日影林道と日影沢林道の正しい道筋は以下の通りである。
日影林道(赤線)と日影沢林道(青線) ※画像クリックで拡大(1448×845、537KB)
なお日影林道(正しくは林道日影線という)は東京都の、日影沢林道(正しくは林道日影沢線という)は国の管理である。
東京都八王子市のいわゆる裏高尾にある日影沢(という小川)沿いには林道が通っている。およそ京王バス「日影」バス停と小仏城山を結ぶルートの林道である。この周辺一帯には希少な山野草が自生していることもあって、ハイカーのみならず花好きな方々も数多く訪れる(マニアックながら)人気のスポットとなっている。であるにもかかわらず、この林道の名称にはかなり激しい”揺れ”が見られる。つまり「日影林道」と「日影沢林道」、この両者が混沌と入り混じって使用されておりまったく明瞭でないのである。ある地図には「日影林道」と示され、別のものには「日影沢林道」と書かれている。個人ブログ等を拝見するならもうぐちゃぐちゃである。結局のところ、この林道の名称は何が正しいのか、「日影林道」とはどこなのか、「日影沢林道」はどの道を指すのか、はっきりさせるべく「日影林道」の管理者である 東京都 産業労働局 森林事務所 森林産業課 に問い合わせ、得られた明快なる回答が上に掲げた地図である。つまりは、当該林道は「日影林道」(と、途中から私有地内を通る名称不明の林道)であった。「日影沢林道」は、日影沢キャンプ場(日影沢園地)南から東方へ伸びる行き止まりの支線を指す名称である。なおこれらとは別に、日影沢キャンプ場(日影沢園地)から高尾山山頂方面に向かう「いろはの森コース」という道もある。
混乱を生じさせている原因──
1)日影沢に沿った林道なのだから「日影沢林道」と呼んで何も不都合はなかろう、という至極当然な思い込み。これに関して思うに、当地の林道名は起点を由来としているのだろう。日影集落を起点とした林道なので「日影林道」と。これに後発してもう一本林道ができたがふさわしい名称がこれといって思い浮かばなかったので起点となる日影沢から「日影沢林道」と命名。結果として紛らわしい事態に。日影沢からどんどん離れて行く道の方が「日影沢林道」だなんて普通の人は考えまい。
2)林道入口に掲出されている(おそらく現地をはじめて訪れた人は必ずちらりと目を向けるであろう)案内板「高尾鳥獣保護区・特別保護地区 区域案内図」に「日影沢林道」と記されている。これに関し、案内板設置者である 東京都 環境局 多摩環境事務所 自然環境課 鳥獣保護管理係 に問い合わせたところ、”ご指摘通り、日影林道と表記すべきところを誤って、日影沢林道としてしまったものです。(中略)早急に訂正いたします。”との回答を得た。
3)林道入口に「林道日影(沢)線 起点 東京都」と記された怪標識が立っている。(沢)とは、沢の一字をあとで誰かが消した痕跡あるも、消し切れていないので文字が読み取れる状態で残っている、という、誤りだったので修正したつもりなのかそれとも誰かがいたずらしただけなのかまったく判断が付かない、なんとも中途半端な状態のものである。
4)林道入口に「林道日影線 管理者 東京都森林事務所」の大型看板は確かにあるも、「日影林道」と明記された地図が掲出されていないので、どの道のどこからどこまでが日影林道なのか道筋が判然としていない。また一般人は「林道日影線」と「日影林道」という呼称の違いにも困惑することだろう。
5)八王子市公式サイト内に「日影沢林道」と記載している頁がある。これにつき、八王子市担当課より”関係する機関等にも確認をいたしましたところ、(中略)御指摘どおり、表示に誤りがありましたので該当箇所を修正いたしました。”との回答があり、「日影林道」と改められた。
6)昭文社『山と高原地図 28 高尾・陣馬』(2020年4月1日 10版1刷 発行)に「林道日影沢線」と掲載されている。これに関し地図編集部に確認を求めたところ、”現在「林道日影沢線」と表記されております林道は正しくは「林道日影線」でございます。「日影沢線」と「日影線」を取り違えて掲載しておりました。(中略)該当の箇所は次回出版の際に修正をさせて頂きます。”との回答を得た。
以上の経過をもって「日影沢林道(林道日影沢線)」との表記は公式には消えて行くものと思われる。(なぜ今まで誰も何も指摘をしてこなかったのだろうか?)
これで「日影林道(林道日影線)」として決着が付いた。なんて思ったら甘かろう。”じつはかつては日影沢林道という名前だった”とか、”地元の人はみな昔から日影沢林道と呼んでいるのだ”とか、”日影沢沿いの林道なのだから通称日影沢林道として定着しているれっきとした呼称なのだ”とかいった特別な事情がもしかしたら露になってくる可能性がある。そうなったとき、私の行いは混乱を増長させる余計なことをしただけに終わってしまうのだが、果たして──。
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