淡水紅斑 ベニマダラ目/ベニマダラ科/ベニマダラ属 見頃/通年
学名/Hildenbrandia rivularis (Liebmann) J.Agardh
環境省レッドリスト「準絶滅危惧(NT)」
神奈川県レッドリスト2020「準絶滅危惧(NT)」
タンスイベニマダラ 鎌倉市・建長寺 2024/01/09
日本に広く分布する、淡水に生息する藻類(そうるい、現在は植物ではないとされている)。水底にある岩、石、人工的なコンクリートなどに付着して生える藻(も)の一種。丘陵地の谷戸(やと)からちょろちょろと流れ出て来る湧水など、河川の源流域で見かけることがある。炎天下は嫌うため、直射日光が強く当たらない明るい日陰ないし半日陰の場所を好む。水質は良好であること。従って止水ではなく特に緩やかな流水に多い。水は枯れることなく絶えず流れていること。水深30cm程度までの浅い水底であること。滝の湿った岩肌にも生える。粒が細かい砂地や泥地は嫌い。水は透明であれども生活排水が流入していると生えない。見た感じは、誰かが塗料(ペンキ)か錆び止めなんかを投棄した汚らしい謎の痕跡のように感じられる。或いは、不気味な血のり。乾燥して死ぬと紫芋色に変わる。花は咲かない。神奈川県内ではいまのところ知名度が低く多くの人から意識して探されていないせいか発見例はそう多くないと思われ、『神奈川県レッドデータブック2022』によれば県内41ヶ所で記録されているという。が、至る所から湧き水が染み出て水流を形成している三浦半島などの丘陵地では意外と希有というほどのものではなく、県の準絶滅危惧(NT)指定は少々大げさのように思われる。本頁掲載の葉山町木古庭(きこば)不動滝および鎌倉市(太刀洗川(たちあらいがわ)、建長寺、浄智寺、円覚寺(えんがくじ))のものなどはこれまで確認されていなかった新発見か。生息地は、渇水、宅地化、土木工事などで簡単に失われる可能性がある。
タンスイベニマダラと同居するイズミイシノカワかただの汚れ 鎌倉市・建長寺 2024/01/09
類似種にイズミイシノカワ(泉石の皮、学名/Heribaudiella fluviatilis (Aresch.) Sved.)なる藻あり。タンスイベニマダラと同じ場所に同じようにして同居して生えていることが多い。褐色。色が地味過ぎて、汚らしいありがちな藻か何か、石の汚れか何なのか、専門家でもない限り見分けられない。かなりの希少種という扱いで、環境省レッドリスト2020「絶滅危惧I類(CR+EN)」、神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧I類(CR+EN)」。ただの汚いもの扱いされて見過ごされてしまっているだけでそこまで希少種というわけではないのかも疑惑も。
追記)本頁掲載の”イズミイシノカワかただの汚れ”に関し、国立科学博物館北山太樹研究主幹から”写真をみるかぎり珪藻ではないか”との残念なご指摘を頂戴した。(2024/01/12)
タンスイベニマダラと同居するイズミイシノカワかただの汚れ 鎌倉市・建長寺 2024/01/09
タンスイベニマダラ 鎌倉市・建長寺 2024/01/09
タンスイベニマダラが生える側溝 鎌倉市・浄智寺 2024/01/09
タンスイベニマダラ 鎌倉市・浄智寺 2024/01/09
タンスイベニマダラが生える川 鎌倉市・円覚寺・白鷺池(びゃくろち)前 2024/01/07
タンスイベニマダラが生える川 鎌倉市・円覚寺・白鷺池前 2024/01/07
タンスイベニマダラが生える川 鎌倉市・円覚寺・白鷺池前 2024/01/07
