銀竜草 ツツジ目/ツツジ科/ギンリョウソウ属 花期/3月末~7月
学名/Monotropastrum humile (D.Don) H.Hara
自生種稀少保護
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/03/31
林床に生える多年草。特にクヌギ(橡)林の落ち葉が豊かに堆積した昼に直射日光の当たらない乾燥しない腐植土(ふしょくど、分解が進行した腐葉土)を好むか。植物でありながら地上部は全身白色。竜というよりは、タツノオトシゴ(竜の落とし子)みたいな形状。ちょっと不気味な姿をしているので別名ユウレイタケ(幽霊茸)。但し、菌類のキノコ(茸)ではないので、花を咲かせてタネも作る。葉緑体を持っておらず、光合成はしない。土中にある特定の(ベニタケ科の)菌類から栄養を吸い取って生きている腐生植物(菌従属栄養植物)で、その代表格として本種の名が挙げられることが多い。神奈川県内では主に丹沢や箱根に分布。湘南・鎌倉・三浦半島では三浦丘陵の付け根の地域でちらほら標本が採取されている模様。神奈川県レッドリストに挙げられたことはないので、一応普通種という扱い。但し、開花期間に幅があるためいつ出現するかわからず、傷みやすいので長々と姿を見せてくれるわけでなく、丈(高さ)は5cmから10cm程度しかないので目立たなすぎて生えていても気づかず、落ち葉に隠れ気味で、人に見つかれば物珍しいので引っこ抜かれたり、そうされないように落ち葉をかぶせて隠されたり、とにかくなかなか出遭えはしまい。珍品。
雑木林に生えたギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
真上から見たギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウ 厚木市・荻野運動公園野草園 2017/05/06
ギンリョウソウ 厚木市・荻野運動公園野草園 2017/05/06
一地点から一本から三本くらい生え出ていることが多いか。その一塊で一株。大株になると五本を超える茎を立ち上げてくるようだが、希。
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
茎に付いているびらびらは、(退化した)葉っぱ。全草ひ弱で、すぐに葉のみならず部分的に黒っぽく傷みがち。特に葉先が傷んでいるもの多いので、もしかしたら生育に必要な水分ないし栄養分が不足している可能性も。全身純白の美しい状態で見かけることはなかなかないかも。
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
姿がそっくりなものに、ギンリョウソウモドキ(銀竜草擬)、別名アキノギンリョウソウ(秋の銀竜草)なるものあり。同じものにしか見えないくらいに瓜二つだが、ギンリョウソウとは時期がずれて真夏以降に出現する。花弁先端に細かなぎざぎざが多い。全身が黄ばんでいたらシャクジョウソウ(錫杖草)である疑い。これら近似の三種の中では、希少性はギンリョウソウが最も低い。
ギンリョウソウの花
茎の頂上に一つ、くいっと首を曲げて斜め下を向いた花を付ける。低所で下向きに咲くので花の内側は人の目には触れないだろう。雌蕊の先端(にある花柱(かちゅう))は紺色、雄蕊(の葯(やく))は黄色。マルハナバチ(丸花蜂)が訪れる虫媒花のようである。花弁先端にぎざぎざなし。5月末~6月初旬に目撃報告が多いか。
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/03/31
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/03/31
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウ 愛川町・鳶尾山周辺 2023/04/05
ギンリョウソウの実
ぷっくり丸い、”目玉おやじ”形の実ができる。別名マルミノギンリョウソウ(丸実の銀竜草)とも。液果らしい。ギンリョウソソウモドキ(アキノギンリョウソウ)は蒴果(さくか)という違いがあるとのこと。
ギンリョウソウの実 大和市・泉の森 2019/07/08
東京都八王子市・高尾山、横浜市都筑区・都筑中央公園、横浜市都筑区・茅ヶ崎公園
三浦アルプス
大和市・泉の森、愛川町/厚木市・鳶尾山、厚木市・荻野運動公園野草園
参考資料
『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)
ギンリョウソウ:
見た記憶があり、
写真も撮影したはず…
たしか初夏、夫婦同伴での
奥日光だったような、那須高原だったのか、
林床での沿道の土手で、落ち葉に隠れ気味にちらほらと出現していた。
「気味の悪いもの」と物珍しさから写真に収めたが、すっかり忘却していました。
長い人生、それっきりの奇跡的な出会いだったようです。
写真を探してみます。