弘法芝 イネ目/カヤツリグサ科/スゲ属 花期/3月中旬~4月中旬 結実期/6月~7月
学名/Carex pumila Thunb.
自生種保護
花は咲き終わって、実が膨らんできたコウボウシバ 鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区 2017/05/08
海浜に生える常緑の多年草で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)の雌雄異花。地下茎で増え、群生する。生えているのが葉だけだと、他種との見分けが難しい。コウボウムギ(弘法麦)より葉(幅2~4mm)は細め。草丈は成長するとひょろっと30cm近くになるものも。名は、コウボウムギよりやや華奢に見えるため付けられたと思われる。神奈川県内では主に、西湘から湘南海岸を経て三浦半島の砂浜に自生あり。
開花中のコウボウシバ 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02
実が膨らんできたコウボウシバの群落 茅ヶ崎市南湖 2019/05/10
一般の人の目にはつまらない植物としか映らないだろうが、コウボウシバやコウボウムギが群落となって茂っていると大型台風などで暴風が吹いても砂が飛散しにくくなるため、湘南海岸の維持管理に大いに役に立っている植物である。
実が膨らんできたコウボウシバ 茅ヶ崎市南湖 2019/05/10
コウボウフデ(弘法筆)は珍菌に挙げられる希有なキノコ。
コウボウシバの花
背高な茎の頂上に雄花序が一個ないし二個程度付き、それより下段で雌花序が二個程度咲く。一つの株から雄花序と雌花序の両方が出る。姿が紛らわしいコウボウムギは雌雄異株(しゆういしゅ)なので、一つの株から出てくるのは一個の雄花序または一個の雌花序である。
コウボウシバの雄花(2個)と雌花(3個) 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02
雄花序は、咲くと黄色っぽい葯が出る。すぐ茶色く変色するので、見かける雄花序はほぼほぼ茶色いものばかりとなる。雄花が先に咲き、雌花はまだ顔も出していない。
コウボウシバの雄花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/03/29
コウボウシバの雄花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/03/29
コウボウシバの雄花、花粉を放出し終えると垂れて茶色くなる 茅ヶ崎市東海岸南 2019/03/29
コウボウシバの雄花の残骸 鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区 2017/05/08
雌花序は株元の地面すれすれのところで咲く。白い花柱を出す。
コウボウシバの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02
コウボウシバの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02
なお成長するとややひょろっと背高になってシオクグ(塩莎草)っぽい姿に変化するものがある。同じ場所で隣り合う一対(二個)の果序があったらコウボウシバ、果序と果序が明らかに離れた場所に付いていたらシオクグである。果胞(一個の実に見える粒)の嘴(くちばし、実の先端にある尖った雌蕊の出口)の形状も異なる。シオクグは神奈川県の準絶滅危惧種で、三浦半島南端ら辺の塩湿地に好んで生えている。
シオクグっぽい姿になったコウボウシバ 茅ヶ崎市汐見台 2018/05/01
コウボウシバの実
実が膨らんだコウボウシバ、雄花は花殻が残る 鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区 2017/05/08
実が膨らんだコウボウシバ 茅ヶ崎市南湖 2019/05/10
コウボウシバの膨らんできた実 鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区 2017/05/08
実が膨らんだコウボウシバ 藤沢市辻堂西海岸 2019/06/01
鎌倉海浜公園稲村ガ崎地区、湘南海岸
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)