フユノハナワラビ

冬の花蕨 ハナヤスリ目/ハナヤスリ科/ハナワラビ属 花期/11月
学名/Botrychium ternatum (Thunb.) Sw. var. ternatum

自生種稀少保護

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

他の草が茂っていない明るい日陰に生える多年草。シダ植物。暗すぎてじめじめべちょべちょ湿っているような場所は好まず、疎林の木漏れ日が少し差すような明るめの(半日陰の)林床に生える。湘南・鎌倉・三浦半島でよく見かけるのは、より大型なオオハナワラビ(大花蕨)。フユノハナワラビはそれに次ぐ普通種ではあるが、実際のとこはあまり見かけない。オオハナワラビよりやや小型だが、貧弱なオオハナワラビもふつうにあるので、株の大きさでは見分けられない。

疎林に生えたフユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

疎林に生えたフユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 横浜市南区・こども植物園 2016/10/25

#フユノハナワラビ 横浜市南区・こども植物園 2016/10/25

シダ植物なので、葉に見えるものは栄養葉(えいようよう)、花に見えるものは胞子葉(ほうしよう)という。※本頁では便宜的にそれぞれ葉・花と呼ぶ。

フユノハナワラビの葉 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10

フユノハナワラビの葉 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10

フユノハナワラビとオオハナワラビは、葉(栄養葉)の形状の違いで見分ける。オオハナワラビの葉は、大きく、角が尖った鋭利な三角形をしている。葉の縁(ふち)の鋸歯(きょし)は鋭利に細かく切れ込む。フユノハナワラビの葉は、やや小振りで、尖らない丸みを帯びた形状をしている。鋸歯は浅い。微妙な差異なので見慣れるまでは識別困難だろうが。

フユノハナワラビの葉 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビの葉 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビの葉 横浜市南区・こども植物園 2016/10/25

#フユノハナワラビの葉 横浜市南区・こども植物園 2016/10/25

フユノハナワラビの葉 東京都調布市・神代植物公園植物多様性センター 2020/02/08

#フユノハナワラビの葉 東京都調布市・神代植物公園植物多様性センター 2020/02/08

フユノハナワラビとオオハナワラビの葉の鋸歯の比較 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10

フユノハナワラビとオオハナワラビの葉の鋸歯の比較 秦野市・葛葉緑地 2019/11/10

フユノハナワラビの葉 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビの葉 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビにしては葉先が尖り鋸歯が鋭利に切れ込むので雑種か 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビにしては葉先が尖り鋸歯が鋭利に切れ込むので雑種か 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

日の当たる場所に生えているものは冬に葉の表側のみほんのり赤く紅葉することがある。明確に赤っぽければアカフユノハナワラビ(赤冬の花蕨)かアカハナワラビ(赤花蕨)である可能性も。ただし両種はフユノハナワラビ以上の稀少種。

フユノハナワラビのすこしだけ赤みを帯びた葉 東京都調布市・神代植物公園植物多様性センター 2018/11/10

#フユノハナワラビのすこしだけ赤みを帯びた葉 東京都調布市・神代植物公園植物多様性センター 2018/11/10

フユノハナワラビの花(胞子葉)

シダ植物なので花を咲かせて花粉や種子を作るのではなく、胞子葉が胞子を飛散させることで増殖する。オオハナワラビのように春まで直立していることはなく、胞子の飛散が完了すれば枯れて倒れるのがふつう。見頃は11月中旬。

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14

フユノハナワラビ 相模原市南区・相模原公園 2024/11/14


東京都調布市・#神代植物公園植物多様性センター(1株のみ、秋に植え付けているものなので状態不良)、横浜市南区・#こども植物園(少ない)、横浜市戸塚区・#舞岡公園(古民家裏)

小網代の森、森戸川源流、#東慶寺(本堂前庭)、#大船フラワーセンター(森の小道に1株、咲く)

大楠山(見当たらない

大楠山のフユノハナワラビ


田中澄江『花の百名山』(文藝春秋、1980)にて横須賀市の大楠山(おおぐすやま)がフユノハナワラビ咲く山として紹介されたことから一躍有名に。とはいえ、じつは──

「雑木林の中の道を、秋谷に近い前田橋に下る。両側が深くえぐれて、姿をかくしやすい。林にはヤマザクラが多く、自動車の通れない狭い石ころ道の両側には、キチジョウソウやフユノハナワラビがいっぱいある。軽井沢のカラ松林の中で、よくナツノハナワラビを見つけることがあるけれど、私は葉にぼってりとした厚みのあるフユノハナワラビの方が好きだ。」(以上、同書16頁より引用)

「1 高尾山・フクジュソウ」の次に挙げられている「2 大楠山・フユノハナワラビ」であるが、項内のほとんどは中世の三浦一族にまつわる随想で占められており、大楠山のフユノハナワラビに関する記述はこれしかない。


