広葉の河原柴胡 バラ目/バラ科/キジムシロ属 花期/5月中旬~6月上旬 結実期/6月中旬~7月
学名/Potentilla niponica Th.Wolf
自生種稀少保護
環境省レッドリスト「絶滅危惧II類(VU)」
神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧II類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IB類」
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
日当たりの良い、主に河川敷にある砂礫質の低草地ときに海岸風衝草地に生える多年草。日本固有種。名は、小葉が幅広ながら、姿がカワラサイコによく似ているもの、の意。カワラサイコは、河原に生えて、根がミシマサイコ(三島柴胡)のように肥大するもの、として名付けられた。身近な雑草であるヘビイチゴ(蛇苺)の仲間なのだが、本種は希少種。茎が立ち上がらない、全草が地べたにへばりつく姿。なので海辺にあるものはテリハノイバラ(照葉野茨)の若株のようで、遠目にはちょっと紛らわしい。神奈川県内では主に相模川の河川敷に比較的多く分布があるらしい。県絶滅危惧のカテゴリーが一つ下げられたのはそのせいか。とはいえ、そもそも多くはない自生地は更に減少しており、先行きは決して明るいものではない。耐塩性が高いようで、三浦半島の磯(岩石海岸)のすぐ近くでもハマボッス(浜払子)と並んで生えていたりするからおもしろい。
磯と草地の間に生えたヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
磯と草地の間に生えたヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
磯と草地の間に生えたヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
海岸風衝草地の際に生えたヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/10
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
参考)遠目には姿が似ているテリハノイバラの若い株 三浦市 2023/05/10
梅雨のヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/06/21
秋のヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/10/26
根生葉(こんせいよう)は、カワラサイコのような奇数羽状複葉。但し、カワラサイコに比べれば小葉が少なく、側小葉(そくしょうよう)は六対くらいまで。小葉の切れ込みは浅く、中裂止まり。従って、小葉はカワラサイコより幅広に見える。葉裏は毛が多く、真っ白。小葉と小葉の間の軸に付属小葉片と呼ばれる小さな葉が生え出ない。
ヒロハノカワラサイコの葉 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコの根生葉 三浦市 2023/05/10
ヒロハノカワラサイコの根生葉 三浦市 2023/06/21
ヒロハノカワラサイコの根生葉 三浦市 2023/05/10
ヒロハノカワラサイコの真っ白な葉裏 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコの茎生葉 三浦市 2023/05/10
茎は毛むくじゃら。テリハノイバラにあるような棘(とげ)はまったくない。
ヒロハノカワラサイコの多毛な茎 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコの花
茎の先端で、長期にわたってぽつりぽつりと咲き続ける。形といい、大きさ(花径1.5cm)といい、色(黄色)といい、見慣れたヘビイチゴの花によく似ている。
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコ 三浦市 2023/05/25
萼片は五枚。その外側に副萼片が五枚付く。が、両者同じような形をしているので、萼片は二重(ふたえ)で十枚あるように見える。カワラサイコは副萼片が明らかに小さい。どれが萼片でどれが副萼片なのかは、開花中の花ではなく、蕾か果実を見れば判断できるだろう。
ヒロハノカワラサイコの萼 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコの萼 三浦市 2023/05/10
梅雨入り(6月中旬)で開花は終わり。
ヒロハノカワラサイコの実
はじめ緑色で、焦げ茶色に熟す。赤いイチゴにはならない。
ヒロハノカワラサイコの若い実 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコの若い実 三浦市 2023/05/25
ヒロハノカワラサイコの実 三浦市 2023/06/21
ヒロハノカワラサイコの熟しかけている実 三浦市 2023/06/21
ヒロハノカワラサイコの熟しかけている実 三浦市 2023/06/21
ヒロハノカワラサイコの熟した実 三浦市 2023/06/21
一株で多くの種子を作り出しているはずも、それに見合った個体数が生えていないのはなぜだろうか。
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)