鋸草 キク目/キク科/ノコギリソウ属 花期/7月~11月
学名/Achillea alpina L. subsp. alpina var. longiligulata H.Hara
自生種稀少保護
ノコギリソウ=神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IB類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IB類」
ヤマノコギリソウ=神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧IB類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IA類」
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
日当たりの良い林縁や草地に生える多年草(宿根草)。野生のキク科の植物なので、広い意味でのノギク(野菊)の一種である。日本在来種。耐暑性が高く、水をよく飲み、旺盛によく生育し、地下茎(ちかけい)でよく増える、といった性質は代表的なノギクであるカントウヨメナ(関東嫁菜)に似ている。神奈川県内では海岸風衝草地に自生あり。従って、世に知られているノコギリソウとは少々様子が異なって、海岸型の性質が感じ取れる。つまり、茎はぴんと直立する力が弱く、周囲の草木に埋もれつつ寄りかかりつつ、茎頂(けいちょう)で咲く花だけ茂みから顔を出す。従って単独で栽培すると、花が咲き始めた段階で自重で傾き倒れ、雨で潰され、イソギク(磯菊)のように姿は大いにとっ散らかった。対して箱根湿生花園で栽培されている由緒不明のノコギリソウは、茎はか細いながらしっかりぴんと直立しているので、山地型の一般的に世に知られているノコギリソウなのかもしれない。草丈(茎の長さ)は生育環境によってまちまちながら、およそ50cm程度か。
#ノコギリソウ(1株)の初夏の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/05/09
#ノコギリソウの初夏の葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/05/09
#ノコギリソウの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
ノコギリソウの咲き始め 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/10
ノコギリソウの咲き始め 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/10
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/20
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/20
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/29
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/29
葉は互生。羽状に中裂。鋸刃のような葉の形状が名前の由来である。
#ノコギリソウの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウの茎 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/15
ノコギリソウは、『神奈川県レッドデータブック2022』によれば、県内では三浦半島の海に面したごく限られた二地点でのみ現存が確認されているだけのかなりの希少種。であれば絶滅危惧IA類相当であろうが、指定は絶滅危惧IB類にとどまっている。当方はおそらくそのうちの一地点を承知しているが、海岸草地の際(きわ)に一群(一株である可能性がある)が確認できているのみ。例年、私有地に近いその一帯は初夏に人為的な無選別な剪定を受けており、本種もその被害は若干あるも、周囲の草木も刈り払われるため本種が深く暗い藪の中に没してしまうことが回避できている。人の手が入ることが本種にとっては好材料となっているようである。とはいえ、何かの拍子にたちまち消滅してしまう不安定さは感じている状況。『神奈川県レッドデータブック2022』は’沿海地の草地はアズマネザサ、ヨモギ、セイタカアワダチソウなどが繁茂し、ノコギリソウが生育できる環境は激減した’と述べている。かつては大磯丘陵などにも自生はあったようである。なお公園や民家で栽培されているノコギリソウらしきものはすべて、本種によく似た外来種のセイヨウノコギリソウ(西洋鋸草)ないしセイヨウノコギリソウモドキ(西洋鋸草擬)あるいはそれらから作出された園芸植物のアキレアと考えて差し支えない。葉の形状の違いで見分けられる。
海岸草地に生えたノコギリソウ 三浦市 2024/06/07
ノコギリソウの葉 三浦市 2024/06/07
ノコギリソウの葉 三浦市 2024/06/07 ※画像クリックで拡大(2220×1476ピクセル)
海岸草地に生えたノコギリソウ 三浦市 2023/06/21
ノコギリソウの葉 三浦市 2023/06/21
ヤマノコギリソウ(山鋸草)は山地型の変種とされる。全体的に、葉が、花序が、或いはいずれかが痩せて貧相な姿になるという。舌状花(ぜつじょうか)が小さいないしほぼない傾向が現れやすい。ただノコギソウも生育環境によっては絶望的に貧弱な個体になるため、分けて考える必要が本当にあるのかどうかはよくわからない。生え出て来る茎の本数が海岸型のものに比べて明らかに少ないようには感じられる。とりあえずは広義のノコギリソウとしてひとまとまりに考えておくに止(とど)める。ノコギリソウとされるものも全国規模で見れば地域個体差がだいぶあるように感じられるがどうだろうか。神奈川県内では西丹沢と箱根に自生あるもかなり少ない。
#ノコギリソウ 箱根湿生花園 2024/07/02
#ノコギリソウ 箱根湿生花園 2024/07/23
茎が直立した#ノコギリソウ 箱根湿生花園 2024/07/29
#ノコギリソウ 箱根湿生花園 2024/07/29
ノコギリソウの花
セイヨウノコギリソウに準じた形状。花色は基本的には白。環境に影響されるのかピンク色を帯びることがある。
#ノコギリソウの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/20
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/17
ピンク色を帯びた#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/20
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/20
#ノコギリソウ 箱根湿生花園 2024/07/29
#ノコギリソウ 箱根湿生花園 2023/08/03
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/29
#ノコギリソウ 茅ヶ崎市浜之郷 2023/09/15
#ノコギリソウの総苞 茅ヶ崎市浜之郷 2024/07/20
三浦市(海岸型)
#箱根湿生花園(⑤高山のお花畑区に(山地型?)直立型、同所に舌状花を欠くヤマノコギリソウが出ることもあるとか)
厚木市・荻野運動公園野草園(なし、「ノコギリソウ」のラベルあるが植えられているのはセイヨウノコギリソウ)
参考資料
『神奈川県レッドデータブック2022 植物編』 神奈川県環境農政局緑政部自然環境保全課・神奈川県立生命の星・地球博物館編集 神奈川県発行(2022)
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)