コウボウムギ

弘法麦 イネ目/カヤツリグサ科/スゲ属 花期/3月中旬~4月中旬 結実期/6月~7月
学名/Carex kobomugi Ohwi

自生種保護

コウボウムギの雄花のやや咲き終わり 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雄花のやや咲き終わり 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

海浜に生える常緑の多年草で、ふつう雌雄異株(しゆういしゅ)。地下茎で増え、群生する。生えているのが葉だけだと、他種との見分けが難しい。特に同属のコウボウシバ(弘法芝)と紛らわしいが、コウボウムギの方が葉の幅(4~6mm)は広く、ごつい印象。草丈は20cm以下で、ちょっとずんぐりした体型になる。名前の弘法は、繊維から筆が作られていたからだろう、三筆にも挙げられる能書家の空海(真言宗開祖、弘法大師)から。麦は実の形状から。但しふつう食用にはしない。別名フデクサ(筆草)。

雄花が開花中のコウボウムギの群落 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

雄花が開花中のコウボウムギの群落 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

雄花が開花中のコウボウムギ 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

雄花が開花中のコウボウムギ 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

雄花が開花中のコウボウムギ 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

雄花が開花中のコウボウムギ 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

まばらに群生するコウボウムギ、後方に見えるのは烏帽子岩 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

まばらに群生するコウボウムギ、後方に見えるのは烏帽子岩 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの群落、背景は相模湾に浮かぶ烏帽子岩 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの群落、背景は相模湾に浮かぶ烏帽子岩 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

雄花が開花中のコウボウムギ 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

雄花が開花中のコウボウムギ 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

雌花が開花中のコウボウムギ 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

雌花が開花中のコウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

実が出来たコウボウムギ、花と丸葉はハマヒルガオ 茅ヶ崎市汐見台 2018/05/01

実が出来たコウボウムギ、花と丸葉はハマヒルガオ 茅ヶ崎市汐見台 2018/05/01

実が熟したコウボウムギの群落 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

実が熟したコウボウムギの群落 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

現在、相模湾に面した湘南海岸を含む砂浜は消滅の危機に瀕している。主な原因は、ダム建設によって相模川が運び入れる土砂が減少したこと、地球温暖化に伴い海面が上昇し、また台風が大型化したことで砂浜を強く侵食するようになったこと、が挙げられている。相模川河口東岸の茅ヶ崎市・柳島海岸では既に砂浜がなくなってしまい、波消しブロック(いわゆるテトラポッド=不動テトラ社の商品名)が護岸に味気なく山積みされている有様である。二宮町では平成19年(2007)の台風で砂浜が浸食され、以来海水浴場は閉鎖となったまま、崩落した西湘バイパスを保護するための波消しブロック置場と化している。いま海辺に広がっている湘南海岸の砂浜は、多くの地点では、大型ダンプが砂を運び入れ、ショベルカーやホイールローダが偏った場所に積み上がった砂山を移動運搬し、ブルドーザが砂をならす、といった人為的な養浜(ようひん)工事を行って辛うじて維持されているものである。
そのような危機的な砂浜の保全に役立つ植物が、コウボウムギである。(波がえぐってゆくような浸食はさすがに防げないかもしれないが)風による砂の飛散は防いでくれる能力がある。暴風が吹き荒れると砂が大量飛散して砂浜が減少、吹き飛んだ砂はサイクリングロードに山積みになっている(砂防林まで入り込んだり、もっと飛んで国道134号線に積もったり、更には住宅地の中にまで吹き飛んでも行く)、なんていう事態が度々発生しているのだが、コウボウムギが地下茎を張り巡らせて群落を作っているような地点ではそのようなことが起こりにくくなる。砂浜をネットで覆い隠したくらいの、目に見えた効果が現われる。コウボウムギなんて一般の人の目にはなんだかよくわからないつまらない草にしか見えないだろうが、じつは大いに人々の役に立っている植物なのである。夏場はバーベキュー客がコウボウムギの群落の上にテントを設営して踏みつけたりしているが、大切に、保全に努めていただきたい。

コウボウムギの葉 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの葉 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの葉 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの葉 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの葉 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの葉 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの花

茎が一本立ち上がって雄花序を付ける、あるいは雌花序を付ける、のどちらか。地下茎で繋がっているため、雄花序が咲いている一帯は雄花序ばっかり、雌花序が咲いているところは雌花序ばっかり、となる。どちらもごつい姿で、鬼が持つ金棒のような形状。紛らわしい近似種のコウボウシバは、雄花序と雌花序の両方を付ける(雄花序が咲いている時点では雌花序はまだ出現していないが)という違いあり。

雄株の雄花の方が、金棒はやや細身。黄色っぽい葯を出す。花粉を放出し終えると茶色く変色する。

コウボウムギの開花前の雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの開花前の雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの開花前の雄花の苞 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの開花前の雄花の苞 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/12

コウボウムギの開花前の雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの開花前の雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの開花前の雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの開花前の雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花の咲き始め 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花の咲き始め 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花の咲き始め 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雄花の咲き始め 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雄花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雄花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雄花のやや咲き終わり 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雄花のやや咲き終わり 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

雌株の雌花の方が、金棒は太めで、雄花より苞の先端が長く伸びて尖るため荒々しく見える。雌蕊は白色。結構地面ぎりぎりの位置で咲く(咲いているうちに茎が長く伸びてくる)。

コウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花の咲き終わり 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花の咲き終わり 茅ヶ崎市東海岸南 2019/04/02

コウボウムギの雌花の咲き終わり 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの雌花の咲き終わり 藤沢市辻堂西海岸 2019/03/28

コウボウムギの実

苞の先端が針のように長く突き出ているものが実。そうでない雄花の残骸と見分けがちょっと難しい。

コウボウムギの未熟な実 茅ヶ崎市汐見台 2018/05/01

コウボウムギの未熟な実 茅ヶ崎市汐見台 2018/05/01

コウボウムギの実 茅ヶ崎市浜須賀 2018/06/04

コウボウムギの実 茅ヶ崎市浜須賀 2018/06/04

コウボウムギの実 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

コウボウムギの実 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

コウボウムギの実 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

コウボウムギの実 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

コウボウムギの実 平塚市虹ケ浜 2019/06/18

コウボウムギの実 平塚市虹ケ浜 2019/06/18


千代ヶ崎海岸、黒崎の鼻、茅ヶ崎海岸(大量に植栽している人がいる)、平塚市・虹ケ浜

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

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コウボウシバ