ミヤコグサ

都草 マメ目/マメ科/ミヤコグサ属 花期/5月~11月
学名/Lotus corniculatus L. subsp. japonicus (Regel) H.Ohashi

自生種薬用保護

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

芝生が生えるような開けた平地に這う多年草で、ヨーロッパ原産の帰化植物セイヨウミヤコグサ(西洋都草)の亜種とされている。名前の由来は、生薬の百脈根(ひゃくみゃくこん)になる草、つまりミャッコングサ(脈根草)からの転訛(てんか)か。別名エボシグサ(烏帽子草)。花の形はむしろ冠に似ているが、はて。三浦半島の海辺で特に多く見かけることから海岸植物かしらと勘違いしてしまいそうになるがどうもそうではないようで、神奈川県内では高い山地を除いて全域に広く自生があるようである。河川の土手などにも生えているとかどうとか。花が黄色でかわいいものだが栽培されることは滅多になく、野草ないし雑草という扱いに。市街地では見かけないので、ちょっと馴染みの薄い植物かもしれない。身近なところでよく見る地べた張り付き系のマメ科といえば、紫花のヤハズソウ(矢筈草)だろう。

ミヤコグサ 三浦市・毘沙門海岸 2016/09/17

ミヤコグサ 三浦市・毘沙門海岸 2016/09/17

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 三浦市・毘沙門海岸 2016/09/17

ミヤコグサ 三浦市・毘沙門海岸 2016/09/17

ミヤコグサの鉢植え 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

#ミヤコグサの鉢植え 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

ミヤコグサとセイヨウミヤコグサの見分け方

両者はほぼ同じと言いたくもなるほどたいへんよく似通っており、同定は密かに難題である。ざっくりと乱暴にも一言で片づけるならば、花数で見分ける。他に、萼筒と萼片の長短、葉や茎に生える毛の有無、も違いが出る傾向があるようながら、顕著な相違ではないようなので参考程度にとどめたた方が無難なのではないか。


ミヤコグサ

一つの花序に咲く小花は、基本的に二個。ちょくちょく一個。希に三個ないし四個。小花がふつう二個セットになって咲いているならもうそれをもってミヤコグサと断じてしまって構わない。

萼筒よりも萼片の方が長い、ないし同長(萼筒≦萼片)。(とされてはいるが、萼筒の方が長いものもちらほら混じっていたりいなかったりも。)

茎と葉は、無毛なものが多い。(とされてはいるものの、若い葉の裏の脈状などに毛が目立つものも特に珍しからず存在する。ルーペで覗けば茎などにもまばらな伏毛(ふくもう)があったりも。)


セイヨウミヤコグサ

一つの花序に咲く小花の数がミヤコグサより多くて、四個とか五個とか、ときに七個だ八個だなんていうものも。

萼筒よりも萼片の方が短い、ないし同長(萼筒≧萼片)。

茎と葉は、有毛なものが多いとか。


“近年は外来種であるセイヨウミヤコグサが方々にはびこっており、分布の範囲を拡大させている”──。といった風説をしばしば耳にするのだが、神奈川県内に限っていえばまったくの嘘(デマ)。三浦半島の海辺に生えているのはいずれも日本在来種ミヤコグサであるし、『神奈川県植物誌2018』もセイヨウミヤコグサが確認されているのは県内十ヶ所余りの地点を挙げているに過ぎず、まだまだ希有な存在であるという認識で間違いない。にもかかわらず個人ブログ等を拝見すればミヤコグサをわざわざセイヨウミヤコグサとして紹介している例がかなりたくさんあることに気づかされるが、これは(ミヤコグサとセイヨウミヤコグサがよく似ていること以上に)セイヨウミヤコグサが少なすぎてほとんどの人がその実物を見た経験がない(から余計に違いが判らない)ことに由来しているだろう。なんてことはないただのユキノシタ(雪の下)をわざわざハルユキノシタ(春雪の下)と誤認する人が妙に多いのと同じ。外来種セイヨウミヤコグサの(じつは差し迫って来てはいない)侵略的亡霊に怯(おび)えることなく、ミヤコグサのように感じられるものはミヤコグサと堂々と断じてしまって差し支えない。ユキノシタ類は”葉裏の色”、ミヤコグサ類は”毛の有無”、という信頼できない識別点に惑わされてはいけない。

