冬苺 バラ目/バラ科/キイチゴ属 花期/8月~10月 結実期/11月~2月
学名/Rubus buergeri Miq.
食用自生種

フユイチゴの熟した実 逗子市・神武寺・裏参道 2017/12/02
一時的に木漏れ日が当たる程度の暗い林床に生える蔓性の常緑の低木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。ひょろひょろの細い茎を伸ばす蔓植物ではあるも周囲の草木を登ることはなく、地面に横たわって匍匐(ほふく)する。茎は長さ1m程度しかないように見えるものがほとんどで(茎を引っ張ってまっすぐに伸ばすと意外と2m近くあったりもするが)、葉が大きい割には株自体はあまり大型化しない。名は、冬に赤い実がなるキイチゴ(木苺、イチゴのような実ができる木本の総称)の一種であることから。湘南・鎌倉・三浦半島では特に三浦丘陵の林内を通るハイキングコース沿いなどに多い普通種。他の草木が生え出ることができないスギ(杉)林も厭(いと)わないのは強み。

地面を覆ったフユイチゴの群落 愛川町・愛川町・八菅山いこいの森 2023/05/02

開花中のフユイチゴ 逗子市・神武寺・裏参道 2019/09/14

実が熟す前のフユイチゴ 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05

実が熟し始めたフユイチゴ 横浜市金沢区・金沢自然公園・しだの谷 2018/11/15

実が熟し始めたフユイチゴ 逗子市・神武寺・裏参道 2017/12/02

実が熟し始めたフユイチゴ 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05

実が熟し始めたフユイチゴ 小田原市・早川石丁場群付近 2018/01/06

春になっても熟した実が一部残っているフユイチゴ 鎌倉市・建長寺・回春院 2017/03/05
葉は互生。人の手のひらくらいの大きさあり。ブドウの仲間のエビヅル(蝦蔓)のように浅く三裂し、細かい鋸歯(きょし)あり。葉身(ようしん)は縦の長さと横幅は同じくらいで、葉先が鋭利には尖らず、ふっくら丸っこいと感じる形状をしているものが多い。が、近似種ミヤマフユイチゴ(深山冬苺)のように縦長で葉先が尖ると感じる形状をしているものもあり、葉の形だけで両者を見分けることはいうほど簡単ではなく、萼の毛で見分けた方が確実。エビヅルであれば地面を這わず、周囲の草木を登る。

フユイチゴの葉 逗子市・神武寺・裏参道 2019/05/23

フユイチゴの葉 逗子市・森戸川林道 2025/02/14

フユイチゴの葉 愛川町・八菅山いこいの森 2023/05/02

フユイチゴの葉 小田原市・早川石丁場群付近 2017/12/04

フユイチゴの葉 鎌倉市・建長寺・回春院 2017/03/05
| フユイチゴとミヤマフユイチゴの見分け方 | ||
| フユイチゴ | ミヤマフユイチゴ | |
| 葉の形 | 縦横ほぼ同長で丸っこい | 縦長 |
| 葉の先端 | あまり尖らない | よく尖る |
| 萼 | 長毛が多くけばけばしている | 無毛のように見える |
ミヤマフユイチゴが生える山地へ行くと両者の特徴を合わせ持つ雑種を疑うものあり。アイノコフユイチゴ(間の子冬苺)という。こうなるともうミヤマフユイチゴ型の葉をしたフユイチゴなのか、雑種アイノコフユイチゴなのか、判断に窮するものが出てくるだろうと思われる。
茎と葉柄は毛深い。毛に隠れて視認しづらいが、小さな棘(とげ、植物学ではふつう「刺」と表記される)がまばらにあるので要注意。やや痛い。

フユイチゴの毛深い茎と葉柄 逗子市・神武寺・裏参道 2017/12/02
フユイチゴの花
一重咲きの白花。地表で葉に隠れるようにして咲くので、咲いていても気づかないこと多い。一斉にぶわっと満開もしないので、見逃すこと多い。見頃は9月中旬か。

フユイチゴの花 逗子市・神武寺・裏参道 2019/09/14

フユイチゴの花 逗子市・神武寺・裏参道 2019/09/14

フユイチゴの花 逗子市・神武寺・裏参道 2019/09/14

フユイチゴの花のサイズ感 逗子市・神武寺・裏参道 2019/09/14
花は咲き終わると萼は閉じ、ぷりっぷりの赤い実が熟すまで閉じたままとなる。萼の中に閉じ込められた茶色く傷んだ花弁や蕊は、脱落しないまま残る。
フユイチゴの実
キイチゴならではのぷりぷりした赤色の液果(えきか)がなり、食べられる。が、小さい割に中の硬い種子が大きめなのであまり食べごたえはない。味は、ほんのり甘酸っぱい程度。蕊(しべ)の残骸が多いので、口の中でなんとなく不快。さほど美味からず。江戸時代は道行く人が喜んで口にしたに違いない。

フユイチゴの熟した実 逗子市・森戸川源流 2018/11/23

フユイチゴの熟した実 逗子市・神武寺・裏参道 2017/12/02

フユイチゴの熟した実 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05

フユイチゴの熟した実 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05

フユイチゴの熟した実 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05
萼の中で液果が熟して膨らんだものから順次萼が開いて赤い実が露出する、ように思われる。或いは一斉に熟しているつもりなのに不稔(ふねん)が多いせいでそう見えているだけなのか。いずれにせよ、時期が来たら赤い実が一斉にどんと出現する、株全体に赤い実がたわわになっている、なんていう光景にはまず出遭えまい。甘酸っぱい実はたちまち鳥獣に食われてしかるべきもののように思えるのだが、意外と長く売れ残っている。

フユイチゴの未熟な果序 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05
閉じた萼の中に潜んでいる小さくて硬い未熟な実は緑色をしているのかと思いきや、赤い。

フユイチゴの(萼片を人為的に取り除いた)未熟な実 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05

フユイチゴの熟し始めた実 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05

フユイチゴの熟し始めた実 小田原市・早川石丁場群付近 2025/12/05
萼の外側に開出した長めの毛が多く、けばけばしていること。無毛のように感じられたらミヤマフユイチゴである疑い。

フユイチゴの実の特徴 逗子市・神武寺・裏参道 2017/12/21
森戸川源流、神武寺(裏参道)
三浦アルプス(北尾根に点在も多くはない)、長柄桜山古墳群(第1号墳~長柄交差点分岐に少ない)、衣張山(北嶺に少ない)、建長寺回春院(西御門へ抜ける林床に少ない)
愛川町・八菅山いこいの森、南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊、明神ヶ岳への山道沿いにも多い)、小田原市・早川石丁場群付近
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
ミヤマフユイチゴ
エビヅル
クサイチゴ
おはようございます。
金沢自然公園シダの谷の下生えにフユイチゴが沢山あるのですが、秋シーズンいつ見ても蕾のままで花も実も見かけません。アメリカキンゴジカのように花が開いてから、いったん額が閉じるのでしょうか。ご存知でしたら教えてください。