芥子 キンポウゲ目/ケシ科/ケシ属 花期/4月中旬~5月 結実期/5月中旬~6月
学名/Papaver somniferum L.
有毒危険薬用改良種違法稀少
#ケシ’一貫種’ 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
麻薬の一種であるアヘン(阿片)などを採取するために栽培される一年草。原産地は西アジアだとか欧州の方だとかいわれるが、原種が発見されていないため定かでない。学名からソムニフェルム種とも。日本でケシといったら主に一貫種(いっかんしゅ)と呼ばれる大型品種を指す。畑1反(たん、約990㎡=約10a(アール))で1貫(約4kg)もの生アヘンを採取できるという生産性の高いケシで、白花を咲かせる。他にも薄紫花のトルコ種など様々な品種あり。日本国内では「あへん法」によって国の許可なき栽培・所持・譲渡・輸出入および吸食等が禁止されている。違法な植物として”禁断のケシ”や”禁断の花”などと呼ばれる。花を観賞するために(国の許可を必要とすることなく合法的に)園芸栽培されるポピーはケシ科に分類される植物(の一部)を総称する呼び名であるため、広義にはケシもポピーの一種といえる。ふつうケシはケシと呼び分けられるが。主な生産国は、アフガニスタン(2022年 タリバンがケシ栽培を禁止した)、ミャンマー。
ケシ’一貫種’ 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
一貫種の香りは強め。花畑に十分もいると気分が悪くなるくらいに悪臭。ミツバチ(蜜蜂)はよく集まっていたが、気持ち良さそうにひっくり返っているのは見つからなかった。
ケシ’一貫種’ 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
花が咲き終わってしばらくたった果実(ケシ坊主)は鶏卵ほどの大きさに膨らむ。その実の表面をナイフなどで傷つけておくと汁がにじみ出てくる。それを乾燥させたものが生アヘン。集めて精製すると麻薬のアヘンになる。それを更に加工したものがモルヒネやヘロイン。違法薬物は他に、アサ(麻)から作られる大麻(たいま、マリファナ)、コカから作られるコカイン、などがある。火であぶってパイプを使って煙を吸い込むのがアヘン。紙巻タバコのようにして煙を吸うのが大麻(マリファナ)。粉末を鼻で吸うのがコカイン。モルヒネは緩和ケアなどで患者の痛みを取り除くために投与される薬でもある。
ケシ’一貫種’のケシ坊主 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
ケシの種子(ケシの実、とも呼ばれる)は煎ると香ばしいため食用にされる。あんぱんの表面にふりかけられている白い粒々がそれ。七味唐辛子にも含まれている。もちろん流通しているケシの種子は発芽しないように熱処理されたものだけで、合法なものである。
東京都小平市・#東京都薬用植物園(二重の柵で囲われたケシ・アサ試験区で国の許可を得て合法的に栽培=通常非公開、花期(4月下旬~5月中旬、または5月)に外柵開放、期間中数日間の朝30分間のみ内柵も開放=先着70名限定、三脚および脚立使用禁止、花は4月末~5月上旬が見頃)
アツミゲシ
渥美芥子 キンポウゲ目/ケシ科/ケシ属 花期/4月中旬~5月中旬 結実期/5月中旬~6月
学名/Papaver somniferum subsp. setigerum (DC.) Arcang.
有毒危険薬用改良種違法稀少
生態系被害防止外来種リスト「総合対策外来種」
一年草。学名(現在はシノニム(あまり支持されていない学名)/Papaver setigerum DC.)からセティゲルム種とも。現在は別種ではなく、ソムニフェルム種の亜種に分類されている。ソムニフェルム種に比べれば小型なもので、花色はふつうはピンクがかった紫色。名は、愛知県の渥美半島に大量に帰化して生えているものが発見されて大騒ぎになったことに因む。今日もなお日本各地で”発見”が相次いでいるのは本種が多い。河川敷に帰化していたり、民家の庭に突然勝手に生えてきたり。花が美しいのでポピーの一種として誤って栽培されることも。茎はほぼ無毛で、葉が茎を抱く。
#アツミゲシ 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
#アツミゲシ 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
神奈川県内では過去に相模原市・茅ヶ崎市・平塚市に帰化しているものが発見された例があるらしい。生え出てくるとしたら、輸入ものの肥料や飼料を使っている農地や牧場およびその水路・河川の下流域か。
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
ハカマオニゲシ
袴鬼芥子 キンポウゲ目/ケシ科/ケシ属 花期/4月下旬~5月 結実期/5月中旬~6月
学名/Papaver bracteatum Lindl.
生態系被害防止外来種リスト「総合対策外来種」
有毒危険薬用改良種違法稀少
コーカサス(カフカス)地方が原産といわれる多年草。学名からブラクテアツム種とも。草丈は1m程度。袴に喩(たと)えられた苞(ほう)と呼ばれる葉を花の直下に五枚程度伴うのが特徴。花は赤色大輪。花径は10cm程度。見た目が違法でないオニゲシ(鬼芥子)とそっくりなため、本種が誤って栽培されていることがある。例えば、平成23年(2011)福島県南相馬市の園芸業者大森プランツ株式会社が種子を仕入れて苗を出荷、ホームセンターのコメリが「オリエンタルポピー ビューティーオブリバーメア」と称して1都18県(東京、茨城、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、静岡、岐阜、三重、滋賀、奈良、和歌山、兵庫、岡山、愛媛、香川、福岡、長崎)で2,349個のポット苗を販売したが、その中に麻薬成分を含んでいて違法なハカマオニゲシが混入していたことがのちに判明した(同年5月26日 厚生労働省報道発表)。
#ハカマオニゲシ 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06
八重咲品種はボタンゲシ(牡丹芥子)とも。花が美しいため、極めて希ながら違法栽培されることがあるらしい。
#ハカマオニゲシ(ボタンゲシ) 東京都小平市・東京都薬用植物園 2016/05/06