羅背板草 バラ目/イラクサ科/カラムシ属 花期/7月中旬~8月
学名/Boehmeria splitgerbera Koidz.
自生種
ラセイタソウ 江の島・西浦 2016/09/12
海辺の岩場などに生える多年草で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)の雌雄異花。日本固有種。シソ(紫蘇)のようでシソでないイラクサ科の仲間。ラセイタはざらざらした羅紗(らしゃ、毛織物)のこと。海からの暴風を受けるため背丈は低く抑え、地を這うよう繁る。
ラセイタソウ(写真中央やや下) 江の島・西浦 2016/09/12
ハチジョウススキ(八丈芒)やノブドウ(野葡萄)などとも競合するヘビーな場所に好んで生える”ど根性”系植物。岩場の割れ目や、人家周辺ではコンクリートの割れ目などにも生えている。
海に面した崖の割れ目から生えるラセイタソウ 江の島・西浦 2016/09/12
ラセイタソウ 横須賀市・観音崎海水浴場 2022/06/13
葉は対生。葉表の縮れも鋸歯も非常に細かいのが最大の特徴。凹凸を増やすことで葉の強度を補っているか。しんなりした柔らかさはなく、古い葉は造花のようにばりばりに硬い。
鋸歯は細かくて多く片側30個以上というが、肉眼では細かすぎてとてもじゃないが数えられたものではない。逆にいえば、鋸歯が細かすぎて数えられないものがラセイタソウ、ということになる。
ラセイタソウの葉 江の島・西浦 2016/09/12
葉裏はマスクメロンのような模様で、細かい毛がたくさん生えている。
ラセイタソウの葉裏 江の島・西浦 2016/09/12
ヤブマオ(藪苧麻)との交雑種らしきものにハマヤブマオ(浜藪苧麻)がある。
ラセイタソウの花
株上部に見える穂は雌花。雄花は株の下の方の葉腋(ようえき)から伸びる。いずれも葉にやや隠れるように咲く。
ラセイタソウの雄花 横須賀市・観音崎海水浴場 2022/06/13
ラセイタソウの雄花 横須賀市・観音崎海水浴場 2022/06/13
雌花の花穂(かすい)は短めで太く、ずんぐりむっくりした印象。
ラセイタソウの雌花 横須賀市・観音崎海水浴場 2022/06/13
ラセイタソウの雌花 藤沢市・江の島・西浦 2017/08/24
観音崎海水浴場(干潮時)、観音崎公園、鎌倉市七里ガ浜・日坂(国道134号線「鎌倉高校前」交差点北、ハマヤブマオも混生)、小動岬、江の島(西浦など)
黒崎の鼻(北の湾側へ下りたところ)
参考資料
『日本の固有植物』 加藤雅啓・海老原淳編 東海大学出版会発行(2011)
ハマヤブマオ
浜藪苧麻 バラ目/イラクサ科/カラムシ属 花期/8月中旬~9月上旬
自生種
ハマヤブマオの雌花 鎌倉高校前・日坂沿道 2017/08/24
ラセイタソウ(羅背板草)とヤブマオか何かの交雑種と思しきもの。ラセイタソウと違って分布が沿岸地域に限らず、内陸部にもふつうに存在している。岩場や法面(のりめん)の割れ目などにも生えるのは”ど根性”系ラセイタソウの性質をちょっとだけ受け継いでいるのだろう。とはいえラセイタソウほどのマゾっ気はないようで、海に直面した岩場とか過酷すぎる場所では見かけない。
ハマヤブマオ 三浦市・白浜毘沙門天 2017/08/24
ハマヤブマオ 鎌倉高校前・日坂沿道 2016/09/28
葉表の見た目はほぼラセイタソウそのもの。ただし鋸歯は明確で、肉眼でも容易に数えることができる程度の大きさ。当然ながらラセイタソウより鋸歯の数は少なめ。葉は硬めだが、ラセイタソウ(の古葉)のようにぱりっぱりになるところまではいかない。
葉片側の鋸歯の数が、20~30個程度ならハマヤブマオ、30個以上(実際は細かすぎて肉眼では数えられたものでないもの)ならラセイタソウ、としておく。
ハマヤブマオの葉 鎌倉高校前・日坂沿道 2017/08/24
葉裏はラセイタソウと同じくマスクメロン状。
ハマヤブマオの葉裏 鎌倉高校前・日坂沿道 2017/08/24
ハマヤブマオの花
株上部に長く突き出る穂は雌花。雄花はない。
ハマヤブマオの雌花 鎌倉高校前・日坂沿道 2017/08/24
ハマヤブマオの雌花 鎌倉高校前・日坂沿道 2017/08/24
ハマヤブマオの葉腋に短く付いた雌花 三浦市・白浜毘沙門天 2017/08/24
横須賀市・燈明堂跡、三浦市南下浦町毘沙門(みなみしたうらまち-)・白浜毘沙門天(8月中旬)、円覚寺、稲村ガ崎、鎌倉市七里ガ浜・日坂(国道134号線「鎌倉高校前」交差点北、8月下旬、ラセイタソウも混生)
鎌倉中央公園(山崎口外水路)、藤沢市・翠ヶ丘公園
湯河原町吉浜
参考資料
『神奈川県立博物館研究報告(自然科学) 19号』「神奈川県産ヤブマオ属の検討」 城川四郎著 神奈川県立生命の星・地球博物館(1990)