鶯 鳥類/スズメ目/ウグイス科/ウグイス属 見頃/2月中旬~8月中旬
在来種
ホーホケキョという独特の囀り(さえずり)で、オオルリ(大瑠璃)・コマドリ(駒鳥)と合わせて日本三鳴鳥(めいちょう)に数えられるたいへん有名な小鳥。大きさはスズメ(雀)程度でややスリム体形。体色は(ほんの僅かに緑がかっているようにも見えなくはない)ほぼ薄茶褐色、木々と保護色になってしまう地味な茶色で、ウグイス色と呼ばれる。ウグイスの姿はたいへん地味なのである。長めの尾っぽと白色の眉毛がチャームポイント。
ウグイス色
うぐいす豆やうぐいす餅として販売されているもの(製品そのものというより特にその包装)は鮮やかな緑色のものが多いが、それはメジロ(目白)色といった方が実物に近い。ウグイスの体色では全くない。思うに、ウグイスとメジロが混同されて色まで間違えられたというわけではなく、ウグイス色を商業的に目立つ色に徐々に変えていったら鮮やかな緑色が強くなりまるでメジロの色になってしまったといったところではないか。その結果、鮮やかな緑色をウグイス色と誤解してしまう現代人が増えてしまったのだろうと思う。
山崎製パン うぐいすぱん |
メジロ 体色 |
フジッコ うぐいす豆 |
ウグイス色 緑色強め |
ウグイス色 茶色強め |
ウグイス 体色 |
ウグイスは留鳥なので、じつは真冬でもそこいらにいる。生息場所は、相模川沿いや丘陵地などの笹薮の中。山野をハイキングしていると笹薮がカサコソと音を立てることがあるが、その犯人はウグイスかもしれない。警戒心がたいへん強いため人前に姿を晒すことはまずない。すぐそこで鳴き声を立ててくれても、体色が藪に溶け込んでしまうためなかなか見つけられない。やっとこさ姿を見つけ出しても、人の視線を感じればすぐに飛び去ってしまう。ウグイスの人間嫌いには困ったものである。
冬は笹薮の中でチャッ、チャッ(またはチュッ、チュッ/チッ、チッ/ジッ、ジッ)と舌打ちをするような音を立てて地鳴きする。笹鳴きとも。
ホーホケキョと囀るようになるのは春から。湘南・鎌倉・三浦半島では早いところで2月中旬から囀る。全国の気象台では「うぐいすの初鳴日(しょめいび)」が観測されており、神奈川県の横浜地方気象台(横浜市中区山手町=港の見える丘公園近く)は例年3月10日頃となっている(”気象台周辺で職員が囀りを聞いた”ことが判定基準であるため遅い)。
このホーホケキョもじつは一種類ではなく、雌にラブコールをするための甲高く声を張ったホーホケキョと、他の雄を縄張りから排除するためのドスを利かせた低い声のホーホケキョがある。
繁殖期にケキョキョキョキョキョ‥ケッキョケッキョケッキョ‥と鳴く声は谷渡り(たにわたり、谷渡り鳴き)という。
チャッチャッと笹鳴きをするウグイス 三浦市初声町下宮田 2016/01/26
梅に鶯(ウメにウグイス)
春を象徴する構図で、ウメ(梅)の木の枝にとまったウグイスが悠長にホーホケキョと囀っている光景をいう。
ただし「梅に鶯」はあくまでも王朝文学(古典の世界)が作り上げた美的感覚の型。春をいいとこ取りしてウメの花とウグイスの鳴き声を都合よく組み合わせたもので、現実にウメの枝にウグイスがとまって囀ることはまずない。ウグイスは開けた場所が大嫌いで、庭や梅林のウメの木に好んで飛来するなどありえないからだ。メジロ(目白)のようにウメの花の蜜を吸うこともしない(ウグイスの主食は小さな昆虫)。ウメにウグイスなんて”なにかヘン”と私たちが感じてしまうのは、あくまでもお公家さんたちが「梅に鶯(の鳴き声)という構図こそ春の美でおじゃるぞよ」と定めた非日常的な妄想の世界のお話だから。「山吹に蛙」(ヤマブキ(山吹)の花の下でフィーフィーと鳴くカジカガエル(河鹿蛙)の様子、現実にはまずありえない設定)しかりである。
もちろん、ウグイスがたまたまウメの枝にとまることはまったくないわけではない。しかしながらそれは、「スギの木にカブトムシ」や「子供のTシャツにセミ」くらいのハプニングでしかない。
ウグイスは葉山町の鳥に制定されている。
スズメ目ムシクイ科にメボソムシクイ(目細虫食)というウグイスにそっくりなやつがいるので注意。体の大きさ、体形は同じ。メボソムシクイは、白色眉毛がやや長くより明瞭で、体色はややメジロのように緑がかっており、翼の人間でいう肘(ひじ)の部分に僅かに白色の線が入るのが特徴。東南アジアなどで越冬して夏を日本で過ごす夏鳥で、山地の針葉樹林に生息するが、湘南・鎌倉・三浦半島には渡りの途中に立ち寄ることがあるようだ。メボソという名は細長い白色眉毛から来ており、目玉はふつうに丸い。