ヒシ

菱 フトモモ目/ミソハギ科/ヒシ属 花期/7月下旬~9月中旬 結実期/9月下旬~10月

食用自生種稀少保護

神奈川県レッドリスト2006「絶滅危惧IA類」

ヒシ 小田原城址公園 2016/08/08

ヒシ 小田原城址公園 2016/08/08

池などの日当たりの良い止水に浮かんでいる水草。一年草。4月下旬、水底に落ちていた種子から発芽。底の土中に根を張って、水面まで細長い茎を伸ばしたら水面で葉を広げる。ホテイアオイ(布袋葵)のように全体が水面に浮遊しているのではなく、ヒシは船が錨をおろすように水底に根を張って定着している。
昔は農業用の溜め池などにたくさんあったに違いないが今では見ない。神奈川県内では小田原城の堀にのみ安定して自生しているが、大量の外来種オオカナダモ(大加奈陀藻)により隅へ追いやられている状態。小田原市にオオカナダモを駆除しようという強い意識は感じられない。

ヒシ 小田原城址公園 2016/08/08

ヒシ(大きめの丸い葉はスイレン) 小田原城址公園 2016/08/08

葉柄にはホテイアオイのような浮き袋ができ、成長し密生してくると葉が少し立ち上がるようだ。地球温暖化の影響で気温が30℃を超える炎天下となっても、弱ることなくむしろよく繁る。

池面を覆うヒシの大群生 新横浜公園減勢池 2016/08/31

池面を覆うヒシの大群生 新横浜公園減勢池 2016/08/31

ヒシの葉が食害に遭っていたら犯人は稀少種ジュンサイハムシ(蓴菜葉虫)の可能性。オンブバッタ(負飛蝗)なども葉をかじる。

ヒシの花

花は小さく小指の爪程度。色は白。一斉開花せず、夏の間にぽつりぽつりと順次咲いてゆく。一日花。朝咲いて夕方閉じるといわれるが、私が確認した限りでは朝にも昼にも夕方にも日没前後にも咲いてしており、開花する時刻はかなり気まぐれなご様子。

花が咲いたヒシ 新横浜公園減勢池 2016/08/31

花が咲いたヒシ 新横浜公園減勢池 2016/08/31

花は小さいので、すぐ間近で見ない限りは”なんだか白いちんちくりんなものが付いているんだか何だか”としか思えないようなもの。

ヒシ 大磯町・東の池 2017/08/02

ヒシ 大磯町・東の池 2017/08/02

見るとだいたいは半開き。

ヒシ 大磯町・東の池 2017/08/09

ヒシ 大磯町・東の池 2017/08/09

咲き終わると上向きだった花は力をなくして水中に没し、そこで実を結ぶ。自家受粉できるため、花はたった一つしか咲いていなくても実はできる。一夏の間に一株が十以上の花を咲かせるので繁殖力は決して悪くない。なのになぜ絶滅危惧種になるか。

ヒシの実

ヒシの実 大磯町・東の池産 2017/10/03

ヒシの実 大磯町・東の池産 2017/10/03

菱形の名前の由来にもなっているヒシの実。まさに菱形の実がなる。とされるがしかし、実際のヒシの実は三角形(中身はV字)で、菱形の要素はどこにも見当たらない。しいていうなら葉の形の方がまだ菱形に近いか。はたまた近縁種オニビシ(鬼菱)の実が菱形といえなくもないか。よくわからない。

ヒシの実 大磯町・東の池産 2017/10/03

ヒシの実 大磯町・東の池産 2017/10/03

まるで”悪魔の実”のような容貌のヒシの実は殻硬く、角(つの)のような二本の棘(とげ)がある。この鋭い棘の先端には返しが付いており、水鳥の羽毛に棘が刺さるとそのまま付着して遠くの池まで運ばれてゆくことがあるという。
実は熟すと水底に沈み越冬。翌春発芽する。一年草のため、葉などは秋に枯れて腐る。

ヒシの実 大磯町・東の池産 2017/10/03

ヒシの実 大磯町・東の池産 2017/10/03

ヒシの実は食べられる。台湾では、横浜中華街で甘栗が売られているように、小さな屋台で”菱角(ひしのみ、リンジャオ)”として茹で菱の実が販売されており秋の名物に。日本国内でも福岡県や佐賀県で盛んに栽培されている。食用の実は完熟して水底に沈んでしまう前に収穫のこと。


川崎市麻生区早野・ため池群(昭和61年(1986)最も西側の池に確認、滅失)、新横浜公園(減勢池に大群生、ただし池は立ち入り禁止の柵の向こう、台風増水時にのみ間近で見られるか、ジュンサイハムシも)、横浜市金沢区・称名寺(昭和時代は池に多くあった、滅失)

大磯町・東の池(一時滅失、平成28年(2016)滅失確認、同年ハスが謎の消滅したためか翌平成29年(2017)ヒシ復活)

横須賀市津久井五丁目・谷戸作堰(谷戸作の池、津久井小と東光寺の間を北に、滅失・タネが眠っている可能性)、鶴岡八幡宮(昭和61年(1986)確認、滅失)

小田原城址公園(堀に自生)

参考資料

「神奈川県立自然保護センター調査研究報告4」 神奈川県立自然保題センター発行(1987)

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