タンスイベニマダラ 鎌倉市・円覚寺・白鷺池前 2024/01/07
鎌倉市十二所(じゅうにそ)から朝夷奈切通(あさいなきりどおし)に向かう途中にある梶原太刀洗水(かじわらたちあらいみず)なる湧水は、寿永2年(1183)上総介広常(かずさのすけ ひろつね)を討ち取った梶原景時が血にまみれた太刀を洗った場所と伝わる。刀を洗う、なんていうじつにつまらない行為が伝承として現代にまで残っているのは、もしかしたらタンスイベニマダラが繁茂していたせいで水底に大量の血がべったり付いているように見えて、通りがかった人をひどく驚かせていたせいかもしれない。
梶原太刀洗水の下流に生えたタンスイベニマダラ(白色矢印) 鎌倉市十二所・太刀洗川 2024/03/19
タンスイベニマダラは脆(もろ)くて表面が摩耗しやすい鎌倉石には意地でも生えないらしい。
梶原太刀洗水の下流に生えたタンスイベニマダラ 鎌倉市十二所・太刀洗川 2024/03/19
梶原太刀洗水の下流に生えたタンスイベニマダラ 鎌倉市十二所・太刀洗川 2024/03/19
タンスイベニマダラが生える滝 葉山町木古庭・不動滝 2024/01/06
タンスイベニマダラが生えているように感じられる滝の壁 葉山町木古庭・不動滝 2024/01/06
タンスイベニマダラ 葉山町木古庭・不動滝 2024/01/06
タンスイベニマダラ 葉山町木古庭・不動滝 2024/01/06
タンスイベニマダラ 葉山町木古庭・不動滝 2024/01/06
人工的な集水桝に生えたタンスイベニマダラ 葉山町木古庭・不動滝下流 2024/01/06
タンスイベニマダラが生える井之明神社 秦野市・曾屋神社 2023/09/19
タンスイベニマダラ 秦野市・曾屋神社 2023/09/19
タンスイベニマダラ 秦野市・曾屋神社 2023/09/19
タンスイベニマダラ 秦野市・曾屋神社 2023/09/19
タンスイベニマダラ 秦野市・曾屋神社 2023/09/19
タンスイベニマダラ 秦野市・曾屋神社 2023/09/19
川底に生えたタンスイベニマダラ 相模原市南区・相模原公園せせらぎの園地区・道保川 2023/10/16
横浜市泉区・天王森泉公園(ワサビ田~公園前排水路)
葉山町木古庭・不動滝(イズミイシノカワらしきものも)、逗子市桜山・森戸川源流(中沢に多い)、鎌倉市十二所・太刀洗川(梶原太刀洗水下流にさほど多くなし)、建長寺(奥院勝上巘地蔵尊道(おくのいんしょうじょうけんじぞうそんみち、巘は正しくは山偏ではなく山冠、勝上嶽とも)沿いの「方丈庭園西側~東司(とうす、トイレ)西側」を流れる排水路に多い、イズミイシノカワらしきものも多い)、浄智寺(「甘露ノ井~県道21号鎌倉街道」の車道沿い側溝にさほど多からず、イズミイシノカワらしきものもあるようなないような、県道21号鎌倉街道すぐ北側に少ない、※「明月院~JR横須賀線」の明月川にはない)、円覚寺(白鷺池と県道21号鎌倉街道の間の川(名称不明、上流は明月川・下流は小袋谷川(こぶくろや-))に)
相模原市南区・相模原公園せせらぎの園地区(道保川(どうほがわ)の水門下流に、水量少ないときに)、秦野市・曾屋神社(駐車場にある境内社井之明神社(いのみょうじんしゃ)水路に、タウンニュース「曾屋神社 タンスイベニマダラ発見」(2023/09/08))、小田原市上曽我・砂留田川(瑞雲寺脇)
参考資料
『神奈川県レッドデータブック2022 植物編』 神奈川県環境農政局緑政部自然環境保全課・神奈川県立生命の星・地球博物館編集 神奈川県発行(2022)