コバギボウシ

小葉擬宝珠 クサスギカズラ目/クサスギカズラ科/ギボウシ属 花期/7月下旬~8月中旬 結実期/10月
学名/Hosta sieboldii (Paxton) J.W.Ingram

食用自生種改良種稀少保護

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30

日当たりが良く乾燥しない林縁や草地、特に湿原に好んで生えるという中型な多年草(宿根草)。単にギボウシという名の植物はなく、ギボウシといったら(細かく種を分けて考えず)ギボウシ属に分類される植物の総称として用いられる。その代表種はオオバギボウシ(大葉擬宝珠)。若い蕾がタマネギ頭形の擬宝珠(ぎぼうしゅ、ぎぼし)に似ていることからこの名がある。コバギボウシは巨大化するオオバギボウシに比べれば全体的に小型で葉が小さい。神奈川県内では箱根を中心に多からず少なからず分布あり。湘南・鎌倉・三浦半島にも自生が皆無ではないようではあるものの、見かけることはない。ギボウシの仲間はヨーロッパなどで高い人気を誇っており、盛んに品種改良されている。公園や鎌倉の寺境内などでよく栽培されているコバギボウシらしきものも含めたギボウシ全般はそういった(買ってきた)園芸品種であって、コバギボウシなどの原種はまずあるまい。近頃は、園芸種はギボウシ属を意味するホスタと横文字で呼ばれる傾向に。※本頁では原種コバギボウシのみを扱い、コバギボウシ系も含めた園芸品種(と思われるもの)はギボウシ(ホスタ)として別頁を設けて掲載する。

コバギボウシの若株(これで1株) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/30

#コバギボウシの若株(これで1株) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/30

葉身の基部は葉柄(ようへい)に流れる漸鋭尖形(ぜんえいせんけい)で、葉身は長さ10~15cm程度。よく見かける一般的なホスタに比べれば明らかに小型である。ホスタは花が咲いていなくともその大きく広がった葉が美しくて重宝されるが、コバギボウシの小振りな葉は観葉植物としては少々見劣りするか。うっかりするとオオバコ(大葉子)の葉のように見えなくもなかったり。葉柄に暗紫色の点々あらばイワギボウシ(岩擬宝珠)ないしその系統の園芸種を疑いたい。

コバギボウシの葉 箱根町仙石原 2017/11/17

コバギボウシの葉 箱根町仙石原 2017/11/17

コバギボウシの葉 箱根町仙石原 2017/11/17

コバギボウシの葉 箱根町仙石原 2017/11/17

コバギボウシの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシの葉 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシの葉(全長16cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシの葉(全長16cm) 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシの葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシの葉裏 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

栽培は、極端に乾燥させなければそれで良し。地植えであれば、心しておくべきは、日照りが続く夏場に水を切らさないよう潅水(かんすい)してやる程度。簡単。本来は日当たり良い湿地に生える植物であるが、そういったところに注ぎ込む水は意外とひんやり冷たいものなので、庭植えにする際は無理に湿地性にする必要はなし。下手に水気が多くべちゃべちゃした土にしておくと、猛暑の真夏に根が蒸れて腐ってしまう心配が出てくる。ふつうに水はけの良い土を用い、気持ち水やりを多めにしてやる方が元気に育つだろう。夏場の真っ昼間の照りつける直射日光に当ててしまうと葉が焼けて(部分的に枯れたように色が抜ける)見栄えが悪くなってしまうので、明るい日陰ないし朝だけ日が当たる半日陰の方が無難か。葉焼けする問題を除けば、真夏の猛暑の炎天下でも弱ることなく旺盛に育つ。小苗も植え付けて二年後には丸々太った大株に、三年後には地下茎で増え群生状態になる。逆に小さくコンパクトに維持したいならば、春に掘り上げて株分けを行うこと。伸びた根もある程度は切り捨てる。

