クックアロウカリア

Cook araucaria マツ目/ナンヨウスギ科/ナンヨウスギ属 花期/5月
学名/Araucaria columnaris (G.Forst.) Hook.

外来種稀少

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

オーストラリア東方沖(ノーフォーク島の北方)に浮かぶ島ニューカレドニア(フランス領)を原産とする常緑の高木で、雌雄異株(しゆういしゅ)の針葉樹。俗にナンヨウスギ(南洋杉)やアロウカリア(アローカリア、アラウカリア、英語での発音はアローケァリア)と総称される、ナンヨウスギ属に分類される植物の一つ。ナンヨウスギの仲間は、和名にスギマツ(松)の名が付されることが多いので紛らわしいのだが、スギでもマツでもなくあくまでも独立したナンヨウスギに分類される。キャプテン・クックとして知られる英国の探検家ジェームズ・クック(James Cook)が1774年にニューカレドニアを”発見”した際に一緒に見つかった。クックアロウカリアという名は、ナンヨウスギ属に分類される植物で、キャプテン・クックが見つけたもの、の意。一般にはキャプテン・クックが見つけたマツを意味する英名からクック・パイン(Cook pine)と呼ばれることが多いか。ニューカレドニアマツ(にゅーかれどにあ松)などとも。幹が一本直立し、樹形は細い円錐形になる。近似種シマナンヨウスギ(島南洋杉)に酷似しており、違いがよくわからない。

本来の自生地からしたら寒冷過ぎる日本の国内で見かける機会はほぼないと聞いているが、神奈川県藤沢市の江の島サムエル・コッキング苑に英名の一つであるクックアロウカリアの名前で植えられてあり、これが藤沢市指定天然記念物になっている。『藤沢市文化財調査報告書 第十集』(1975)によれば日本国内に二株しかないもののうちの一株。『藤沢の文化財 ─樹木を訪ねて─』(2002)によれば日本にある唯一の木。温室内ではなく露地にあり。

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/12/29

江の島サムエル・コッキング苑


そもそもは”霊場”江の島に建てられた与願寺(よがんじ)なる寺の境内地だった。

江の島サムエル・コッキング苑 藤沢市・江の島 2024/07/20

江の島サムエル・コッキング苑 藤沢市・江の島 2024/07/20

明治時代(1868-)初期の神仏分離に伴う廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で廃寺(はいじ)となり、江島神社(えのしま-)が分離独立、寺境内(野菜を作る畑だったらしい)は英国の貿易商サムエル・コッキング(Samuel Cocking、藤沢市の古い資料ではサミエル・コッキングとの表記も)に買い取られ、明治15年(1882)頃に大温室が備わった熱帯植物園が開設された。江の島サムエル・コッキング苑にヤシの木などの熱帯植物が多く植えられているのはコッキングの趣味趣向による。オオオニバス(大鬼蓮)なども栽培されていたという。

江の島サムエル・コッキング苑 藤沢市・江の島 2024/07/20

江の島サムエル・コッキング苑 藤沢市・江の島 2024/07/20

戦後(1945-)は藤沢市の所有となり、「江ノ島熱帯植物園」を開設。のち「江の島植物園」に改称。平成15年(2003)江の島展望灯台の建て替え等を行い「江の島サムエル・コッキング苑」として新装開園。令和4年(2022)リニュ-アルオープン。令和7年(2025)1月現在、苑内は無料開放されている。※ライトアップ等のイベント開催期間の17時以降は入苑有料、灯台(江の島シーキャンドル)などの施設は有料。

江の島サムエル・コッキング苑 藤沢市・江の島 2024/07/20

江の島サムエル・コッキング苑 藤沢市・江の島 2024/07/20

クックアロウカリアは幼少期をオーストラリアで過ごしたコッキング自身が植えたものである。『藤沢市文化財調査報告書 第52集』にはコッキングによって’1888年(明治15)’に植えられたとあるのだが、1888年は明治21年で、明治15年は1882年である。明治30年(1897)頃は樹高3mくらいしかなかったらしい。江の島の近代史を語る上で欠かせない同苑の当初からある数少ない遺物として重要。珍木。たいへん大きな木であり、間近で観察できないこともあって、尚更シマナンヨウスギとの違いがさっぱりわからない。

江の島サムエル・コッキング苑のナンヨウスギ植栽地点


江の島サムエル・コッキング苑のナンヨウスギ植栽地点


①=クックアロウカリア ※樹名板なし
②=シマナンヨウスギ ※樹名板なし
③=シマナンヨウスギの変種 ※「シマナンヨウスギ」の樹名板あり

④=シマナンヨウスギ ※樹名板あり
⑤・⑥=昭和50年(1975)代に挿し木されたとかいうシマナンヨウスギの若木

市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

#市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」 江の島サムエル・コッキング苑 2024/07/20

藤沢市による昭和46年(1971)7月5日の文化財(天然記念物)指定当初は「シマナンヨウスギ群3種4株」として近似種シマナンヨウスギと併せて一件に一括指定されており、その内訳は、クックアロウカリア1本、シマナンヨウスギ2本、シマナンヨウスギの亜種1本、であった。令和7年(2025)1月現在は「シマナンヨウスギ」と「クックアロウカリア」の二件に分離されている。いつどのような理由で変更されたのか、その経緯は担当部署である藤沢市生涯学習部郷土歴史課も把握しておらずよくわからない。

市指定天然記念物「クックアロウカリア」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29

#市指定天然記念物「クックアロウカリア」の葉 江の島サムエル・コッキング苑 2023/12/29


茨城県つくば市・#つくば植物園(熱帯資源植物温室)

#江の島サムエル・コッキング苑(UMIYAMA DO(海山堂、旧そば道場 松本館)西方に縦(南北)に並ぶ3本の高木のうち最も北側の1本のみ、雌株、樹名板なし、文化財説明板(平成28年(2016)改訂再建)が南隣のシマナンヨウスギとの間に建てられておりどの木を指しているのか伝わっていない、苑内設置の地図に「Cook arrow kalia」という怪表記がある、市指定天然記念物「クックアロウカリア」、市指定天然記念物「シマナンヨウスギ」・市指定天然記念物「タイミンチク群」も、市指定天然記念物「ツカミヒイラギ」は令和4年(2022)枯死し滅失・令和5年(2023)3月17日指定解除)

参考資料

『藤沢市文化財調査報告書 第52集』 藤沢市生涯学習部郷土歴史課編集 藤沢市教育委員会発行(2017)

『藤沢の文化財 ─樹木を訪ねて─』 藤沢市教育委員会編集・発行(2002)

『藤沢市文化財調査報告書 第十集』 藤沢市教育委員会編集・発行(1975)

『藤沢市文化財調査報告書 第八集』 藤沢市教育委員会編集・発行(1972)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

シマナンヨウスギ

タイミンチク

ブラジルマツ

フォローする