西洋都草 マメ目/マメ科/ミヤコグサ属 花期/6月中旬~9月中旬?
学名/Lotus corniculatus L.
外来種稀少
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
ヨーロッパ原産の多年草。西洋から渡来した、ミヤコグサの仲間。学術的には在来種のミヤコグサとは、変種の関係だとか、亜種だとか、別種だとか、人によって言うことが違っている。『神奈川県植物誌2018』は亜種としているが、染色体の数が違う(ミヤコグサは二倍体、セイヨウミヤコグサは四倍体)ためここでは別種としておく。少なくとも、見た目に大差ない変種などではないだろう。おそらく米軍基地(関連の施設)を経由して発生していると思われ、帰化雑草として道端や草地に生え出ることがある。在来種ミヤコグサと同様に、茎は地面を這って放射状に広がり、花が咲く茎先がくいっと立ち上がる。試験的に栽培したものは在来種ミヤコグサをはるかに凌ぐどでかい巨大株に育ち、一株で(花時に)直径1.7mに達した。在来種ミヤコグサ同様に立ち上がる力はさほど強くなく、裸地では高さ20cm程度。周囲に他の草など邪魔のものあらばそれらにもたれかかってもっと高く立ち上がってはこよう。神奈川県内に帰化あるも希。湘南・鎌倉・三浦半島でも何地点かで目撃報告があり標本も採取されているようながらかなり希。近似の他種と誤認される事例がたいへん多いので、それらが本当にセイヨウミヤコグサであるのかどうかは精査を要する。河原の草地などに入り込んで繁茂してしまうようなことがあると希少な在来種の生息地を奪ってしまうことも想定し得るところながら、神奈川県内に関していえば現時点でそのような差し迫った脅威は何もない。侵略的外来種にはあらず、ひっそりと生え出るのみで、分布の急速な拡大もまったく感じられない。三浦半島の磯周辺など海辺でよく見かけるものはすべて在来種のミヤコグサである。
道端に生えた開花前のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2025/05/25
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ(白色矢印) 東京都八王子市下柚木 2025/06/21
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ(直径85cm、高さ15cm) 東京都八王子市下柚木 2025/06/21
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
道端に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 東京都八王子市下柚木 2024/06/22
空き地に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 相模原市中央区・相模総合補給廠一部返還地 2025/06/21
空き地に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 相模原市中央区・相模総合補給廠一部返還地 2025/06/21
空き地に生えた開花中のセイヨウミヤコグサ 相模原市中央区・相模総合補給廠一部返還地 2025/06/21
開花前の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/09
満開の#セイヨウミヤコグサ(1株、直径1.7m) 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
満開の#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
葉の大きさは、まちまちであるも概ね在来種のミヤコグサと同じ。形状もほぼ同じないしやや細め。大株に成長すると、なのか、もしかすると夏になって日差しが強くなってくると、かもしれないが、葉はより細くなっていくように思われる。葉身の縁(ふち)にまばらな毛が生えているものも、そうでないものもある。そういう意味では、巨大株に成長していない、あるいは花が咲いていないセイヨウミヤコグサは、在来種のミヤコグサと紛らわしいので、花が咲いていない時期に同定をしようとしてはいけない。
セイヨウミヤコグサの成長途中の小株の葉 東京都八王子市下柚木 2025/04/16
#セイヨウミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
#セイヨウミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
セイヨウミヤコグサの葉 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの葉 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの葉 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの葉 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの葉 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの葉 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
#セイヨウミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
#セイヨウミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
セイヨウミヤコグサの花
海辺に生える在来種のミヤコグサが開花するのは4月上旬から、セイヨウミヤコグサの開花は遅れて6月中旬から。一気に満開に至る。6月20日頃の在来種ミヤコグサは完全に咲き終わっているわけではないものの咲き疲れないし咲き終わり感が大いに漂っているものがほとんどだろう。在来種のミヤコグサと外来種のセイヨウミヤコグサはそっくりで見分けが難しい、という風説が定着しているが、花が咲いていれば一目で見分けられる。一個の花序に咲く小花が二個程度(一個のものも少なくないがふつうは二個、希に三個、極めて希に四個)なら在来種のミヤコグサ、一個の花序に咲く小花が概(おおむ)ね六個から八個であればセイヨウミヤコグサである。花色の黄色は在来種ミヤコグサより(並べて見比べないと違いが判らない程度に)ごくわずかに濃い。小花の大きさは、在来種ミヤコグサおよびネビキミヤコグサ(根引都草)と同大。
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの花 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
