蟒蛇草 バラ目/イラクサ科/ウワバミソウ属 花期/(雄花)4月末~5月上旬、(雌花)5月末~6月上旬 結実期/7月 むかご/9月下旬~11月中旬
学名/Elatostema involucratum Franch. & Sav.
食用薬用自生種
ウワバミソウ 鎌倉市浄明寺・衣張山入口(平成巡礼道) 2018/09/28
林内の薄暗く湿った場所に生える多年草で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。名は、ウワバミ(大蛇)でも出てきそうな感じの奥まったじめじめした気味の悪い場所に生えることから。山菜として食用になり、地方により茎が赤みを帯びることからアカミズ(赤水)、あるいはミズナ(水菜)とも呼ばれる。生育にはおそらく真夏でもひんやりした湧水に土が濡れていることが必要。蒸れると腐る。大きさは様々で、草丈が人の足首くらいしかない手乗りサイズのものもあれば、膝(ひざ)より高く大型化するものも。湘南・鎌倉・三浦半島では三浦丘陵の(一般的な観光客は入り込まないような)谷戸深部で見かけることがある。土砂崩れが発生しづらい場所ではよく群生しており珍しい植物ではない。
ウワバミソウ 逗子市・神武寺裏参道 2019/05/23
初秋のウワバミソウ 鎌倉市・建長寺回春院 2019/10/03
葉の先端が尾状(びじょう)に長く伸び、茎は無毛。ただし、若いあるいは生育悪い葉の先端は長く伸びないものも多々あり。茎に毛が生えていれば姿がよく似た同属のトキホコリ(時繁)だろう。
ウワバミソウの茎と葉 鎌倉市・建長寺回春院 2019/10/02
より小型なヒメウワバミソウ(姫蟒蛇草)なるものが山地にあり見分けが厄介ながら、湘南・鎌倉・三浦半島に自生があるのはウワバミソウのみ。どう見ても小さくてヒメウワバミソウなんじゃないかと疑いたくなる個体はたくさんあるが、ただの生育不良なのだそうな。ヒメウワバミソウは葉の鋸歯が片側五個以下で、実の表面に突点が多い。
ウワバミソウの花
雌雄異株(しゆういしゅ)とされていたが今は同株とされる。雄花が終わったのちに雌花が咲くのだとか。葉腋(ようえき)から眺めの柄(え)を伸ばした先に付くのが雄花。雌花は葉腋に接着した姿で咲く。
ウワバミソウの雄花の蕾 鎌倉市浄明寺・衣張山入口(平成巡礼道) 2018/04/22
ウワバミソウの雌花 逗子市・神武寺裏参道 2019/05/23
トキホコリの花は夏の終わりに咲く。
ウワバミソウのむかご
初秋、葉が出る節の部分が褐色に膨らむ。これがむかご。秋深まれば葉は傷み、茎は節ごとにばらばらになり、むかごが周囲に散らばり、のち発芽する。葉が汚らしく傷む前に収穫されたむかごが食用になる。茎も可食、葉は千切って捨て、茹でる。
ウワバミソウのむかご 鎌倉市・建長寺回春院 2019/10/02
ウワバミソウのむかご 鎌倉市浄明寺・衣張山入口(平成巡礼道) 2018/09/28
ウワバミソウのむかご 鎌倉市浄明寺・衣張山入口(平成巡礼道) 2018/09/28
ウワバミソウの節でばらけたむかご 逗子市・神武寺裏参道 2017/12/02
トキホコリが花を咲かせる頃、ウワバミソウはまだ小さいながらむかごを付け始めているものが多いだろう。
横浜市栄区・横浜自然観察の森(ミズキの道12番)
逗子市・神武寺(裏参道)、鎌倉市十二所・御坊ガ谷(吉沢川上流奥地)、衣張山(田楽辻子の道側登口=平成巡礼道)
建長寺回春院(林内)、宅間ガ谷(奥の山道)、散在ガ池森林公園
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)