藪葎 アカネ目/アカネ科/ヤエムグラ属 花期/7月中旬~8月上旬
自生種稀少保護
環境省レッドリスト2018「絶滅危惧II類(VU)」
神奈川県レッドリスト2020「絶滅危惧II類」
神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧II類」
ヤエムグラが咲いている時期のヤブムグラ 藤沢市 2018/04/10
やや薄暗い林床に生える多年草。どこにでも雑草として生えているヤエムグラ(八重葎)の仲間であるが、ヤブムグラは関東地方の一部にのみ分布する稀少種。ハイキングコース沿いに生えていても気づかず通り過ぎているケースは多そうだ。
春の葉は、サツキ(皐月)の葉をちょっと幅広にしたような形状で、輪生する。
ヤエムグラが咲いている時期のヤブムグラ 藤沢市 2018/04/10
ヤブムグラの花期の葉 藤沢市 2017/07/29
ヤブムグラの花
極細な花柄(かへい)を異様に長く伸ばし、その先端に極小の花を咲かせる。
ヤブムグラ 藤沢市 2017/07/29
ヤブムグラ 藤沢市 2017/07/29
ヤブムグラ 藤沢市 2017/07/29
陸生ホタル研の小俣軍平です。ご無沙汰しました。2ヶ月も前に丁寧なお便りを頂きながら、大変失礼いたしました。御無礼をお許し下さい。
話題になっているヤブムグラですが、この種については、植物の生態ばかりでなく、日本の近代史・地質学の上でも興味深い問題がいろいろありますね。釈迦に説法でご存じのことと想いますが。この種の原記載標本を採ったフランス人のサバチエは、江戸末期に幕府が開設した横須賀製鉄所の診療所の医師でした。サバチエの事は、横浜の有隣堂から出版されている「横須賀製鉄所の人々」と言う書物に書かれていますが、現在の横須賀市立博物館には、この会社の「社史」が保存されていて調べることができます。
ヤブムグラの最初の採集地は、江戸末期に現在の文京区にあった、現在の東大医学部の前身のの職員用の官舍の庭先」だったようです。官舎の住人は、ドイツ人のニュウヲルツという方で医学校の教官だったようです。ヤブムグラの学名にサバチエと並んでニュウヲルツが記載されているのは、こうした経過があったようです。
ヤブムグラが、神奈川・東京・千葉・埼玉・茨城の地域にしか分布していなかった点については、現在平塚に流れている相模川の前身、古相模川の流路の変遷が大きく関わっているようです。
更に第三の問題として、横須賀製鉄所の診療所の医師が、なぜ日本の全国各地から新種の植物を数多く採集することができたのか。これについても興味深い話が残されているようです。
小俣軍平 拝