クマヤナギ

熊柳 バラ目/クロウメモドキ科/クマヤナギ属 花期/7月 結実期/翌年の6月~8月
学名/Berchemia racemosa Siebold & Zucc. var. racemosa

自生種

クマヤナギの赤い実 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/29

クマヤナギの赤い実 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/29

山地や丘陵地の人の手があまり入らない林縁などで周辺の木々に絡んで生える蔓性の落葉樹で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。日本固有種。名前の由来は、山野に生えて茎が強靭で、林縁で茎が垂れ下がってくる様子から、らしい。ヤナギの仲間ではまったくないし、実際のところクマっぽさもヤナギのような雰囲気も感じられない。神奈川県内ではほぼ全域に分布があるため普通種の扱いながら、湘南・鎌倉・三浦半島で実際に目にする機会は希だろう。丘陵地の緑地を歩けば幼木はときたま生えてはいるようなのだが目立たないため目撃例が報告されない。花が咲き赤い実が付けば人に気づかれもしようが、そこまでの大株は希有なうえ、猛暑の真夏に他に見るべきものが特にない山野を歩く人がどれほどいようか。高さは4mとか5m近くまで登るため、目線で花や実を見ることができる機会は更に少ない。林縁に生えるので人の手が入る場所では刈られてしまうだろう。

通路真上に生えているがぜんぜん目立たないクマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

通路真上に生えているがぜんぜん目立たないクマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

蕾が付いたクマヤナギ 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

蕾が付いたクマヤナギ 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

林縁に生えたクマヤナギ(白破線内) 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/29

林縁に生えたクマヤナギ(白破線内) 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/29

林縁に生えたクマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/24

林縁に生えたクマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/24

実を垂らしたクマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/24

実を垂らしたクマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/24

実を垂らしたクマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/24

実を垂らしたクマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/24

クマヤナギの幼木 箱根町箱根 2024/08/07

クマヤナギの幼木 箱根町箱根 2024/08/07

葉は互生でやや小さめ。大きいと感じる葉でも葉身は長さ6cmまで。規則的な葉脈が印象的。

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉の表裏(葉身の長さ6cm) 箱根町箱根 2024/08/07

クマヤナギの葉の表裏(葉身の長さ6cm) 箱根町箱根 2024/08/07

葉の裏側は少し白っぽい。写真にすると違いが分かりづらいが、肉眼で見た現物は(表裏を比較してみれば尚更確実に)白っぽい。

クマヤナギの葉裏 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの葉裏 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

山地に生える変種にオオクマヤナギ(大熊柳)なるものあり。名前の通り大型で、葉身は長さ5~10cm。花序も大きくて、軸から分かれた枝から更に枝が分かれる。神奈川県内ではおよそ丹沢周辺の山地にのみ自生あり。
名前を混同してしまうかもしれないクマツヅラ(熊葛)はまったくの別種。

クマヤナギの花

円錐花序(えんすいかじょ)と呼ばれる型の総状花序(そうじょう-)。軸があり、枝分かれする。その枝から更に枝分かれしているようならオオクマヤナギである可能性。

クマヤナギの蕾 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの蕾 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

開花中のクマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

開花中のクマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

花と赤い実が同時に見られるクマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

花と赤い実が同時に見られるクマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

一部が咲いてはすぐ傷みといった具合で、花序全体がきれいに満開することはない。

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

クマヤナギ 平塚市土屋 2024/07/07

小花は黄緑色からクリーム色ないし薄黄色と感じるだろう色。藤子・F・不二雄作の漫画『ドラえもん』に登場するスネ夫の前髪のような形をしたものは、花弁ではなく萼片。ぱっと平開することはない。小花を蓋(ふた)するように内側に巻き込んでいるのが花弁。雄蕊と雌蕊はその中にあるが、花弁のせいで(特に雄蕊は)見えない。

クマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/08/07

クマヤナギ 箱根町箱根・椿ライン 2024/08/07

クマヤナギの実

花が咲いたらそのほぼ一年後、翌年の花が咲く頃から赤い実が黒く熟す。従って、花と実は同時に見ることができる。

クマヤナギの赤い実 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの赤い実 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの赤い実 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの赤い実 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの黒く熟し始めた実 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/29

クマヤナギの黒く熟し始めた実 箱根町箱根・椿ライン 2024/07/29

クマヤナギの黒く熟した実 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22

クマヤナギの黒く熟した実 東京都八王子市・長池公園 2024/06/22


東京都八王子市・長池公園(田んぼの築池側)

平塚市土屋(七国荘西方の農道沿い、吸血アブに注意)

藤沢市・新林公園(散策路に幼木)

箱根町箱根・椿ライン(「箱根 富士見台 別荘地」入口)

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

『日本の固有植物』 加藤雅啓・海老原淳編 東海大学出版会発行(2011)

『牧野 日本植物図鑑』 牧野富太郎著 北隆館発行(1940)