フユイチゴ

冬苺 バラ目/バラ科/キイチゴ属 花期/8月~10月 結実期/11月~2月
学名/Rubus buergeri Miq.

食用自生種

フユイチゴの実 逗子市・神武寺 2017/12/02

フユイチゴの実 逗子市・神武寺 2017/12/02

林床に生える常緑の低木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。蔓植物のような細い茎を伸ばし、地面を匍匐(ほふく)する。他の植物などに絡まったり巻き付いたりしてよじ登ることはなく、地面にだらんと横たわっているのみである。名は、冬に実がなるキイチゴ(木苺、イチゴのような実ができる木本の総称)の一種であることから。湘南・鎌倉・三浦半島では特に三浦丘陵の林内で見かけることが多い。他の草木が嫌って生えないスギ(杉)林も厭わないのは強み。

フユイチゴ 鎌倉市・建長寺回春院 2017/03/05

フユイチゴ 鎌倉市・建長寺回春院 2017/03/05

フユイチゴ 逗子市・神武寺 2017/12/03

フユイチゴ 逗子市・神武寺 2017/12/03

フユイチゴ 逗子市・神武寺 2017/12/03

フユイチゴ 逗子市・神武寺 2017/12/03

フユイチゴ 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05

フユイチゴ 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05

葉はブドウ科のエビヅル(蝦蔓)のよう。ふつう葉先は尖らず丸っこい印象を受けるものが多い。

フユイチゴの葉 鎌倉市・建長寺回春院 2017/03/05

フユイチゴの葉 鎌倉市・建長寺回春院 2017/03/05

フユイチゴの先端が尖り気味の葉 小田原市・早川石丁場群付近 2017/12/04

フユイチゴの先端が尖り気味の葉 小田原市・早川石丁場群付近 2017/12/04

フユイチゴの先端が尖った葉 逗子市・神武寺 2017/12/02

フユイチゴの先端が尖った葉 逗子市・神武寺 2017/12/02

箱根方面へ行くとにわかにミヤマフユイチゴ(深山冬苺)のような葉先が尖った形状をした葉が増えるが、それもフユイチゴ。萼片外側にけばけばもしゃもしゃとたくさん毛が生えていることが見分けのポイント。

フユイチゴの、ミヤマフユイチゴ型の葉 箱根町・箱根登山鉄道「塔ノ沢」駅 2018/12/01

フユイチゴの、ミヤマフユイチゴ型の葉 箱根町・箱根登山鉄道「塔ノ沢」駅 2018/12/01

フユイチゴの、ミヤマフユイチゴ型の葉 箱根町・箱根登山鉄道「塔ノ沢」駅 2018/12/01

フユイチゴの、ミヤマフユイチゴ型の葉 箱根町・箱根登山鉄道「塔ノ沢」駅 2018/12/01

茎にも毛が多い。茎には棘(とげ)あるも少なめ。肉眼では棘がないように見えるが、安易に触るとちくりと棘が刺さって痛い。托葉は細く深く裂けるため、ちょろ毛のよう。

フユイチゴの茎 鎌倉市・建長寺回春院 2017/03/05

フユイチゴの茎 鎌倉市・建長寺回春院 2017/03/05

ミヤマフユイチゴは葉先がしっかり尖り、やや縦に長いと感じる形状。茎や萼片外側は無毛とはいわないまでも毛は目立つものでなし。茎の棘はやや多めで、托葉は幅広で紐状にならない。名に反して低山にも多からず分布する。湘南・鎌倉・三浦半島では森戸川源流にのみあるらしい。両者は雑種アイノコフユイチゴ(合の子冬苺)をつくることもあるとか。

フユイチゴの花

見頃は9月以降。

フユイチゴの実

見頃は12月中旬以降。

フユイチゴの実 逗子市・神武寺 2017/12/02

フユイチゴの実 逗子市・神武寺 2017/12/02

フユイチゴの実は食用になる。が、小さい割に中の硬い種子が大きめなのであまり食べごたえはないか。味は、ほんのり甘酸っぱい程度。花柱(かちゅう)の残骸が数多く、口の中でなんとなく不快。さほど美味からず。江戸時代は箱根や足柄峠を越える旅人が喜んで口にしたに違いない。

フユイチゴの実 逗子市・神武寺 2017/12/21

フユイチゴの実 逗子市・神武寺 2017/12/21

フユイチゴの実 小田原市・早川石丁場群付近 2018/01/06

フユイチゴの実 小田原市・早川石丁場群付近 2018/01/06

フユイチゴの実 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05

フユイチゴの実 南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊) 2021/01/05


森戸川源流、神武寺(裏参道)

長柄桜山古墳群(第1号墳~長柄交差点分岐に少ない)、衣張山(北嶺に少ない)、建長寺回春院(西御門へ抜ける林床に少ない)

愛川町・八菅山いこいの森、南足柄市・大雄山最乗寺(道了尊、明神ヶ岳への山道沿いにも多い)、小田原市・早川石丁場群付近

ミヤマフユイチゴ

深山冬苺 バラ目/バラ科/キイチゴ属 花期/(奥高尾)8月下旬~10月 結実期/(奥高尾)11月~12月
学名/Rubus hakonensis Franch. & Sav.

食用自生種稀少

林床に生える常緑の低木で、雌雄同株(しゆうどうしゅ)。蔓植物のように茎は細く、地べたを這う。他の草木に絡まったり巻き付いたりしてよじ登ることはない。神奈川県内では丹沢や箱根といった山地周辺に分布。ただし山頂ではなく、山裾(やますそ)に多い。林道沿い、登山道やハイキングコースの入口周辺で見かける機会があるだろう。湘南・鎌倉・三浦半島ではなぜか森戸川源流域に分布があるというが、数はないのか見かけた記憶はない。東京都八王子市の奥高尾(裏高尾)まで足を伸ばせば、雑草のごとくしてそこいらに大量に生えているどうということのない普通種である。

近似種であるフユイチゴとの見分けが問題になるが、湘南・鎌倉・三浦半島の丘陵地の林床に多いフユイチゴにある程度見慣れている人であればぱっと見の印象だけで当たりを付けてしまってさほど問題はなさそうである。ミヤマフユイチゴの方が茎細く、葉が若々しいきれいな緑色で、茎に長い毛がなく、萼片外側にも長い毛が生えていない。ぱっと見で、キウイフルーツの実にあるような茶色い毛がよく目につくようならフユイチゴ、そうでなければミヤマフユイチゴの可能性が高い。毛の量は個体差があるところながら、特に萼片外側に生える長めの毛の有無は見分けの決定打とされている(ミヤマフユイチゴはじつは短毛が生えていないわけではないのだが肉眼では無毛に見える)。葉は、フユイチゴはやや横幅広めででっぷり太った形状のもの多く、ミヤマフユイチゴは僅かながら細身で葉先がよく尖る傾向がみられる。ただし葉の形状の違いもまた個体差大きいため、全体的な雰囲気から得られる総合的な心象(要するにぱっと見の勘)の方がよっぽど同定の頼りになりそうな気がしないでもない。小さいため目立たないが、茎には棘(とげ)がまばらにありちくりと刺さって痛いので注意が必要。


東京都八王子市・「陣馬高原下」バス停~陣馬新道(新ハイキングコース)入口、東京都八王子市裏高尾町・小下沢(こげさわ、木下沢とも)、東京都八王子市・日影沢

森戸川源流(少ない)