現在の大楠山で見られるのはオオハナワラビばかりで、フユノハナワラビの目撃情報はとんと聞こえてこない。『神奈川県植物誌2018』によればかつては自生があったようだが、今はほぼないものと考えてよさそうである。個人ブログ等で紹介されている”大楠山のフユノハナワラビ”の写真は、ざっと確認した限りいずれもオオハナワラビであった。ただし一点のみフユノハナワラビの可能性を疑わせるものがあったため、「大楠山にフユノハナワラビはない」とは言い切れないところ。できるだけ早いうちに実見に訪れたい。

厚木市・#荻野運動公園野草園、秦野市・葛葉緑地、相模原市南区・相模原公園(公園管理事務所東向かいのホオノキときらめきの流れの間の林床、雑種らしきものも)、箱根町・湖尻園地

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

『神奈川県植物誌2001』 神奈川県植物誌調査会編集 神奈川県立生命の星・地球博物館発行(2001)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

オオハナワラビ

『フユノハナワラビ』へのコメント

  1. ケンモチ ナオミ 投稿日:2024/11/19(火) 23:23:46 ID:c7f0fe54d 返信

    フユノハナワラビ
    今週末にでも見に行ってみます、相模原公園は近いし。
    大楠山のフユノハナワラビの実際の話も興味深いですね、さすが mirusiruさん

    厚木市七沢あたりも紅葉してきました
    あっという間に年末へGO!

    • mirusiru.jp 投稿日:2024/11/20(水) 13:55:12 ID:d41b02056 返信

      >相模原公園のフユノハナワラビ
      すべて純粋なそれとは言えないものなのかもしれません。明らかに怪しいやつがいるので、全員無事ではあるまい、と。

      >大楠山のフユノハナワラビ
      毎年懸案事項としてスケジューリングはしてあるのですけど、気力体力の消耗を理由に十年近く先送りし続けています。今年も逃げる気満々です。

      >厚木七沢の紅葉
      山の麓もきれいになってきたような、そう見せかけて茶色かったり禿げてたりもするような、そんな感じになってきましたね。
      どこかへ行きたいんですけど、毎年この時期って頭の中もごちゃごちゃでどこへ行けばいいのやらわからなくなって結局どこへも行かずにやり過ごしてしまいます。今年もすかす気満々です。

      >あっという間に年末へGO!
      餅だけは買い貯めてあります。ヤオコーの切り餅が小袋に脱酸素剤まで入ってる割に値段が安めで良きかな。

      >相模原駅近辺の変なやつ
      以前どこかでお話ししたような気がしますが、ヒロハノカワラサイコでした。再開発される直前のような気配が漂っているので、見るなら今のうちかもしれません。越冬用の小株しかありませんけど。移植されずに、工事で全滅するのかなーって思っています。まあそもそも移入の連中らしいですけれども。

      • ケンモチ ナオミ 投稿日:2024/11/20(水) 21:41:19 ID:c42f42346 返信

        今朝は寒くて、、
        かと言って まだ暖かな日も有るんでしょうから
        苦手な時期ですよ。文字通り気ぜわしい、、。
        正月開ければ清々としますがねェ
        ヤオコーの切り餅 良きと聞けば気になるのでチェックしてみよぉ(笑)

        相模原駅近辺の変なやつ
        この間、画像が増えてて勝手に嬉しがってました、 mirusiruさんが
        引くぐらい見てますからね。
        ヒロハノカワラサイコと相模原公園のフユノハナワラビ
        セットで見に行ってみよ、見れるうちに見ておかないとね
        情報ありがとうございます。

        • mirusiru.jp 投稿日:2024/11/21(木) 01:03:43 ID:0e1c9dd87 返信

          今日は寒さと筋肉痛で一日中ごろごろしてしまいました。掃除も衣替えも‥、致しません。洗車も庭の片づけも‥、致しません。飯は食っても片付けは‥、致しません。(米倉涼子風に)
          寒くて動きたくないやら、観光に出かけなきゃいけない雰囲気やら、年内に片付けたいことが山積みやら、寒くて動きたくないやら、動かないと体重がまた増えるやら、寒くて動きたくないやら。せわしないですねえ。

          >ヤオコーの切り餅
          保存に良きかな。焼き餅がすぐ硬くなるような気がしないでもないです。

          レーズンくるみスティック
          スーパーのちょっとお高いパンコーナーの石窯がどうたらと一緒のとこに置いてあるタカキベーカリー秦野工場製の、おいしいよ。4本入って250円ちょっとなので菓子パン買うよりコスパ良し。硬めもっちりの歯ごたえ、香ばしさ、周りの粉っぽさ、とっても良きかな。

          >ヒロハノ
          地味な写真一枚混ぜ込んだだけでよく気付きましたね。具体的な地点は前に確か話してますよね。
          「カワラ」と言ってるのに海辺と軍事基地でしか見たことないとか何かもう。

          >フユノ
          踏まれないうちに‥。
          何年か前に紅葉の丘で見かけたノウサギ氏、いなくなっちゃいましたかね。出遭えませんでした。
          園内、紅葉がきれいでしたよ。メタセはまだぜんぜんですが。

          • ケンモチ ナオミ 投稿日:2024/11/21(木) 22:58:06 ID:48cce8513

            まあ、あれですよ
            私は たまにスイッチが入った時に山積した やるべき事に
            手を付けますが何か?

