探し回って飛んでいるが、オオバウマノスズクサを見つけ出すことに窮している様子が常々観察されている。オオバウマノスズクサを引っこ抜いて持ち帰るなどせぬように。(そもそも植物の持ち出し行為は禁止されている緑地がほとんどのはず。)本種は呆れるほどに成長スピードが遅く、簡単には株が大きくならない、増えてもくれないものである。ジャコウアゲハを保護したいのであれば、オオバウマノスズクサ等の自生地を保全するのが正しい道筋と考える。

    強く同感です。
    今日の今日まで、
    本種に無知でしたが。
    家屋周囲にジャコウアゲハが出没し、
    https://mirusiru.jp/nature/flower/umanosuzukusa#comment-926
    覚醒させられました。

    • mirusiru.jp 投稿日:2023/05/11(木) 17:22:42 ID:570197d21 返信

      こんばんは。
      こんな語気が強いことを言っているのですね、私。笑
      採取目的で閲覧する輩が一定程度いるので困ったものです。
      オオバウマノスズクサはそこまで希少な植物ではないので、あずかり知らぬところで上手いことやってくれってことで。

      • 里山ライフ 投稿日:2023/05/15(月) 12:37:58 ID:18c2b0c3a 返信

        いえいえ、そんなに謙遜なさらずに。
        実情はひどいもので、深刻なようです。

        このジャコウアゲハを調べてみたところ、
        今では、
        日本全国で希少で「珍種」となり、絶滅が危ぶまれていますが…
        その危機的な状況により、
        愛蝶家や業者は「絶滅してしまう前に、収集したい」と血眼になっているようです。
        「ジャコウアゲハ」の情報に非常に敏感で、
        忽ち、どこからともなく業者が出没し、絶滅化している事例が頻発していることが分かりました。

        同様な事例として、
        野鳥の愛好家やカメラマン(プロ、アマ問わず)、
        報道機関も脅威の存在と化しています。
        野鳥観察・野鳥撮影についてのお願い | 栃木県 HP
        https://www.pref.tochigi.lg.jp/d56/tuukoudome/sannkoutyou.html
        日本野鳥の会栃木県支部の監視によれば、
        ネット情報が発信された直後から、
        人々が押し寄せ始め、翌日には200人から300人もの群衆に取り囲まれている異常事態が続いています(代々木公園でのオオタカ営巣も同様に大問題になっています)

        「あずかり知らぬところで」は、
        「見て見ぬふり」同様でやはり拙いでしょう。
        ハッキリと「警告」をすべきとの思いを強くしています。

        • mirusiru.jp 投稿日:2023/05/15(月) 20:34:37 ID:0f0df17ca 返信

          私らも同じなんですよね。
          希少な植物と出遭うためにはふつう入り込まないだろう所にも足を踏み入れなければいけません。そこはじつは私有地かもしれません。邪魔だ、迷惑だと感じる人はいるでしょう。草地に踏み込めば今度は私自身が踏圧で植物を傷めつけることになります。調査研究のために標本等を採取しなければならないこともあります。盗掘と違いないと批判もあるでしょう。その地で何らかの活動をされている方々は、俺たちの許可なく勝手なことをするなと怒るでしょう。所によっては車を路駐させるしかないこともままあり、住民等には迷惑以外の何ものでもないでしょう。
          何かをすれば必ず功罪の両方が付いて回るので、バランスを取る難しさを常々感じて行動しています。一歩踏み込まなければ得るものは限られています。やり過ぎた方が成果は上がるのですが、やり過ぎていることが露見すればたちまち反感を買うだけです。何をどこまでやるか、やらないか、難しい選択に日々直面しています。

  2. おじじ 投稿日:2020/09/04(金) 09:25:30 ID:1d45e7f65 返信

    オオバウマノスズクサを発見できました。
    これが、鼻がビローンと長いミッキーマウスのような葉の形でした。
    葉の変異が多いとは聞いていましたが、あまりにへんてこりんな形です。
    数株あって、管理のされた緑地帯なので、生き残ってほしいですね。

    • mirusiru.jp 投稿日:2020/09/05(土) 19:46:56 ID:9abad476e 返信

      おじじさんの居住地域にはオオバウマノスズクサは、(丘陵地の林が残ってさえいれば)意外と少なくないのではと思います。目が慣れてくれば見つけられるようになるのではないかと。
      成長が異常に遅いため、採集圧等が加わればあっという間に激減すると思われますので、どうぞお大事に。

  3. おじじ 投稿日:2020/07/03(金) 09:55:47 ID:9cfee3692 返信

    栄区の***で、一度、見かけたことがありました。
    それ以来、探し続けてきましたが、あきらめました。
    この苦労で、習得できたのは、アオツヅラフジとシオデが近所に繁殖していることでした。
    一方、ウマノスズクサを栽培してジャコウアゲハを育てている近所の人から、二株分けてもらうことができました。
    地上部は枯れてしまいましたが、芽が出てこないかと待ち望んでいる日々です。
    この付近には、個体数は少ないですが、黒いアゲハ蝶をよく見かけます。
    クロアゲハらしいのですが、ジャコウアゲハの擬態なんですね。

    ※(管理人より)具体的な地名は伏せました。

  4. 宇田川純一 投稿日:2020/06/03(水) 14:34:00 ID:588ef7378 返信

    返信ありがとうございました。
    そうともし知れす失礼しました。
    再度調べ他をあたってみます。
    ありがとうございました。

  5. 宇田川純一 投稿日:2020/06/03(水) 14:21:21 ID:588ef7378 返信

    ありがとうございました。
    また そうともしれず申し訳ありませんでした。
    もう一度調べ直してみます。

  6. 宇田川純一 投稿日:2020/06/03(水) 11:45:28 ID:588ef7378 返信

    こんにちは私は鎌倉腰越に住んでいる宇田川といいます。広町緑地に大葉うまのすず草を探しに見たものの見つけれませんでした。どの辺りにありますでしょうか?
    返信いただければ嬉しくまた助かります。葉はジャコウアゲハの幼虫に食べさせたく思います。
    よろしくお願い申し上げます。

    • mirusiru.jp 投稿日:2020/06/03(水) 12:33:33 ID:414e58778 返信

      宇田川純一さん、こんにちは。

      質問への回答について
      https://mirusiru.jp/oshiete

      鎌倉広町緑地の案内板に掲げられている「おねがい」の第一項
      “動植物の持込、持出はしないでください。”

      広町緑地で私が毎年観察していた地点のオオバウマノスズクサは、昨年あたりに姿を消してしまいました。台風で荒れやすい場所にありましたし、刈られた可能性も否定できません。その後の確認はしておりませんので現状は不明です。