シマナンヨウスギ

島南洋杉 マツ目/ナンヨウスギ科/ナンヨウスギ属 花期/5月
学名/Araucaria heterophylla (Salisb.) Franco

外来種稀少

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

オーストラリア東方沖にあるノーフォーク島を原産とする常緑の高木で、ふつうは雌雄異株(しゆういしゅ)。針葉樹。原産地では樹高50mを超える極めて大きな木に育つ。幹が一本直立し、本来は(姿が荒れることなくきれいに育てば)モミ(樅)の木のような三角錐になる樹形が美しい。別名ノーフォークマツ(のーふぉーく松)、コバノナンヨウスギ(小葉南洋杉)。和名に引っ張られてこれはマツなのかスギなのかどっちなんだいと思案されるかもしれないが、どちらでもなく、ナンヨウスギとしてまとめられる独立した一団の一員である。ナンヨウスギ属に分類される植物の総称として単にアロウカリアアローカリアアラウカリア、英語での発音はアローケァリア)と呼ばれることも。日本国内でも暖地で公園木あるいは街路樹などとして希に植栽されることがないでもない。単にナンヨウスギと呼ばれて栽培されているものあらば、本種である可能性が高い。ちょっと異国感や南国感あり。大きく育つとジュラ紀感が出る。世界三大公園樹(世界三大公園木、世界三大庭園樹、世界三大庭園木)に、ヒマラヤスギ(ひまらや杉)、コウヤマキ(高野槇)と併せて、(日本国内で)名が挙げられる。きれいな樹形に育てば良いのだが、姿が荒々しく乱れて見苦しいものも少なくない。『藤沢市文化財調査報告書 第八集』に’原産地では、土人の伐採のため絶滅’との記載あるが誤認であり、絶滅はしていない。

シマナンヨウスギの若木(左奥の高木はクロマツ) 大磯プリンスホテル 2024/01/04

#シマナンヨウスギの若木(左奥の高木はクロマツ) 大磯プリンスホテル 2024/01/04

シマナンヨウスギの若木 大磯プリンスホテル 2024/01/04

#シマナンヨウスギの若木 大磯プリンスホテル 2024/01/04

湘南・鎌倉・三浦半島では、江の島サムエル・コッキング苑にあるものが藤沢市指定天然記念物になっていることで知られる。同苑はイギリスの貿易商サムエル・コッキングが明治15年(1882)に開設した庭園に始まる熱帯植物園で、シマナンヨウスギはコッキング自身が初めて日本に持ち込んで植えたもの。日本国内にあるシマナンヨウスギとして最古のものである。数少ない当初の遺物として、江の島が辿ってきた歴史を語る上で意義深い樹木といえる。(クックアロウカリアの頁も参照)

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

江の島サムエル・コッキング苑のナンヨウスギ植栽地点


江の島サムエル・コッキング苑のナンヨウスギ植栽地点


①=クックアロウカリア ※樹名板なし
②=シマナンヨウスギ ※樹名板なし
③=シマナンヨウスギの変種 ※「シマナンヨウスギ」の樹名板あり

④=シマナンヨウスギ ※樹名板あり
⑤・⑥=昭和50年(1975)代に挿し木されたとかいうシマナンヨウスギの若木

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

昭和46年(1971)7月5日の文化財(天然記念物)指定当初は「シマナンヨウスギ群3種4株」として近似種クックアロウカリアも含めて一件に一括指定されており、その内訳は、シマナンヨウスギ2本、シマナンヨウスギの亜種1本、クックアロウカリア1本、であった。令和6年(2024)現在は「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」の二件に分離されている。いつどのような理由で変遷したのか、その経緯は担当部署である藤沢市生涯学習部郷土歴史課も把握しておらず不明。「シマナンヨウスギ」がどの木を指すのかも定かではなくなっているが、素直に考えれば上記の(クックアロウカリアを除く)3本をいうものと思われる。但しそのうちの1本であるシマナンヨウスギの亜種は現在は変種であると認識が改められている。そもそも誰がどのような根拠で亜種と判定したのか不明。亜種から変種に変更された経緯や理由も同様に不明。亜種だか変種だかの学名も不明。現地の文化財説明板には’大枝から出る小枝は雌雄が別’と記載されており、苑内のシマナンヨウスギ(の少なくともいずれか)は雌雄同株(しゆうどうしゅ)の雌雄異花なのだろう。苑内には別途、昭和50年(1975)代に挿し木で増やされたというシマナンヨウスギの若木が2本ある。苑内の現状は、(種としては同じものなので誤りとは言えないものの)シマナンヨウスギ変種の方に「シマナンヨウスギ」の樹名板が掛けられていたり、木の正面ではない中途半端な位置に文化財説明板(平成28年(2016)改訂)が立てられていたりしており、現地に赴いて見てもどれが何なのかさっぱり理解しがたい状態が続いている。また『藤沢市文化財調査報告書 第52集』77頁掲載の「第二図 現況図(2017年)」はシマナンヨウスギ1本④と若木2本⑤・⑥の植栽位置が間違っている(園路を一本挟んで南側の地点が正しい)。