#セイヨウミヤコグサの花 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
一個の花序に咲く小花の数は、最少で(芽のうちに虫に齧(かじ)られたなど事故的に発生したのかもしれない)一個、最大で十個。生育不良な貧弱な個体では小花の数は少ないので、在来種のミヤコグサと誤認し得るだろう。
#セイヨウミヤコグサの花(小花4個) 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの花(小花9個) 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの花(小花9個) 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの花(小花10個) 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
セイヨウミヤコグサの花のサイズ感 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
#セイヨウミヤコグサの花のサイズ感 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
セイヨウミヤコグサの花の咲き終わり 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
同じ外来種のネビキミヤコグサもワタリミヤコグサ(亘理都草)も一個の花序に咲く小花の数が多数であり、セイヨウミヤコグサと紛らわしい。特によく似ているネビキミヤコグサは、茎が立ち上がる力がやや強く、小花の数は概ね五個ないし六個で、明らかに大きな葉も少なからずふつうに出現する。ワタリミヤコグサは、茎が地べたにべたあっと強く貼り付くように這い、小花の数が概ね五個ないし六個で、並べて比べないと判らない程度の違いではあるも小花が小さく、葉と苞が線形と言いたくなるくらいにかなり細い。
神奈川県内に自生および帰化しているミヤコグサ類(四種)の見分け方 | ||||
ミヤコグサ | セイヨウミヤコグサ | ネビキミヤコグサ | ワタリミヤコグサ | |
株の大きさ | 巨大化する | 巨大化する | 巨大化する | |
草姿 | 這う | 這う | やや立ち上がる力が強い | 強く這う |
開花時期 | 4月上旬~ | 6月中旬~ | 6月中旬~ | 5月末~ |
小花の数 | 概ね2個 | 概ね6~8個 | 概ね5~6個 | 概ね5~6個 |
小花の大きさ | やや小さい | |||
蕾 | 部分的にうっすら赤い | 赤い | 赤い | |
萼片の基部 | (コブ状に出っ張る) | |||
葉 | 幅広 | やや細め | やや細め | かなり細い |
大きな葉 | ふつうに出現する | |||
苞 | 幅広 | 細め | 細め | かなり細い |
神奈川県内に自生および帰化しているミヤコグサ類すべて(四種)の葉の違い
萼片の基部に瘤(こぶ)状の出っ張りがある、ものがある。萼片は萼筒より短い、という点はネビキミヤコグサと同じである。
セイヨウミヤコグサの萼 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
誰が言い出したのかは知らないが、萼が無毛だったら在来種のミヤコグサ、萼に毛が生えていたらセイヨウミヤコグサ、という見分け方が広く流布(るふ)され定着しているようだが、誤り。在来種のミヤコグサの萼は無毛のものが確かに多いが有毛であるものも少なくないので、ただの個体差の範疇(はんちゅう)でしかない。セイヨウミヤコグサの萼が無毛なことだってある。ミヤコグサ類の萼の毛がどうたらという話は完全に忘れなくてはいけない嘘情報。
#セイヨウミヤコグサの萼 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの萼 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの萼 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
蕾は黄色。部分的にうっすらとだけ赤みを帯びた。ネビキミヤコグサとワタリミヤコグサの蕾は小さいものほど真っ赤。但し、ミヤコグサ類の(特に咲き終わりの)花が”赤みを帯びる”件に関しては外的な要因(生育環境)によって生じている現象ではないかとも疑われ、赤い蕾や赤っぽい(朱色の)花が出現することを同定の判断材料にするのは誤認に向かう危険を孕(はら)んでいるような気がしている。
蕾を付けた#セイヨウミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
#セイヨウミヤコグサの小さい蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの小さい蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
セイヨウミヤコグサの蕾 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
#セイヨウミヤコグサの開花直前の蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
苞(ほう、花の直下に付属する葉)は、やや細い。在来種ミヤコグサの苞は、葉と同様にかなりの幅広。ネビキミヤコグはセイヨウミヤコグサ同様にやや細い。ワタリミヤコグサは花序柄(かじょへい)の太さと大差ないくらいかなり細い。
#セイヨウミヤコグサの蕾の苞 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
#セイヨウミヤコグサの苞 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/23
#セイヨウミヤコグサの苞 茅ヶ崎市浜之郷 2025/06/20
セイヨウミヤコグサの苞 東京都八王子市下柚木 2024/06/22
花序柄の長さはおよそ10cm未満であるが、もしかしたら、草地に生えて立ち上がった草姿になった個体は(ネビキミヤコグサがそうであるように)花序柄をもっと長く伸ばしてくるかもしれない。
セイヨウミヤコグサの花序柄 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
セイヨウミヤコグサの花序柄 東京都八王子市下柚木 2024/06/17
東京都八王子市下柚木(しもゆぎ)・下柚木小学校
相模原市中央区・相模総合補給廠(ほきゅうしょう)一部返還地(相模原スポーツ・レクリエーションパークの敷地内は開発で滅失、その南向かいの空き地にあるが商業施設に再開発される予定なので滅失間近)
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)