ヒメコウゾ

姫楮 バラ目/クワ科/コウゾ属 花期/4月下旬 結実期/6月中旬~7月初旬
学名/Carex phacota Spreng. var. gracilispica Kük.

自生種

ヤマグワ(山桑)の仲間の落葉低木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。山野に自生するが、湘南・鎌倉・三浦半島のものはかつては農村だった地域に多く見られ、また有用樹木(カイコの餌)であったヤマグワと併せて生えていることがあり、もしかしたら人為的に植えられていたものの名残かもしれない。単にコウゾとも。元々は本種がコウゾで、雑種のコウゾと見分けるためにより小型な本種を後付けでヒメコウゾと名づけたかもしれない。

雑種コウゾは檀紙(だんし)など和紙の原料にするため人工的に栽培されてきたもの。ヒメコウゾとカジノキ(梶の木)の雑種とされる。低木過ぎるヒメコウゾをやや大型になる近縁のカジノキと掛け合わせることでより大きく成長するようにし、紙を大量生産しようと試みたか。雑種であるにも関わらずこちらの方が価値が高くなり、あたかも母種であるかのごとく単にコウゾと呼ばれるようになったものと思われる。カジノキは雌雄異株(しゆういしゅ)。よってコウゾはカジノキの性質である雌雄異株を継承していたり、ヒメコウゾのように雌雄同株であったりするという。そうなると、雌雄同株のコウゾとヒメコウゾの峻別は難しく、よりカジノキっぽいのかヒメコウゾっぽいのか全体的に特徴を捉えて分類するよりないが、神経質に峻別して名前を付けようとする作業はあまり重要ではないかもしれない。※本項では明らかに異質なものを除いてヒメコウゾとしてまとめて掲載する。

神道で用いられる木綿(ゆう、木綿(もめん)とは別の物)はコウゾの樹皮から採られた繊維である。

葉は特徴ない形状。葉柄(ようへい)は短い。

ヒメコウゾの葉 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの葉 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの花

ヒメコウゾの実

梅雨の時期に、まるでモミジイチゴ(紅葉苺)のようなオレンジ色の実を付ける。

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

下から見上げないと実がなっていることにさえ気づかない。

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

見た目はおいしそうだが、味はいまいち。ジューシーで甘みはあるのだが、なんとなく樹木をそのまま舐めているかのような、青臭い草むらの風味。ひげのような花柱(かちゅう)の残骸も口の中でざらつくことがある。食糧難の戦時中であればありがたく頂戴するけれども。

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

ヒメコウゾの実 茅ケ崎里山公園 2017/06/12

雑種コウゾは実付きが悪いらしい。


横浜市栄区・栄プール~天園(1本)

鎌倉中央公園(小段谷戸にヤマグワと、平成29年(2017)伐採確認)、広町緑地、鎌倉市今泉台・滝ノ入隧道(北東側の車道沿い、薦脚立、法面保護のためか平成29年(2017)伐採確認)、茅ヶ崎市・清水谷(池西畔、花=5月上旬)、茅ケ崎里山公園(きつね坂西端)

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