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

同苑には本種を含め妙なもの四件(ツカミヒイラギクックアロウカリア、シマナンヨウスギ、タイミンチク群)の市指定天然記念物がある。※追記/ツカミヒイラギは令和4年(2022)枯死し滅失、令和5年(2023)3月17日指定解除。

江の島にあるものは古く、大きく育った木であること、樹形などに損傷多いこと、柵で区切られて間近では観察できないこと、などから、シマナンヨウスギとシマナンヨウスギ変種とクックアロウカリアはどこがどう違うのか、枝の出方がどうとか葉が違うとか見聞きはするも、いまひとつよくわからず、見分けられない。

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の幹(樹皮) 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」の幹(樹皮) 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」(変種)の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」(変種)の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」(変種)の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」(変種)の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」(変種)の幹(樹皮) 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」(変種)の幹(樹皮) 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

三浦市内でも三浦海岸の駐車場などに植栽されている。三浦市がオーストラリア・ウォーナンブール市と姉妹都市となったことから贈られたものである。

シマナンヨウスギ 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

#シマナンヨウスギ 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

シマナンヨウスギの葉 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

#シマナンヨウスギの葉 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

シマナンヨウスギの葉 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

#シマナンヨウスギの葉 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

シマナンヨウスギの葉 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

#シマナンヨウスギの葉 三浦市・菊名・国道134号線「引橋」交差点 2020/11/13

シマナンヨウスギ 三浦市・上宮田(かみみやだ)・三浦海岸 2023/01/20

#シマナンヨウスギ 三浦市・上宮田(かみみやだ)・三浦海岸 2023/01/20

シマナンヨウスギ 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

#シマナンヨウスギ 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

シマナンヨウスギの葉 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

#シマナンヨウスギの葉 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

シマナンヨウスギの葉 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

#シマナンヨウスギの葉 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

シマナンヨウスギの葉 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

#シマナンヨウスギの葉 三浦市・上宮田・三浦海岸 2023/01/20

シマナンヨウスギの葉 大磯プリンスホテル 2024/01/04

#シマナンヨウスギの葉 大磯プリンスホテル 2024/01/04

シマナンヨウスギの葉 大磯プリンスホテル 2024/01/04

#シマナンヨウスギの葉 大磯プリンスホテル 2024/01/04

シマナンヨウスギの葉 大磯プリンスホテル 2024/01/04

#シマナンヨウスギの葉 大磯プリンスホテル 2024/01/04

植物園などに希に植栽されているブラジルマツ(ぶらじる松)も同属の近似種である。


東京都江東区・#夢の島熱帯植物館

三浦市・#国道134号線「引橋」交差点(令和4年(2022)末か細身に剪定)、#江の島サムエル・コッキング苑(UMIYAMA DO(海山堂、旧そば道場 松本館)西方に縦(南北)に並ぶ3本の高木のうち最も北側はクックアロウカリア・真ん中がシマナンヨウスギ・南側がシマナンヨウスギの変種、離れたヤタイヤシ群(樹名板あり)の東側にシマナンヨウスギ1本・その北隣に若木2本、苑内設置の地図に「Shimanan Yosugi」という怪表記がある、市指定天然記念物「クックアロウカリア」・市指定天然記念物「タイミンチク群」も、市指定天然記念物「ツカミヒイラギ」は令和4年(2022)枯死し滅失・令和5年(2023)3月17日指定解除)

三浦市・#三浦海岸(駐車場に多いが海風で荒れがち)、#逗子シーサイドハイツ(国道134号線に面した庭に若木1本)、#大磯プリンスホテル

参考資料

『藤沢市文化財調査報告書 第52集』 藤沢市生涯学習部郷土歴史課編集 藤沢市教育委員会発行(2017)

『朝日百科 世界の植物 9』 朝日新聞社発行(1979)

『藤沢市文化財調査報告書 第十集』 藤沢市教育委員会編集・発行(1975)

『藤沢市文化財調査報告書 第八集』 藤沢市教育委員会編集・発行(1972)

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