コバギボウシの花

開花前の蕾の段階で、小花に付属する苞(ほう)は開出せずに蕾に密着している。オオバギボウシの苞は開出するため、蕾はバラ(薔薇)の花のような華やかな姿となる。

コバギボウシの苞が開出しない蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシの苞が開出しない蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30

#コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30

コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30

#コバギボウシの蕾 茅ヶ崎市浜之郷 2022/07/30

花茎(かけい)は人の膝(ひざ)を少し超える60cm程度の高さまで伸び、上部で花をいくつか咲かせる。花色はやや赤みを帯びた紫色。下の小花から順に咲いてゆく。小花は一日花。だいたい十日余りに渡って次々と咲き続けてくれるだろう。小花はそれぞれ咲き終わるとしょんぼりうなだれて閉じ、のちしおれた花冠を丸ごとぽろっと落としたり、汚らしいのを長々とぶら下げていたり。花期はオオバギボウシより半歩遅く、オオバギボウシの最盛期(ピーク)がちょうど過ぎた7月末~8月初旬に見頃を迎える。芳香なし。

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/27

コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/30

#コバギボウシ 茅ヶ崎市浜之郷 2020/07/30

コバギボウシの実

コバギボウシの実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/09/19

#コバギボウシの実 茅ヶ崎市浜之郷 2020/09/19


東京都文京区・#小石川植物園(分類標本園)、東京都小平市・#東京都薬用植物園、東京都調布市・#神代植物公園(水生植物園に多いが間近では見られない、花冠良く開く)、横浜市中区・#三溪園、横浜市緑区・#四季の森公園(しょうぶ園の南方=葉は虫食い多い、里山などにオオバギボウシも)

赤羽根十三図

大和市・#泉の森(湿生植物園)、厚木市・#荻野運動公園野草園(オオバギボウシも)、#箱根湿生花園(オオバギボウシも)

参考資料

『神奈川県植物誌2018』(電子版を含む) 神奈川県植物誌調査会編 神奈川県植物誌調査会発行(2018)

『ギボウシ図鑑』 日本ぎぼうし協会編 誠文堂新光社発行(2010)

関連記事 – 仲間・似ている・紛らわしい

オオバギボウシ

ギボウシ(ホスタ)

『コバギボウシ』へのコメント

  1. 里山ライフ 投稿日:2020/08/09(日) 21:13:35 ID:375ff23cf 返信

    わが家の庭では、自生し「群生」化しています。
    ちょうど、今が盛りで「庭」で目立つ存在です。
    いつの間にか生え出した植物で、年々、植生域を拡大しています。

    Web 検索では「コバギボウシ」との同定ですが、
    当サイト(mirusiru.jp)では
    ●コバギボウシ:本頁では原種コバギボウシのみを扱い、コバギボウシ系も含めた園芸品種(と思われるもの)はギボウシ(ホスタ)として別頁を設けて掲載する。
    ●ギボウシ(ホスタ)
    ●オオバギボウシ
    と明示されていたので、
    改めて慎重に突き合わせてみました。

    「原種コバギボウシ」
    と完全一致するので、雲散霧消し「結論」を得られたようです。
    非常に有益な「情報」をありがとうございました。

    谷津(谷戸)の当地に「居」を構えて四半世紀になります。
    多分に漏れず、当初は「芝」庭です。
    そして(シンボルツリーとして)ベニバナトチノキを植栽しました。
    そのトチノキは落ち葉が大きく堆積量も凄い。
    オカダンゴムシやミミズなどの土壌生物が大繁殖し、
    野鳥(ヒヨドリやトラツグミ、シロハラ、ツグミなど)を呼び寄せたようです。
    原種コバギボウシは、
    当地の「植物相」が野鳥により(種子が伝播され)もたらされた「植生遷移」の賜物なのでしょう。
    今では、当初の「芝」庭の面影(片鱗)は微塵もありません。
    人智を超えた、自然の摂理(逞しさ)にひれ伏す思いです。