葉は、小葉五枚。このうち二枚は托葉のような姿で葉柄(ようへい)基部に付く。どうやら微細な”真の托葉”が現れることがあるらしく、どう見ても托葉にしか見えない二枚も小葉という扱いになっている。

ミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

#ミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

ミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

#ミヤコグサの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

ミヤコグサの(小葉五枚の)葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

#ミヤコグサの(小葉五枚の)葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

ミヤコグサの(茎先端近くの)葉裏と毛 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサの(茎先端近くの)葉裏と毛 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサの茎と葉裏 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサの茎と葉裏 葉山公園 2017/05/17

茎は『神奈川県植物誌2018』によればセイヨウミヤコグサ共々「中空ではなく」とあるが、以下個体のできるだけ太くて硬い茎を切ってみたところ中空(ちゅうくう、茎の中心部が空洞になっていること)であった。ミヤコグサは個体差が大きいようなので、そういうこともあるとおおらかに捉えておいた方が良いのかも。何ヶ所か切断してみたところは他は中実だった。

ミヤコグサの中空でない茎(はさみで切断したもの) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

#ミヤコグサの中空でない茎(はさみで切断したもの) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

ミヤコグサの中空でない茎(カッターナイフで削いだもの) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

#ミヤコグサの中空でない茎(カッターナイフで削いだもの) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/19

ミヤコグサは地面が大好きジベタリアン、(生えたてのごく若い個体を除いて)茎は直立せずに徹底して地表を這うこと。花が葉に埋もれてしまわないよう花序柄(かじょへい)がくいっと上方へ曲がって、花が10cmばかり立ち上がるのみ。当然、葉が密生して伸びる場所を失えば上へ上へ育ってゆくことにはなるが。

ミヤコグサ(鉢植え)の這う姿 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/21

#ミヤコグサ(鉢植え)の這う姿 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/21

ミヤコグサの花だけが立ち上がる姿 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/21

#ミヤコグサの花だけが立ち上がる姿 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/21

ミヤコグサの姿 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/21

#ミヤコグサの姿 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/21

ミヤコグサの花

マメ科ならではの蝶形花(ちょうけいか)と呼ばれる形状で、花色は明るい黄色。小さな花だが、見栄えする。小花は(旗弁)縦8mm、(旗弁)横幅7mm、(翼弁)奥行(萼筒含まず)6mm程度。といったものが一つの花序に、およそ二個、対になって咲く。あるいは一個で、ときに三個、希に四個の小花が咲くこともないでもない。大雑把に眺めて花が一個ないし二個で咲いているようなら、在来種のミヤコグサ。

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

#ミヤコグサ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

ミヤコグサは、萼片が萼筒(がくとう)よりも長い、あるいは同長、とされている。そうでないものも見かけるけれど。

ミヤコグサの萼 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサの萼 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサの萼 葉山公園 2017/05/17

ミヤコグサの萼 葉山公園 2017/05/17

咲き進むと花が赤っぽく変色するものがあり、ニシキミヤコグサ(錦都草)と呼ばれる。

ミヤコグサの実

カラスノエンドウ(烏野豌豆)を小振りにしたような実ができる。小さなアブラムシ(油虫)が湧きやすい。

ミヤコグサの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

#ミヤコグサの未熟な実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

ミヤコグサの未熟な実(人為的に鞘を半分除去したもの)と種子 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

#ミヤコグサの未熟な実(人為的に鞘を半分除去したもの)と種子 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/17

ミヤコグサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/28

#ミヤコグサの熟した実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/06/28


剱崎、天神島臨海自然教育園、葉山公園

毘沙門海岸、城ヶ島、平塚市虹ケ浜

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

ニシキミヤコグサ

ネビキミヤコグサ

センダイハギ

フォローする