関東蒲公英 キク目/キク科/タンポポ属 花期/3月~5月
学名/Taraxacum platycarpum Dahlst. subsp. platycarpum var. platycarpum
薬用自生種保護
カントウタンポポ 横須賀市・塚山公園 2017/04/15
里山周辺の明るい草地などに生える多年草。ニホンタンポポ(日本蒲公英)と呼ばれるものの一つで、湘南・鎌倉・三浦半島で見られるタンポポとしては唯一の在来種。かつては「日本に帰化をしている侵略的外来種セイヨウタンポポ(西洋蒲公英)に圧迫されて、遅かれ早かれカントウタンポポは絶滅してしまうのではないか」と危惧されていたものの、なかなかどうして劣勢ながらもしぶとく生き残っている。同じく絶滅が心配されていたニイニイゼミ(にいにい蝉)にもいえることだが、上手いこと棲み分けることに成功したとみてよいだろう。カントウタンポポは都市部や住宅地から少し距離を置いたいわゆる里山地域に特化して分布している。鎌倉の社寺境内にも生えているので、ウメ(梅)やサクラ(桜)を見に来るついでに併せて楽しみたい。小さな(女の)お子さんをお連れの方には、公園などに生えているカントウタンポポの花は摘み取ってしまわないようお願いしたい。
広場に生えたカントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2022/03/24
田んぼの土手に生えたカントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2022/03/24
カントウタンポポ 秦野市・葛葉緑地 2020/03/26
カントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2018/03/28
カントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2018/03/28
カントウタンポポ 茅ヶ崎市行谷 2018/03/28
カントウタンポポ 鎌倉市・海蔵寺 2017/04/02
カントウタンポポ 横須賀市・塚山公園 2017/04/15
カントウタンポポの大きな特徴は──、総苞片が反り返らないこと、総苞片の先に角状突起があること、の二つ。タンポポは分類が難しいため細かな点は割愛する。カントウタンポポは、突起が大きなトウカイタンポポ(東海蒲公英)や突起のないシナノタンポポ(信濃蒲公英)の中間種のような位置づけで、個体差大きく、”これはカントウタンポポではない別のニホンタンポポの一種なのではないか”などと疑い始めると”沼ニハマル”こと請け合いだ。なので、”湘南・鎌倉・三浦半島で咲いている総苞片が反り返らない角状突起のあるタンポポはぜんぶカントウタンポポだ”と思っておいてよい。いや、”湘南・鎌倉・三浦半島で咲いている総苞片が反り返らない角状突起のあるタンポポをぜんぶひっくるめてカントウタンポポと呼ぶのだ”、これくらい攻めた言い方をしてしまった方が気楽でよい。
カントウタンポポの総苞片 鎌倉中央公園 2018/02/15
カントウタンポポの総苞片 鎌倉市・海蔵寺 2017/02/25
カントウタンポポの総苞片 逗子市・大崎公園 2017/03/28
(シナノタンポポを疑いたくなる)カントウタンポポの総苞片 横須賀市・千代ヶ崎砲台跡 2017/03/17
カントウタンポポの風変わりな総苞片 平塚市・花菜ガーデン 2017/04/25
カントウタンポポの葉 茅ケ崎里山公園 2022/03/24
カントウタンポポの葉 鎌倉市・光則寺道 2019/03/15
カントウタンポポの葉 秦野市・葛葉緑地 2020/03/26
ちょっとした違いを理由にエノシマタンポポ(江ノ島蒲公英)なるものを見出した人物があるようだが、カントウタンポポの変異の範疇として本項では取り合わない。
カントウタンポポの花
早ければまだ寒々しい二月から、主に四月上旬を中心として春限定で開花する。タンポポは秋まで咲いているイメージがあるがそれはセイヨウタンポポで、カントウタンポポは夏には開花をやめて一旦枯れてしまう。
咲き始めたカントウタンポポ 茅ヶ崎市・「文教大学入口」交差点 2018/03/28
咲き始めたカントウタンポポ 鎌倉中央公園 2018/02/15
タンポポは完全に開花するには三日かかるという。花の中心部に花弁の塊(かたまり)あるものは、開花一日目ないし二日目のものということ。
開花途中のカントウタンポポ 秦野市・弘法山 2017/04/06
カントウタンポポ 鎌倉市・海蔵寺 2017/02/25
カントウタンポポ 秦野市・葛葉緑地 2020/03/26
(シナノタンポポを疑いたくなる)カントウタンポポ 横須賀市・千代ヶ崎砲台跡 2017/03/17
花の一部の黄色が薄く白っぽい個体をウスジロカントウタンポポ(薄白関東蒲公英)という。
ウスジロカントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2018/03/28
ウスジロカントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2018/03/28
ウスジロカントウタンポポ 茅ケ崎里山公園 2018/03/28
カントウタンポポの実
カントウタンポポは自家不和合性(じかふわごうせい)。自分自身の花粉では受粉(自家受粉)できず、他の株の花粉でのみ受粉(他家受粉)が可能。つまり自分の周辺に花開いているカントウタンポポが他にもあってはじめて実を結ぶことができるため、人為的に更地にされてしまったようなところで頑張ってぽつりと咲いても実ができない、勢力を維持拡大できないのだ。これが(受粉せずとも、クローンとなる種子を自分一人だけでどばどば作り出せる)無融合生殖という反則技を繰り出せるセイヨウタンポポに分布を追われた主たる要因。
カントウタンポポの実 平塚市・花菜ガーデン 2017/04/25
参考資料
『神奈川県植物誌2001』 神奈川県植物誌調査会編集 神奈川県立生命の星・地球博物館発行(2001)
『タンポポ ハンドブック』 保谷彰彦著 文一総合出版発行(2017)
内陸(栃木県)の谷戸環境(いわゆる里山地域)で、山村振興法「僻地」指定地の丘陵上に居住。
一帯で、開花しているタンポポを点検してみました。
確かに、mirusiru.jp での解説通りです。
居住地周辺に限ってですが、外来種は見当たりません。
オオイヌノフグリ、オランダミミナグサ、ミチタネツケバナ、シンテッポウユリなどの外来種が目立つほどなので、
タンポポの在来種は「風前の灯」だと思い込んでいました。
これまで「タンポポの種」が飛び始めるまでに積極的に除草していましたが、温情が芽生えました。
当地は、
塩那丘陵の一角で小貝川源流の地。小貝川の下流域以外の三方を丘陵で遮られ、谷戸の湧水などが小貝川に合流する地です。そのような環境なので「陸の孤島」同然で周囲からの影響を受けにくい。なにせ、人口よりもハシボソガラスの生息数が勝り、コンビニも無く、Wi-Fi 不全地域の「僻地」地区ですから。
蛇足ですが、
私の出身地は関西ですが、この地を気に入り(環境保全を重視した工法で)居を構えました。