コクラン

黒蘭 クサスギカズラ目/ラン科/クモキリソウ属 花期/6月中旬~7月初旬
学名/Liparis nervosa (Thunb.) Lindl.

自生種稀少保護

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

丘陵部などのやや薄暗い林床に生える常緑の多年草。葉はエビネ(海老根)ギョウジャニンニク(行者蒜)にやや似ており、その咲き終わり、萼(がく)でも残っているのかと勘違いしてしまうようなとても地味な花を付ける。他に見るべき花がぜんぜんないこの時期に山歩きをすることがそもそも少ないこともあってふつうの人は出逢う機会はなかなかないかもしれないが、湘南・鎌倉・三浦半島では特に三浦丘陵に意外と多めに散在し、見つけることに慣れてくるとギンラン(銀蘭)と同程度にさほど稀少性は感じられないものとなる。コクランを探すときは、花ではなく葉を探すと見つけやすい。葉は冬でも枯れることなく深緑色を維持する。

コクランの冬葉、枯れた果柄(かへい)の残骸が一本付属することが多い 大和市・深見歴史の森 2018/12/31

コクランの冬葉、枯れた果柄(かへい)の残骸が一本付属することが多い 大和市・深見歴史の森 2018/12/31

コクランの冬葉の裏 大和市・深見歴史の森 2018/12/31

コクランの冬葉の裏 大和市・深見歴史の森 2018/12/31

コクランの新旧の葉 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/24

コクランの新旧の葉 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/24

コクランの葉 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/24

コクランの葉 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/24

キチジョウソウ(吉祥草)などが茂ってくると機嫌が悪くなるのかコクランは生えてこなくなる。他の植物と競合しない場所を好む”ぼっち系”の植物。

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクランの花

小さい花は黒色ではなく、よく見れば紫色と黄緑色のツートン。

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

コクラン 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/28

時期的に仕方のないところではあるけれど実際はこれにクモ(蜘蛛)の巣が絡みついており、更には花芽先端が虫にかじられてしまっていることも。そんな地味なコクランでさえ”自生の稀少なランの仲間”という理由でマニアや業者に盗掘されてしまうことがある。

花が淡い緑色だったら近似種クモキリソウ(蜘蛛切草)の可能性。花色はコクランに近い暗紫色を帯びることもあるらしい。クモキリソウは花の左右に張り出した細い線のような形をした突起(側花弁)がやや強めにくるんと下向きにカールする特徴がある。また、葉は冬は枯れてなくなる。湘南・鎌倉・三浦半島でクモキリソウを見かける機会はまったくないに等しいはず。

コクランの実

コクラン 逗子市・池子の森自然公園 2017/11/05

コクラン 逗子市・池子の森自然公園 2017/11/05

コクランの実の残骸 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/24

コクランの実の残骸 横須賀市・馬堀自然教育園 2017/06/24


塚山公園、馬堀自然教育園、久里浜緑地、衣笠山公園、光の丘水辺公園(通常非公開の最奥の池畔、6月第1土曜日の「自然観察会」で早い・6月下旬~7月上旬「ハンゲショウ観察会」では遅い)、三浦アルプス、池子の森自然公園、茅ヶ崎市・清水谷

新林公園(盗掘されたて滅失か)、茅ケ崎里山公園(保全樹林内=立入禁止)

大和市・深見歴史の森、愛川町・八菅神社

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)