蜻蛉草 クサスギカズラ目/ラン科/ツレサギソウ属 花期/7月、(箱根)8月~9月初旬
学名/Platanthera ussuriensis (Regel & Maack) Maxim.
自生種稀少保護

トンボソウの花 箱根町・湖尻園地 2024/08/10
主に山地のヤブカ(藪蚊)の巣窟になっているようなややじめじめ湿った薄暗い林床に生える小型な多年草(宿根草)。野生のランの一種。名は、花の形状が飛翔する昆虫のトンボに喩(たと)えられたもの。ひょろっと直立して草丈は15~30cm程度。か細い上に色的にも目立たないため、目ん玉かっ開いて地べたを凝視し続けていないと、目の前にちょこちょこ生えていたとて気づかずに通り過ぎてしまうに違いない。神奈川県内では丹沢と箱根に分布。幻の希少種、というわけではなく、野生ランとしては比較的多い。湘南・鎌倉・三浦半島では平塚市内で発見例があるらしい。が、基本的には一切ない、と考えてよいだろうもの。ちょっとでも雰囲気に違和感を感じる、花の形状が微妙に違う、といったものは紛らわしい近似の別種を疑うこと。

じめじめした林床に生えた開花中のトンボソウ 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

じめじめした林床に生えた開花中のトンボソウ 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

じめじめした林床に生えた開花中のトンボソウ 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

開花中のトンボソウのサイズ感 箱根町・湖尻園地 2024/08/10
葉は地際にふつう二枚生える。

トンボソウの花時の葉 箱根町・湖尻園地 2024/08/10
湘南・鎌倉・三浦半島で見かける同属の近似種はオオバノトンボソウ(大葉の蜻蛉草)ただ一種のみ。オオバノトンボソウはトンボソウに比べれば遥かに大型で花期も早いので、混同してしまう虞(おそれ)はない。
トンボソウの花
唇弁(しんべん)は基部で左右に張り出す小さな裂片があるためT字形をしている。花の後方に(花柄(かへい)に沿って伸びるので目立たないが)細長い棒状の距(きょ、突き出るもの)がある。

トンボソウの咲き始めた花序 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

育ちの良いトンボソウの花序のサイズ感 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

トンボソウの花序 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

トンボソウの花 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

トンボソウの花 箱根町・湖尻園地 2024/08/10

トンボソウの距 箱根町・湖尻園地 2024/08/10
距が唇弁よりも短かったら山地に生える希少種イイヌマムカゴ(飯沼零余子)である疑い。
東京都八王子市・片倉城跡公園
箱根湿生花園(園内に出るとは聞いてはいるが園路沿いにはない)、箱根町・湖尻園地
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
オオバノトンボソウ
ミズトンボ