            相模原公園の紅葉 楽しみだなぁ
            私はノウサギ氏をお見かけした事なく
            見かけたらお知らせします、居るだろうか?
            レーズンスティックも気になる、食してみたくなる(笑)

          • mirusiru.jp 投稿日:2024/11/22(金) 22:55:12 ID:3dda8a3ad

            この時期はどない頑張ってもたいして片付かず15時日没サスペンデットになるんですよねえ。

            有料の相模原公園に止めるのか、無料の麻溝公園に止めて歩くのか、有料の相模原公園に止めたのに結局麻溝公園まで歩いてしまうのか。

            数えてみたら、部屋にレーズンくるみスティックの空き袋が29枚もありました。くわばらくわばら。

  2. 茂森 彰 投稿日:2024/10/02(水) 10:58:56 ID:febcac158 返信

    高山市へ旅行した時に新穂高ロープウェイに乗りたくて途中の北アルプス大橋に立ち寄りました。紅葉には、まだ少し早く3枚ばかりの写真撮影をしてヘリポートがある少し小高い丘に登り付近を散策して、冬の花蕨を見つけました。興味がない人には全く見向きもされないでしょうね。ここは日当たりもよく元気に育ってました。

    • mirusiru.jp 投稿日:2024/10/03(木) 22:34:21 ID:4cc299097 返信

      飛騨高山でしょうか。さぞいいとこでしょうねー。うらやましい。
      フユノハナワラビは箱根でも9月17日に蕾を見ているので、寒冷地ではもうとっくに咲いている頃でしょうか。見つけるとちょっと得した気分になりますよね。ちょっとちっちゃいだけにかわいらしくて。

  3. 里山ライフ 投稿日:2023/06/04(日) 20:57:26 ID:abeff1921 返信

    数年前から車庫の東脇に「ワラビ」が自生し始めています。
    ワラビが生えだした箇所は、
    当初からスギナがはびこっていて(その地下茎が深過ぎて、客土もしたが)為す術もない始末だったが、今ではワラビが群生し、スギナや他種が消滅してしまった。

    そのワラビについて学びたく、
    mirusiru.jp で検索したところ「フユノハナワラビ」に目が留まりました。
    正に「フユノハナワラビ」が、しかもアカフユノハナワラビ(赤冬の花蕨)かアカハナワラビ(赤花蕨)が、ひっそりと点在しています。
    奇怪な葉の形状と花(に見える胞子葉)に興味が尽きず、
    除草せずに残していたのですが、ようやく得心が得られました。
    スギナやワラビとは違い、細々と生育しています。

    [稀少][保護]種ならば、無碍にはできないですね。
    見守ることにします。

    • 里山ライフ 投稿日:2023/06/05(月) 07:17:04 ID:e86760224 返信

      mirusiru.jp の記事により「同定」できたので、更なる探求が可能になりました。
      フユノハナワラビ(冬の花蕨) | 松江の花図鑑
      https://matsue-hana.com/hana/huyunohanawarabi.html
      フユノハナワラビ (冬の花蕨) | 花図鑑
      https://hanazukan.hanashirabe.com/xs.php?fid=c2509
      ハナワラビの仲間 | 大阪南部の自然 シダ植物「みくらべる~む」
      https://www.ne.jp/asahi/sunsun/tanpopo/mikurabe/hanawarabirui/hanawarabirui.htm
      オオハナワラビ | ja.wikipedia.org
      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AA%E3%83%8F%E3%83%8A%E3%83%AF%E3%83%A9%E3%83%93
      引用:地中性で従属栄養の配偶体をもち、自殖率が著しく高い。[3][4]そのため、僅かな遺伝的変異が固定されやすく表現形質に表れやすい性質を持っているとされる。地中性の配偶体を持ちながら他殖も行えることが明らかになり、オオハナワラビ亜属内での種間雑種も複数報告されている。[1][5]

      シダ植物は、なかなかに奥深いですね。
      それらのシダ植物は(シシガシラ、ノキシノブなども)身近に存在するため、観察する楽しみができました。
      精力的で、有益な情報満載の mirusiru.jp に御礼を申し上げます。

    • mirusiru.jp 投稿日:2023/06/06(火) 10:44:44 ID:97f3ac409 返信

      ご自宅にワラビが自生はすごいですね。こちらではゼンマイやコゴミ(クサソテツ)はよく見かけますが、ワラビって見た記憶が一度もないですね。私が気付いていないだけだと思いますが。

      フユノハナワラビ、よく見つけられましたね。シダ植物はどれもよく似ているので、私なんか何度見てもオオハナワラビと混同するということを何年も繰り返しました。赤っぽい個体なんか出てくるともう見分けが付けられたものではありません。シダは陰湿な森に入ればどこにでもあるので、名前がわかるようになると楽しいでしょうねー。